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 亡くなった人につけられる「戒名」。著名人の方が亡くなられたニュースなどでは、戒名も報じられることがあるが、生前のイメージにマッチした漢字が用いられていて、印象に残っている人もいるだろう。戒名は、どのように決まり、費用はどのくらい必要なのか。今回は、「戒名」について解説していく。

「戒名(かいみょう)」とは?

「戒名」(かいみょう)とは、(1)仏教で、仏門に入った証として受戒者に与えられる名前、(2)仏教で、僧侶が故人に対して与える名前、という意味があるのだが、今回は、(2)の故人につけられる戒名について解説していく。

 日本には「死後に成仏(じょうぶつ)する」という思想があり、故人に対して戒名を授ける風習が定着している。戒名をつけるのは住職か僧侶であり、戒名のランクについては後述するが、故人の生前の寺院への貢献度、また社会的地位や社会貢献度なども加味した上で決められるため、高額を払えば高いランクの戒名をもらえると一概に言い切ることはできない。

 ちなみに、浄土真宗では「法名」(ほうみょう)、日蓮宗系では「法号」(ほうごう)と呼ばれる。

戒名のランクと費用

 ここでは、戒名の構成とランク、および費用について見ていく。

 戒名は「院号」(いんごう)、「道号」(どうごう)、「戒名」(かいみょう)、「位号」(いごう)で構成されている。たとえば2004年に亡くなったいかりや長介さんの戒名は「瑞雲院法道日長居士」。「瑞雲院」は院号、「法道」は道号、「日長」は戒名、「居士」は位号である。

●院号

 まず、戒名の一番上に置かれる「院号」は、生前に寺院に尽くしていた者、あるいは社会的貢献度の高かった者につけられるとされている。また、院号をつける場合は、いわゆる「戒名料」が高額になるとも言われており、それゆえ院号がついていない戒名も多く存在する。

●道号

 院号の次に置かれる「道号」は、字(あざな)や号のような位置づけで、その下に置かれる戒名とのバランス、調和を踏まえて漢字二文字が選ばれる。道号は、元々中国で仏道の習得者に対する呼び名として使われていた。

●戒名

 そして「戒名」。これは、故人が仏の弟子になったことの証としてつけられる名前で、やはり漢字二文字が選ばれる。どのような身分や立場にある人でも、必ず漢字二文字になり、仏の世界では誰もかれもが平等なのだということを表現しているともいわれる。

 そして、院号、道号、戒名、位号を併せて「戒名」と呼ばれてはいるものの、本当の意味では、仏の弟子としてつけられるこの二文字だけが戒名なのである。

●位号

 続いて戒名の下に置かれるのが「位号」。これは、故人の性別や亡くなったときの年齢、社会的地位や社会貢献度、そして寺院への貢献度によってランクが示されるものとなっている。

<男性>
 成人男性の場合はランクの高い順に、「院居士」「院信士」「居士」「信士」となる。また、15歳くらいまでの男の子には「童子」「大童子」「禅童子」、4~5歳以下の男の子には「幼児」「嬰児」「孩児」が使われる。

<女性>
 成人女性の場合はランクの高い順に、「院大姉」「院信女」「大姉」「信女」となる。また、15歳くらいまでの女の子には「童女」「大童女」「禅童女」、4~5歳以下の女の子には「幼女」「嬰女」「孩女」が使われる。

 ちなみに、死産や乳児の場合は、男女ともに「水子」が使われている。

●戒名料について

 戒名をつけてもらう際は基本的に「戒名料」が発生するのだが、実は、戒名料は価格がきっちり決まっているものではなく、あくまでも戒名をつけてくださった「お布施」というスタンスで寺院に渡すもの。そして、どの程度の金額を包むかは施主側の気持ちということになる。なお、戒名のお布施は、葬儀のときの読経料(どくきょうりょう)とともにまとめて包むのがベターである。

 ただし、現実には戒名料をめぐって寺院とトラブルになるケースは多発している。「戒名料が高すぎる!」あるいは、「同程度のランクなのにほかの人より金額が高い!」といった内容のものが多い。

 ここでは、戒名のランクごとに戒名料の相場を掲載する。ただしあくまでも目安である。

・院居士/院大姉……100万円~
・院信士/院信女……80万円~
・居士/大姉……50~70万円
・信士/信女……30~50万円

著名人の戒名

福沢諭吉/大観院独立自尊居士
夏目漱石/文献院古道漱石居士
江戸川乱歩/智勝院幻城乱歩居士
石原裕次郎/陽光院天真寛裕大居士
太宰治/文綵院大猷治通居士
力道山/大光院力道日源居士
手塚治虫/伯藝院殿覚圓蟲聖大居士
美空ひばり/茲唱院美空日和清大姉
ジャイアント馬場/顕峰院法正日剛大居士
夏目雅子/芳蓮院妙優日雅大姉
尾崎豊/頌弦院智心碩豊居士
いかりや長介/瑞雲院法道日長居士
植木等/宝楽院釋等照
緒方拳/天照院普遍日拳居士
大原麗子/花香院麗風妙舞大姉
立川談志/立川雲黒斎家元勝手居士

 とくに「戒名」部分を見てみると、太宰治は「治」、石原裕次郎は「裕」、尾崎豊は「豊」、夏目雅子は「雅」など、生前の名前にも使われていた漢字が目につく。また美空ひばりの「美空」や大原麗子の「麗」など、生前の名前の漢字が道号部分に採用されている場合もあるようだ。そして、やはり社会的地位、社会的貢献度が高いとあって院号がつき、位号は「大居士」「居士」「大姉」の方が多い。

戒名は自分で作れる?

当記事は「日刊大衆」(運営:双葉社)の提供記事です

 実は、戒名は、寺院の僧侶や住職がつけなければならないという法律が存在しているわけではなく、自分で戒名をつけることは不可能ではない。そしてもし自分でつければ戒名料は発生しないため、無料で戒名がつけられることになる。近年は、「終活」が流行している影響もあってか、自分自身で戒名をつけたいという人も増加傾向にあるという。落語家の立川談志の戒名は、自分で考えたという。

 ただし、戒名にはさまざまなルールがあり、使ってはいけないとされている漢字も多く存在するため、知識のない者が戒名をつけるのは容易ではない。ルールに反した戒名をつけてしまうと、葬儀や納骨を拒否される可能性もある。

 そのため、戒名を自分でつけたいと思っている方は、あらかじめ寺院や葬儀社に相談することをおすすめする。

まとめ

 故人につけられる「戒名」は、ただの漢字を並べたものではなく、さまざまな意味があってつけられるものだが、近年は寺院とのトラブルも頻発している。気になることや疑問点については、寺院や葬儀社などに確認しておこう。