阿部寛 撮影/佐藤靖彦

20代で役者デビューしてから、自分自身の中でうまくいかなかった5~6年間があったから……。だから、いろいろな役をいただけて演じられる喜びを、今でも感じることができているのだと思います

 昨年、役者デビュー30周年を迎えた阿部寛(53)。シリアスからコメディーまで、幅広い役を演じている彼。'87年に映画『はいからさんが通る』で、南野陽子が演じたヒロインの相手役で役者デビューし、順調にキャリアを積んできたように見えるが……、

「モデルから役者の世界に入ったとき、ほとんど何も知らない状態だったんです。芝居に対しての下積みもありませんでしたから、20代のときは役者としての振れ幅がまったくなかったと思います」

 そんなときに出会ったのが劇作家の故・つかこうへいさん。

つかさんの舞台に出させていただいてから、演じる喜びみたいなものを噛(か)みしめられるようになったと思います。それまでは元モデルというイメージが先行して、役的にもそこを超えることができなかったんです。でも、つかさんの舞台で、バイセクシャルの敏腕刑事という役をいただいて。

 あの役は振れ幅があまりに大きすぎた(笑)。あそこまでやれたんだからまだまだできる、と考えられるようになりました。それが素の自分からかけ離れるほどやりやすくて。僕に対して制作サイドがそういう役を発想してくれるということに喜びを感じました」

 今回演じているドラマ『スニッファー』の華岡信一郎も、今までなら自分に来なかった役ではないか、と思っていたという。

「51歳でこの役に出会いましたが、それまではあまり演じたことのないキャラクターだなと。原作はウクライナのドラマですが、そこで演じている俳優さんが何とも言えない色気を出した演技をしている。こういう色気に自分が挑戦できるかな、と思ってオファーを受けたんです

 自分の中に色気があるかはわからない、と笑う阿部。役者としての“これから”を聞いてみると、

50を過ぎた今でも完成された演技者にはなりたくないし、ずっとアブノーマルに失敗を恐れず仕事していきたい。まだ見たことのない世界にこれからも挑んでいきたいんでね

<ドラマ情報>

『スニッファー』スペシャル(NHK総合 3月21日[祝] 22時~)

(c)NHK

 ’16年に放送された、人気連続ドラマの続編。優れた嗅覚を持つ捜査官・華岡(阿部寛)と、人情派刑事・達郎(香川照之)のバディが再び難事件に挑む! プロファイラー・香奈(波瑠)が新たに捜査チームに加入。「今回は8Kで撮影したのですが、普通のテレビで見ても映像が素晴らしいです。あと、女優さんたちがみなさんキレイ(笑)。ストーリーはもちろん、そこもぜひご期待ください」(阿部)。