広瀬すず主演、脚本家・坂元裕二によるオリジナルのヒューマンドラマ『anone』(日本テレビ系 水曜 夜10時~)。『Mother』『Woman』に続く坂元作品第3弾。水田伸生監督ら前作スタッフが再結集し、坂元ワールドを作り上げている。
広瀬、10代最後の主演
坂元ワールドで好演
「タイトルには、広瀬さんが演じるハリカの口ぐせ、ハリカと心を通わせる亜乃音(田中裕子)の名前、そして語感のよさなど、さまざまな意味があります。
広瀬さんには、“10代最後の連続ドラマ主演作に、持っているものを全部ください”とお願いしました。そのうえで、今までに見たことのないような彼女の魅力を開花させたいと思ったんです。髪をベリーショートにしてもらったのも、そのひとつ。この先も初めて見せるような表情、魅力がお楽しみいただけます」
と、次屋尚プロデューサー。脇を固めるのは田中裕子、瑛太ら坂元作品に欠かせない役者や第1希望の配役で全員、出演を快諾。
「出演者の年齢が若干高いので、現場は明るくワイワイしているわけでも静まり返っているわけでもなく、大人の雰囲気。そこで、若い広瀬さんが冗談を言ったり物語の今後について話したりしていることはあります」(次屋P、以下同)
物語は中盤を過ぎたが、結末を知っているのは、坂元だけ。
「田中さんは『Mother』出演オファーのときは、(役作りのため)物語の行方を知りたいとおっしゃっていましたが、本作では“大丈夫。みんな同じ船に乗っているから”と。小林(聡美)さん、阿部(サダヲ)さんも、“どんなものでも来い”という感じ。瑛太さんは、台本がギリギリでも“覚悟しています”と(笑)」
坂元脚本ならではの仕掛けも。例えば小林が演じる、るい子は初回で“刑務所帰りの放火犯”を自称、小林もその気で演じていたそうだが、実はウソだったことが、第4話で明らかに。
「これは後づけの設定ではなく、坂元さんの計算があってのこと。家族から見放され自暴自棄になっていたるい子を、“刑務所帰り”の気分で演じてもらって間違いはないんです。本作には、そういったウソがどれだけ隠れているかわかりません(笑)」
イメージカラーは青
ニセモノで見える真実
ハリカのブルーのダウンジャケットに象徴されるように、本作のイメージカラーは、青。登場人物の持ち物や家の小物などに青が使われている。
そして“ニセモノ”がドラマのキーワードに。
「ニセ札、擬似家族、ニセモノの記憶……。さまざまな“ニセモノ”がちりばめられています。しかし、ニセモノは、必ずしも邪悪なものではない。ハリカの幼少期の記憶はニセモノだけど、彼女は生きるために無意識のうちに改ざんしていたという仕組み。名字を偽っていたるい子は、亡き娘の幻影との会話で支えられてきました。
数々のニセモノを表現しているため、ファンタジーと評されたりもしますが、ファンタジーという名の“ニセモノ”にこそ、真実が隠されているのではないかと思っています」
第7話(2月28日放送)では、ニセ札作りに協力することになった亜乃音が、ハリカだけには犯罪に手を染めてほしくないと思っていたが……。
「忌み嫌っていたニセ札作りを始めることは、ニセモノに頼ること。しかし、ニセモノを知ることは、ハリカはじめ、それぞれの登場人物が自分にとって、いちばん大切なものとは? さらには、生きることの意味とは何か? を考えることにつながっていくのです。
ハリカは、亜乃音と母娘のようにケンカして感情をむき出しにして、心の交流を続ける彦星への思いも変化していきます。
本作をご覧になって、自分自身や人生を考えるきっかけになればと思います」
衣装のポイントはおばちゃんぽさ
亜乃音を演じる田中の役作りは衣装にもこだわる。
「流行(はや)りや美しさ、似合うとか体形がよく見えるといった女性が気にしがちなことは考えてないようです。きれいに映りたいというより、お芝居のために生活感のある、“おばちゃんぽさ”を追求されてるようです。新品ではなく、くたっとしたような靴下をリクエストしてました」(次屋P)
さらに食事シーンでは「ズルズル〜」と音を立てながら食べるなど“ウソ”のない演技に注目です!
まだ間に合う!
あらすじプレーバック
ハリカ(広瀬すず)は、家族を失い社会にも背を向ける19歳の少女。ネットカフェで暮らし唯一の楽しみは“カノン”さんこと、彦星(清水尋也)とのチャットの会話。余命宣告されている彦星に満足な治療を受けさせるための大金が欲しいと思っていた。そんな矢先に床下から大量のニセ札を発見した亜乃音(田中裕子)と知り合い、心を通わせるようになる。さらに、ニセ札をきっかけに出会った、るい子(小林聡美)や舵(阿部サダヲ)と亜乃音の家で共同生活を始めることに。
そんな彼らに、亜乃音の亡き夫の印刷工場の従業員だった理市(瑛太)が、ニセ札作りを持ちかけた。犯罪とわかっていながらも、4人はそれぞれの事情から、ニセ札作りに協力する――。