衆院財務金融委員会  衆院財務金融委で答弁する財務省の佐川宣寿理財局長。左は安倍首相=24日午後(写真/共同通信)

「麻生財務相は早晩、辞任せざるをえない状況に追い込まれるでしょう。ただ、そこから先、はたしてそれですむ問題なのか」

 とジャーナリストの大谷昭宏氏は話す。

 学校法人「森友学園」(大阪市)に国有地を鑑定価格の約8億円引きで売却していた問題が国会で再紛糾する中、ショッキングな悲報が飛び込んできた。

 国有地売却を担当した財務省近畿財務局の男性職員が7日に神戸市内の自宅で自殺しているのが見つかった。

近く安倍政権の断末魔

 大谷氏は「森友事件は正念場を迎えた」とみる。

「現時点(9日)で入手している情報によると、この職員の役職は上席調査官です。森友学園との対応にあたった国有財産管理の部署の当事者のひとりでした。約半年間、休職中だったようですが、7日に検察庁に呼ばれて取り調べを受けたあと、自殺されました。検察に何を話したのか。死に追い込まれたのは、そこに誰かの不正があったことの証のように思えるのです。不正がないのに死ぬというのは考えにくい」(大谷氏)

 森友問題をめぐっては、朝日新聞が2日朝刊1面トップで〈森友文書 書き換えの疑い〉の見出しで、財務省近畿財務局が作成した決裁文書が書き換えられた疑いがあると報じた。事実確認が進まない安倍政権に対して、野党だけでなく自民党内からも厳しい声が上がった。

 8日の参院予算委員会集中審議では、自民・三木亨参院議員が「政府は誠実に対応すべきだ」と迫った。

 それでも安倍首相は、

「財務省は捜査に対する影響を配慮しつつ国政調査権ということも重々踏まえ、調査を進めている。できるだけ早期に説明できるように財務省を挙げて最大限努力してもらいたい」と及び腰の答弁だったからあきれる。

 書き換えはあったのか、なかったのか。

 その答えを出す直前、前財務省理財局長の佐川宣寿・国税庁長官が辞任した。理財局長時代に「(森友との)交渉記録は廃棄した」「事前の価格交渉はしていない」などと国会答弁しながら、その後、次々にボロが出てきて野党から証人喚問を求められていた。長官就任後、1度も会見を開かず、その姿勢も問題視されていた。

 野党側からは「トカゲの尻尾切りだ」の声が飛び、与党側からは「トカゲの頭だ」と反論する声があったという。

 前出の大谷氏は、

「この事件がどうして始まったのか、という原点に立ち返る必要があります。なぜ忖度したり、国有地を安値で売却したり、特例措置をとったのかといえば、安倍首相の存在があったからこそ。森友の担当部署の職員のひとりが自殺し、そのトップの理財局長をしていた佐川氏が辞任した。その上の麻生財務相の責任も問われるでしょう。安倍首相は麻生さんのクビを切らざるをえなくなる。

 しかし、自分のまいた種で大先輩の首相経験者の政治家のクビを切り、自分は生き残るという選択ができるでしょうか。つまり、崖っぷちです

 と指摘する。

 のらりくらりで一向に国民への丁寧な説明責任を果たさずにきた安倍政権の断末魔が近づいている。