松本享恭 撮影/森田晃博

 俳優・脚本家・演出家として活躍する宅間孝行主宰タクフェスの「春のコメディ祭!」第2弾は、劇団「東京セレソンデラックス」の最後の作品として話題を呼んだ『笑う巨塔』の6年ぶりの再演。その注目の舞台で、『仮面ライダーエグゼイド』に出演して人気上昇中の若手俳優、松本享恭さんがコメディーに初挑戦する。’12 年の公演では斎藤工さんが演じたお坊ちゃまな代議士秘書役で、イケメンがどんなギャップを見せてくれるのか。

役のまじめさを素直に出していけば

誰かを笑わせたいとか思っているタイプの人間ではなかったので。お話をいただいたときは少し戸惑いましたけど、若さとエネルギーを求められているかなと。なので今、けっこう笑いについて考えてますね。先日も『仮面ライダー』の映画の舞台挨拶で、笑わせるのが得意なキャストの話の間(ま)とかを観察してました(笑)」

 舞台4作目で演じるのは、代議士の息子でその秘書でもある山之内蓮太郎。

「台本がすごく面白くて、最後まで一気に読んでしまいました。いろんなボタンのかけ違いが面白いです。蓮太郎はとにかくまじめな好青年。個性が強いキャラクターぞろいの中でいちばん癖がない人物ですね」

 片岡鶴太郎さんをはじめ、梅垣義明さん、鳥居みゆきさんなど笑いのプロも出演する今作で、松本さんが役作りで大事にしたいのは?

「宅間さんにも、笑わせようとは思わなくていいってことは言われましたし。キャラクターのまじめさを素直に出して、全力でその場にいようと思います。蓮太郎は普通の人なので、何事もまじめに必死にやればやるほど、その姿がお客さんから見るとおかしいんじゃないかと思うんですよね。自分はまだ経験もないので、ガツガツ思いっきりいきたいなっていうのはあります。俺が俺がって感じの性格ではないですけど、今回は控えめさを、とっぱらおうと思ってます

 周りから厳しい演出家と聞いていて「稽古場には覚悟を決めて臨もうと思っている」と語る松本さん。

 宅間さんの印象は?

「タクフェスの舞台は『ひみつ』を観劇させていただいて、ほかにDVDで作品を見させていただきました。それで印象的だったのは、宅間さんのお客さんを楽しませることに対する熱さ。芝居はもちろんですけど、舞台が始まる前に自ら前説をしてお客さんと触れ合ったり、最後にダンスがあったり。今回の台本の最後にもト書きで“この会場にいる人たちが幸せになることを願って……というようなことが書かれていて。それもすごく印象的でした」

 今回、特に楽しみにしていることは、観客の笑いの圧を体感することだそう。

「宅間さんが『笑う巨塔』の初演のときに、客席から笑いの波がバ~ッて来る感じがすごかったという話をされていて。それは経験してみたいですね。自分次第で生み出せるかどうかなんですけど。笑いをとってみたいですね

一からコツコツ作る舞台が合っている

 ’14 年に現在所属する事務所のオーディションに合格して芸能界入り。俳優を志したきっかけは、18歳のときに見た映画『手紙』。

家でひとりで見たんですけど、号泣してしまって。玉山鉄二さん、かっこい~と思ったんです。そのころは地元でモデルの仕事とバイトをしていて、でも将来やりたいこともなくて。そんな時期だったので、すごく刺さったんだと思います」

松本享恭 撮影/森田晃博

 俳優デビューした’15 年に初舞台を踏む。

舞台は初舞台から好きになりました。本番中にお芝居をしていて、デビューしてから感じたことがない、思ってもいない感情があふれたりして。まったく泣こうとしていないのに、涙が止まらないみたいな。生の力を感じたんですよね。性格的にも、瞬発力でパッとやれる器用さを持っていないので、一から少しずつコツコツ作っていく感じが合っている気がします」

 俳優としての目標は?

「代表作が欲しいなと思います。『仮面ライダーエグゼイド』に出演させてもらって、名前を知ってもらえたり、応援してくださる方も増えましたし。そういう反響の大きさをすごく感じたので、それを塗り替えるじゃないですけど。もっと自分を知ってもらえるような代表作を増やしていきたいと思いますね

 現在23歳。プライベートはおひとり様が多いらしい。

普段の僕は静かです(笑)。ひとりでいることが多い。たまに『仮面ライダーエグゼイド』のメンバー、瀬戸利樹くんや小野塚勇人くんとご飯に行ったりもしますけど。だいたいはひとりで出かけますね。何かを買うためとかではなくて、目的はなく街をぶらっとしたりするのが好きです。古本屋に入ってみたりとか。家では、お気に入りの映画『007』のDVDをBGMがわりに流して、掃除したり料理をしたり、のんびり過ごしています」

 得意料理はチャーハン。目下、大好物の茶わん蒸しに挑戦中だそう。

「母からレシピを教わって作るんですけど、1度もうまくできたことがなくて。誰か簡単に作る方法を教えてほしいです(笑)」

 最後に読者へのメッセージをお願いします。

『仮面ライダー』のときとは違う僕が、舞台で右往左往しているところを楽しんでいただきたいです

<舞台情報>
タクフェス 春のコメディ祭!『笑う巨塔』
 宅間孝行、作・演出のシチュエーションコメディー。舞台は東京のとあるところにある病院のロビー。入院患者に見舞い客、医者や看護師までさまざまな人々の思いや事情が交錯して、平穏だった病院はとんでもない事態に……。出演/宅間孝行、篠田麻里子、松本享恭、石井愃一、梅垣義明、かとうかず子、鳥居みゆき、片岡鶴太郎ほか。

■東京公演:3月29日(木)~4月8日(日)@東京グローブ座ほか、愛知、兵庫、愛媛、福井にて上演。
【公式HP】http://takufes.jp/kyotou/

<プロフィール>
まつもと・うきょう◎1994年12月27日生まれ。福岡県出身。’15年ドラマ『ウルトラマンX』で俳優デビュー。’16年ドラマ『仮面ライダーエグゼイド』で花家大我/仮面ライダースナイプ役で注目を集める。舞台『黒子のバスケ』など舞台でも活躍。映画『人狼ゲーム インフェルノ』は4月7日公開。映画『パパはわるものチャンピオン』9月公開予定。

(取材・文/井ノ口裕子 撮影/森田晃博 ヘアメイク/Emiy)