日本じゅうが大きく盛り上がった、平昌五輪。競技の中継や結果などを中心に、テレビの世界も大きく盛り上がった。あるウェブニュース編集者はこう振り返る。
修造&信成は最強のコンビ
「特に男子フィギュアフリーで羽生結弦選手から宇野昌磨選手が出場したあたりは、わかりやすくサイトのPV数が下がりました。みんなネットではなく、テレビを見てるんだなと思いました(笑)」
実際この競技の平均視聴率は33.9%、瞬間最高視聴率が46%(関東・ビデオリサーチ調べ)という高視聴率で、注目度の高さがうかがえる。そんな熱戦を、各局は自慢のキャスターをそろえ報道したが、印象はどうだっただろうか。
「なんだかんだ、松岡修造・織田信成のテレ朝コンビの印象は強かったのではないでしょうか」
と、あるテレビ評論家は言う。
「松岡修造は、2004年のアテネオリンピックでテレ朝のメインキャスターをつとめて以来、世界水泳や世界体操など、テレ朝でスポーツ番組といえば欠かせない存在。言うまでもなく“熱さ”で有名ですが、今回の彼の感動を共有したい思いが、ちょうどいい感じの熱量になったのではないでしょうか。
特に今回のように、本命視される選手たちが結果を出すような大会では、『修造と一緒に盛り上がりたい』という思いも生まれると思います。そこに“号泣の織田”という要素も加わった。感動屋の信成に、『果たして織田は号泣したか』『感動をインタビューでどう伝えるか』的な興味も生まれますから、視聴者の目を引く番組作りは一番だったのではないでしょうか」
NHKは、『ニュースウォッチ9』の桑子真帆アナと、週末のスポーツ番組『サタデースポーツ』『サンデースポーツ』を担当する杉浦友紀アナ、そこに元女子モーグル選手の上村愛子という布陣を組んだ。
「最初に発表されたときは、キレイどころをそろえてきたという印象でしたが、それぞれ競技ごとの解説者とのやり取りや、現地からのリポート、選手インタビューなど、うまくこなしていました。その日のハイライトを伝える『デイリーハイライト』でも、元カーリング選手の市川美余や、スノーボードクロスの元日本代表の岩垂かれんなど、キレイどころをゲスト解説者に呼んで話題になりました。
いっぽうで、『デイリー~』に出演するスピードワゴン井戸田、アンジャッシュ児嶋や、放送サポーターというポジションの足立梨花など、バラエティ色強いタレントの起用は、素人目線での質問を期待するなどNHKの意図を感じました」(前出・テレビ評論家)
キャスターよりCMの綾瀬はるか
また、日テレは嵐・櫻井翔、TBSは中居正広と、両局のスポーツ大型特番・中継で活躍を続けるジャニーズタレントが今回も起用されたが、
「櫻井くんは、相変わらず出ているだけで『NEWS ZERO』をずっと見ているようでした。日テレで出演している荒川静香さんも、実績など申し分ない人選ですし、解説もとてもうまい。そのぶん、二人そろっての出演だと、まじめなトーンになってしまう雰囲気はありました。
中居くんも、TBSではおなじみですが、意外に抑えめではじけた雰囲気が少ない印象でしたね。メダル獲得種目の中継を複数担当していたのですが……。羽生と宇野へのインタビューで、柔らかな雰囲気を引き出していたのはさすがといった感じですね」(同評論家)
フジテレビは、バンクーバー五輪銅メダリストの高橋大輔に加藤綾子、さらに柔道史上初の五輪3連覇を成し遂げた野村忠宏という、土日深夜の『スポーツLIFE HERO'S』の布陣で挑んだが、あるテレビ誌記者は言う。
「外での中継で寒さもあったかと思いますが、高橋大輔が想像以上にカミカミで(笑)。それと、冬の競技と関連性が薄い野村の関西弁の印象が強かったですね」
各局、熱戦を伝える作りなのはわかるが、ひとつ気になったことがあるという。
「ワイドショーなどの情報番組で、いちいちその番組のメインMCのリアクションに切り替わったりするのは、ホント興ざめしてしまいます。現地で観戦していたリポーターしかり。見たいのは選手なので、客席で観戦しているリポーターの表情で、感動や興奮の共有はできると思いません」(前出・テレビ誌記者)
そして、栄光のメダルを獲得した興奮冷めやらぬ中、中継が民放だった場合、必ず出てくる気になる存在だったのが……、
「コカ・コーラのCMの綾瀬はるかです。『〇〇選手、メダルおめでとうございます!』といって、コーラのグラスを手にした綾瀬はるかが登場。さらに驚くのが、金メダルを獲得した小平奈緒選手のレースの直後なんかには、『スタートダッシュと最後の追い込み!』といった感じで簡単な講評までしてくれる。
そして、健闘をたたえてコーラで『せーの、乾杯!』と(笑)。どれだけのパターンを収録していたのか。メダルラッシュとなると、綾瀬はるかが出てくるたび、何杯コーラ飲んでんだよ!とツッコミたくなってしまいました」(同)
平昌五輪のテレビ番組で、最も印象に残ったのは綾瀬はるかの「乾杯!」になったりする可能性も、なくはない。
<取材・文/渋谷恭太郎>