香取慎吾

 香取慎吾とアンタッチャブルの山崎弘也が出演していたフジテレビ系『おじゃMAP!!』が、2018年3月28日に最終回を迎えた。ラストは番組のテーマでもあった依頼に応えて2人が視聴者の家を訪問、お茶の間からの賑やかな生放送となった。

 前々から香取が「ぜひとも笑って見届けてほしい」と発信していた通り、作りもBGMも終了の湿っぽさをあまり感じさせない最終回だったが、その中で印象に残ったのは、番組の最後に香取がカメラに向けて言った「フジテレビありがとう!」のことばだ。

 同じくこの春に終了となった『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)や『めちゃ×2イケてるッ!』(同)に比べれば、『おじゃMAP!!』の歴史は6年と短い。しかしそれでも香取がこの番組で「フジテレビありがとう」という思いの深いメッセージを残し、それが視聴者にとってもどこか印象的だったのは、彼のルーツである国民的アイドルグループ・SMAPとフジテレビの深い縁ゆえだろう。

フジテレビとSMAP、26年の“黄金期”

 実は“フジテレビへのSMAPメンバーのレギュラー出演”はこの2018年3月まで、26年間にわたり、途切れることなくずっと続いていた。

 そのスタートはバブル崩壊から間もない1992年4月まで遡る。当時、歌番組の消滅で知名度拡大に苦しんでいたSMAPが、必死の思いでレギュラー出演を獲得したのがフジテレビ系のバラエティ番組『夢がMORI MORI』だ。

 なかなか芽の出なかった時代、「SMAPをコメディアンにしたい」という周囲のひらめきから生まれた番組は、最高視聴率19・4%を記録する人気番組に成長し、全国にSMAPの存在を知らしめる大きなきっかけとなった。

 そしてバラエティジャンルでの才能開花にともない、1994年4月、当時まだ10~20代の中居正広と香取慎吾を抜擢したのが、やはりフジテレビ系で放送されていた『笑っていいとも!』

 こちらは後に草なぎ剛も加わり、2014年までの放送期間に、バラエティ・アイドルとしてのSMAPをさらに強固な存在に育てていった。

 またSMAPの爆発的な人気獲得を受け、『夢がMORI MORI』と入れ替わりでフジテレビがレギュラー放送を始めたのが、アイドルグループ・SMAPの代表作となった『SMAP×SMAP』である。

 関西テレビ・フジテレビの共同制作で1996年4月に始まった、SMAP初のゴールデン帯レギュラー番組『SMAP×SMAP』は、料理、コント、歌と家族全員が楽しめる内容でありながら、森且行の脱退や稲垣吾郎・草なぎ剛の謹慎など、本来ならタブーとされる話題も真正面から取り上げ、歴代最高視聴率34・2%を記録、SMAP人気はこの番組によって不動のものとなった。

 他にもSMAPメンバーはフジテレビの番組に多数出演、中でも1998年10月からレギュラー放送されていた『サタ☆スマ』での香取扮する”慎吾ママ”は、挨拶として使っていた「おっはー」が2000年の新語・流行語大賞を受賞するなど、日本国中を巻き込んだ一大ブームも巻き起こしている。

 そういったフジテレビとSMAPの長い歴史のフィナーレにあたるのが、実は『おじゃMAP!!』の最終回だった。

 さまざまな形でフジテレビに26年間出演を続けていたSMAPメンバーは、『おじゃMAP!!』の終了をもって、ついにレギュラー番組が消滅。その歴史の最後を担当することになった香取が発したのが、あの「フジテレビありがとう!」ということばだったのだ。

フジテレビ

時代が変わっても、SMAPではなくなっても、変わらなかった感謝

 もっと振り返ると『夢がMORI MORI』のさらに4年前、結成直後でまだCDデビューすらしていない10代前半のSMAPが初めてテレビにレギュラー出演したのも、やはりフジテレビ、『いつみ・加トちゃんのWA-ッと集まれ!!』であった。

 1988年4月に放送が開始されるも、わずか5か月で終わってしまったその番組の存在を、SMAPは国民的アイドルグループとなってもなお、そして永遠のように思えたフジテレビの一時代の勢いがいつからか失われていってもなお、変わらず覚えていた。そして感謝していた。

 フジテレビの視聴率低迷がすでに周知のものとなっていた2014年にあえて”武器はテレビ”と名付けられた『FNS 27時間テレビ』、SMAPが総合司会を務めバラエティジャンルで同局年間3位の視聴率を獲得したそのフィナーレで、やはり香取慎吾はグループを代表してこう叫んでいた。

「フジテレビ、最高!」

 そこには恩人であり盟友のフジテレビを心から称える笑顔があり、その笑顔は彼がSMAPであっても、SMAPではなくなった2018年の『おじゃMAP!!』最終回においても、何ら変わってはいなかったのだ。

 やはり同じくSMAPをルーツに持つ中居正広のかつてのことばを借りれば、バラエティとは「終わらないことを目指して進みながら、ゴールがないところで終わらなければならない」「覚悟を必要とする」ジャンルである。

 そしてその覚悟とは、フジテレビとSMAPがともに歩んだ長い時間にも通じるのではないか。『おじゃMAP!!』の香取慎吾のことばを聞いていると、そう感じた。

 しかし歴史には終わりの後に、必ず始まりもある。

 いつか双方がまた豊かな才能を発揮できるその時を、視聴者はきっとテレビの前で待っている。


乗田綾子(のりた・あやこ)◎フリーライター。1983年生まれ。筆名・小娘で、2012年にブログ『小娘のつれづれ』をスタートし、アイドルや音楽を中心に執筆。主な寄稿に『HELLO! PROJECT COMPLETE ALBUM BOOK』(CDジャーナルムック)等。その他、雑誌『CDジャーナル』『EX大衆』、ウェブメディア『マイナビニュース』『KAI-YOU』などで執筆。著書に『SMAPと、とあるファンの物語』(双葉社)がある。Twitter/ @drifter_2181