古舘プロジェクト所属の鮫肌文殊、山名宏和、樋口卓治という3人の現役バリバリの放送作家が、日々の仕事の中で見聞きした今旬なタレントから裏方まで、TV業界の偉人、怪人、変人の皆さんを毎回1人ピックアップ。勝手に称えまくって表彰していきます。第43回は鮫肌文殊が担当します。

R-1王者・濱田祐太郎 様

 先日開催された『R-1ぐらんぷり2018』において、全盲に近い弱視の漫談家・濱田祐太郎が見事に優勝をかっさらい、史上最多3795人のエントリー者の頂点に立った。

濱田祐太郎

 いきなり「生まれつき目が悪く、左目は全く見えず、右目も明るさが分かる程度」と説明、そこから自分が感じる周囲の人たちの物言いの矛盾をどんどん突いていくスタイル。

 ほんの1ミリでも観客にマイナスの感情を抱かせてしまえば、途端に笑えなくなってしまう。審査員の皆さんも褒めていたが、そんな感情を微塵(みじん)も感じさせることなく、ネタをドッカンドッカン笑いに変換できたのは、彼の生まれ持ったファニーなキャラクターと、漫談家として舞台で培ってきた芸の力だった。授賞式で本人が「本番は噛みまくっていた」と謙遜していたが、これぞ「話芸」だと思う。

 この『R-1ぐらんぷり』でも、『M-1グランプリ』でも、『キングオブコント』でもそうなのだが、トーナメント形式の賞レースにおいて強烈なインパクトで勝ち残り、その後、大ブレイクしていく人たちには共通点がある。

 それはただひとつ!

「こんなの見たことない」

『R-1』で前年優勝したアキラ100%もそうだった。ハダカ芸人数あれど、股間をお盆で隠してあとは全裸、なんて極端なヤツは他にいなかった。ましてや「ポロリするか、しないか」という5歳児でも理解できるキワキワのネタ。

『キングオブコント2017』のにゃんこスターだってそうだ。ウェルメイドで精密機械のように練り込まれたコントだらけの中で、あぜんとするほどシンプルな構造のネタ。しかも、最後に自己紹介で終わるなんて芸人、見たことあったか?

 ある大御所放送作家の方が言っていたのだが、いつの時代もテレビは旬を愛でるメディア。新鮮であればあるほど光り輝く。

 今回優勝の濱田祐太郎を見ていて、とにかく思ったのが「ネタが新鮮」

 TVで堂々と自らのハンディを全面に打ち出す芸人なんて、これまで見たことがなかった。これは、他には決してマネのできない、彼自身の発明だ。

 今後の活躍を期待して「バラエティ界のバリアフリーを推進してほしいで賞」を差し上げ、勝手に表彰したい。

『R-1ぐらんぷり』優勝の副賞として、フジテレビの番組への出演権もあるようだ。彼の芸風が他のバラエティタレントの皆さんと、どんな見たことのない化学反応を引き起こすのか? 今から楽しみである。

<プロフィール>
鮫肌文殊(さめはだ・もんぢゅ)
放送作家。’65年神戸生まれ。古舘プロジェクト所属。『世界の果てまでイッテQ!』など担当。渋谷オルガンバー「輝け!日本のレコード大将」(毎月第2金曜日)、恵比寿頭バー「歌謡曲主義」(毎月第3火曜日)などでの和モノDJ、関西伝説のカルトパンクバンド・捕虜収容所のボーカリストなど音楽活動も数多い。

<鮫肌文殊からお知らせ>
鮫肌文殊率いる伝説のカルトパンクバンド捕虜収容所、久しぶりの関西ライヴが決定! 3月31日(土)大阪なんばベアーズにて。未発表曲の音源プレゼントもあるよ!関西方面の皆さん、絶対に見に来てね!!