森友学園への国有地売却をめぐる改ざん前の決裁文書には、昭恵夫人(55)が「いい土地ですから、前に進めてください」と森友学園側に述べたとする記述があった。2014年4月25日、同学園の小学校予定地に昭恵夫人を案内したときにそう言われたという。
学園側は前理事長・籠池泰典被告(65)=詐欺罪などで起訴=と昭恵夫人が現地で並んで写る写真を提示したとする記述もあった。しかし、改ざん後の文書では、これらの記述がすべて消えている。
前に進めてください、と昭恵夫人は本当に言ったのか。
安倍晋三首相(63)は野党4党派が欠席した14日の参院予算委員会で、身内の自民党・西田昌司議員の質問に対して、プレッシャーを感じるふうもなく次のように答弁した。
「妻に確認をいたしました。そのようなことは申し上げていないということでございました。えーもちろん、妻がですね、この学校をつくるという責任者ではないわけでありますし、籠池氏との上下関係があるわけでもないわけでございますから、当然、そんなことは言っていないということでございました」
こんな詳細を欠く答弁で、はい、そうですかと受け止めることなどできない。
首相夫人をさらし者にはできない
時系列で追うと、その後の昭恵夫人は森友学園系列の塚本幼稚園で'15年9月に講演しており、新設する小学校(昨年3月に断念)の名誉校長職を引き受けている(昨年2月に辞任表明)。籠池被告は昨年の国会の証人喚問で「100万円の寄付金を受け取った」などと証言している。状況証拠はグレーだ。
昭恵夫人はフェイスブックで寄付金のことは否定しているが、公文書の改ざんまで明らかになったいま、国民の前に本人が出て洗いざらいしゃべったほうがわかりやすいのではないか。
政治評論家の有馬晴海氏は、
「昭恵夫人の証人喚問が実現することはまずないだろう」
と指摘する。
「ご本人が国会で話したほうが疑念は払拭できるでしょう。しかし、昨年の閣議決定で首相夫人を“私人”と定義したうえ、お付きの職員も減らしている。首相夫人を“さらし者”にはできませんよ。ただ、仮に昭恵夫人が籠池被告側にうまく利用されたとして、じゃあ、昭恵夫人のかかわりがなくても、この土地取引は約8億円引きで成立しただろうか。多くの国民がそうは思えないから、問題がくすぶっているんです」(有馬氏)
昭恵夫人にはフェイスブックという武器がある。改ざん発覚後も何事もなかったかののように更新しており、野党に批判的な投稿に「いいね!」ボタンを押していたことも話題になった。キーボードをパチパチ叩く余裕はあるようだ。
「フェイスブックの前はブロガーだった。タイトルは『安倍昭恵のスマイルトーク』で当時から一方的な発信力はあったが、批判的・突発的な質問が飛び出しかねないマスコミ対応などは全然ダメ。
'07年6月に鈴木宗男氏の元秘書ムルアカさんと田植えをするイベントにマスコミを呼んだとき、質問NGを不服とした記者がただ感想を聞いただけで顔を引きつらせて“楽しかった”と述べて周囲をあきれさせたほど。想定外の質問にはめちゃくちゃ弱いので証人喚問には立たせられないはず」
と、全国紙社会部記者。
日本のファーストレディーには、ぜひ苦手なことから逃げずに国民と向き合ってほしい。