畠中恵原作の大人気時代小説『しゃばけ』シリーズ15周年を記念して、’17 年に第1作が上演され、世界観を歌とダンスで見事に表現し話題を集めたミュージカル『しゃばけ』。その第3弾が、4月から上演される。主人公の一太郎は、引き続き病弱な若だんなを好演した植田圭輔さんが演じる。昨年も11本の舞台に出演した売れっ子に、作品の魅力やデビュー11年目を迎えた’18 年の抱負などを聞いた。
「今年は久しぶりに5日間の正月休みをもらいました。もっと頑張るからって(笑)。休み中には『王室教師ハイネ』のメインキャスト(安里勇哉、安達勇人、廣瀬大介、蒼井翔太)全員そろって、茨城に日帰り旅行に行きました。いばらき大使の勇人の案内で茨城をひたすら巡って。初詣行って、温泉行って、あんこう鍋食べて。めちゃくちゃ最高でしたね。あとは中村誠治郎さんといました(笑)。誠治郎さんとは、僕のデビュー舞台『少年陰陽師〈歌絵巻〉』から10年来の付き合いで、もう家族って感じなので」
今の時代にないものが
すごく詰まってる
友人の中村誠治郎さんも出演する主演ミュージカル『しゃばけ』は、自分が演じる意味をすごく感じた作品だと言う。
「原作を読んだ第一印象が、すごくあったかいというかほっこりというか。メッセージを読者にあんまり強く訴えかけていない感じが、ナチュラルだなって思って。普段、2.5次元と言われる舞台作品に多く出演させていただいているからこそ、時代ものの『しゃばけ』はすごくやりがいがあるなと思ってるんです。
基本的に一太郎と妖(あやかし)たちの話ですけど、その妖たちの一太郎を思ってる気持ちに人情がすごくあって。今の時代に失いつつあるものがすごく詰まっている感じがして。長く続いてほしいなと思っている作品ですね」
一太郎の魅力とは?
「一太郎お坊ちゃんは、利発で心根の優しい芯の強い人。でも、身体が弱いから周りが過保護になってしまう。それでも強くなりたいと思っている気持ちが青年らしいなって」
今作の見どころは?
「一太郎の行くところに事件があるみたいな(笑)。その事件にかかわっている人間たちや妖とのやりとりのなかに温かさがある。病弱な一太郎だから走り回るわけにもいかないですし、結局すぐ捕まって、妖の白沢・仁吉(中村誠治郎)に助けてもらうことになるでしょうけど。今回は事件の謎を解く利発な部分をもうちょっと見せられたらなと思います。この舞台は見ると人に優しくなれる。
僕も一太郎を演じてる期間は穏やかというか。いつもは周りにツッコミを入れてる自分ですけど(笑)。『しゃばけ』は心がほっこりできる作品なので、難しいことは考えないで気楽に見に来ていただけたらと思います」
自分の出番の瞬間まで
オフでいたい
一昨年は14本の舞台に出演したという植田さんが、俳優として大切にしていることはオンオフの切り替えだそう。
「必要のないときは、なるべく電源を切っていたいんです。例えば舞台の本番でも自分の出の直前までオフでいます。そしてステージに出た瞬間にオン、みたいな。あまり集中してのめり込みすぎず、どちらかというと常にフラットでいたい。複数の作品を同時に進めていることが多いのもその理由です。けっこう大変なんですよ(笑)。
でも反面、その窮地を楽しんでいるところもちょっとあるんですけど。自分は追い込まれれば追い込まれるほど、意外と視野が広くなっていくタイプだと思うので。あとはたぶん“この役は自分にしかできない”って思い込みが濃いタイプだと思います。それは人より強いかもしれない」
今年でデビューして11年目。舞台をメインにキャリアを積んできた俳優人生を振り返って思うことは。
「最初のころは舞台出演が続くことがちょっと嫌でした。ジュノンボーイの同期たちが、テレビや映画に出ていたので、少し取り残された感じがあって。デビュー舞台はサンシャイン劇場での主演という、いま思えばすごく大きな仕事だったんですけど、当時はなんで舞台なんだって思ってましたし。
でも舞台をやってみて、毎回作品が終わるごとに“生って素晴らしいんだな”ってすごく感じて。お芝居をフル尺で1本みんなで紡いでいく感じや、台詞を間違ったり、噛んでしまったことすら美しく思える瞬間があるのが舞台なのかなと。お芝居の表現の調子がいいときと悪いときも、舞台の上では感じられたので、自分が成長するには舞台なんじゃないかなって、18ぐらいのときには思ってました。だから、ずっと舞台をやっていたら、いつかみんなに追いつけるんじゃないかなって思ってましたね。
この10年で、いい経験をさせてもらって、自分は自信を持って1段ずつ階段を上ってきたと思えるので、変わらず継続して上り続けていかなきゃって。28歳なので、そろそろ若さが武器というより引き出しの多さで勝負しないとダメだなと思いますね」
今年の抱負は?
「立ち向かう年なのかな。今年は僕が今までテレビで見ていた方とご一緒させていただく機会が増えるので、ある意味、アウェイというか、ここは踏ん張りどきかなっていうのはすごく感じてますね。逃げずに闘いたいです」
<舞台情報>
ミュージカル「しゃばけ」参 ~ねこのばば~
人気時代小説ミュージカルのシリーズ3作目。主人公の若だんなこと一太郎(植田圭輔)が、おなじみの妖たちとともに、事件を解決するべく立ち回る。若だんなの名推理は謎を解くことができるのか。出演/植田圭輔、中村誠治郎、藤原祐規、福井将太、法月康平、石坂勇ほか
■東京公演:4月28日~5月7日@シアターサンモール/大阪公演:5月19日~5月20日@大阪ビジネスパーク円形ホール 【公式サイト】http://www.clie.asia/shabamu/
<プロフィール>
うえだ・けいすけ◎1989年9月5日生まれ、大阪府出身。’07年俳優デビュー。以降、舞台を中心に活躍。昨年は11本の舞台に出演した超売れっ子俳優。近年はテレビアニメ『王室教師ハイネ』の主演で声優を務めるなど活動の幅を広げている。今後は舞台『おそ松さん on STAGE ~SIX MEN’S SHOW TIME 2~』(大阪:2月23日~2月26日@梅田芸術劇場メインホール/東京:3月1日~3月11日@TOKYO DOME CITY HALL)出演。
(取材・文/井ノ口裕子 ヘアメイク/古橋香奈子[LaRME])