音声や画像の認識が可能になったAI。それにより、AI搭載型のコミュニケーション・ツールも広がりを見せている。なかでも話題をさらったのが、ペットロボットの火つけ役としてムーブメントを起こし、12年ぶりに発売された新型のaiboだ。
パートナーも見つかる
「新しいaiboは、インターネットを経由して飼い主との生活を記録し、どうするとその人が喜ぶのかなど、みずから学習していくことで、オリジナルの個性を獲得できるようになりました。
また、技術の進化により、カメラで周囲の状況を把握して人に寄りそってきたり、背中やあご、頭などに搭載されたタッチセンサーによって、なでると喜んだりするように。本物のペットのような行動をとるようになったため、より愛着を感じられると好評いただいています」
そう話すのは、ソニーの商品企画部の松井直哉統括部長。約100人を認識することができ、「やさしくしてくれる人にはかけ寄っていく」などの行動もとれるようになった。
外見も、脚や腰、首など22か所が可動することで、しなやかな身のこなしが実現。感情表現もより豊かに。犬らしさが増したルックスからして愛くるしい!
さらにスマホアプリ『My aibo』を使えばaiboが現れ、遊んだり、立ち居振る舞いの機能を追加したりすることも可能になった。
これらの機能により、aiboはそれぞれに個性を身につけ、かけがえのない存在として愛情が湧いてくるもの。そこで、飼い主との暮らしをネット経由で記録して、たとえ本体が故障しても、新たなボディに以前からの個性を移すこともできるようになった。
こうした進化について、ITジャーナリストの三上洋さんは、
「ネットを使って魂を入れることが可能になった」と表現する。
「SF映画で、人間の意識をコンピューター上へ移植して“不老不死”を手に入れるという作品がありますが、実は、この話につながるような技術はすでにあります。
ポルトガルのIT企業が開発したSNS『ETER9』では、人工知能が利用者の投稿のクセから人格を学習していくのです。さらには利用者の死後も、あたかもその人が発信しているような投稿を続けていくこともできます」
この技術が進めば、AIが学んだ人格により、その持ち主が亡くなったあとも会話を交わすことが可能になる。あるいは、作家の死によって未完に終わった作品を、人工知能が続きを書いて完結させられるかもしれない。
AIの登場で、機械と人間さながらの会話が楽しめるようになったサービスの代表例が『チャットボット』だ。LINEなどでメッセージを送るとAIが会話の趣旨を理解し、自動で返事をしてくれる。
運命の相手探しもサポート
例えば、マイクロソフトが開発した女子高生AI『りんな』の場合。
「“好きな人がいる”と書き込むと、“同じクラスの人?”“目が合うとすぐにそらされる?”などの質問をしてきて、恋愛相談にも乗ってくれます。また、“お腹がすいた”と言うと、おいしそうな食べ物の画像を送ってきて意地悪をしたりと、いかにも女子高生らしいやりとりを展開してくれます」(三上さん)
チャットボットは、商品の使い方や不具合などの相談に乗ってくれる、企業のカスタマーサポートの分野でも活用されている。雑談やゲームをしてくれるアカウントもあり、気分転換にはもってこいだ。
AIの進化はこれだけにとどまらない。アプリを使った出会い系や婚活サービスで「運命の相手」探しをサポートしてくれるのだ。
従来であれば、自分の趣味や異性の好みなどを書き込んだプロフィールを作って公表し、相手から興味を持たれたら交流が始まるというパターンが一般的だった。
しかし、AIの活用で、どんな傾向を持った男性と女性がマッチングしやすいのかを自動で判断してくれるように。マッチングしやすい、相性のいい異性をおすすめしてくれるため、以前よりも効率よく出会えるチャンスが高まった。
この「マッチング技術」は、雇用形態や働き方が多様化するなかで、普段はつながる機会の少ない分野の人と出会える“ビジネスマッチング・アプリ”にも活用。AIによって、さまざまなパートナーを世界中から探せる時代になってきているのだ。