ホセはすごくまじめでピュアな男だと思う
現在上演中のミュージカル『Romale(ロマーレ)~ロマを生き抜いた女 カルメン~』。花總まりさんが宝塚時代に演じたカルメンを18年ぶりに演じていることでも話題だ。相手役ドン・ホセを演じる松下優也さんも、今まで演じたことのない役柄で新たな魅力を見せている。大阪公演を前に、松下さんに作品の魅力やホセ役について、稽古場での裏話などを聞いた。
「僕は台本を読むのに、いつもけっこう時間がかかるんですけど、今回はバ~ッとスラスラと読めて。“カルメン”という題材が、これだけ長く愛されている理由がわかった気がしました。すごくシンプルな話で根底にあるのは“愛”なんですよね。愛って、人類が誕生したときから延々と続いているものじゃないですか。そこには時代も国や人種の違いも関係ない。だから、たぶん見てくださる方にも共感できる部分がたくさんあると思うんです」
ザ・ミュージカルという作品をやってきていない自分に、ホセ役のオファーが来たときは、びっくりしたという。ホセという男の人物像を聞いてみると─。「すごくまじめな人なんだと思います。だからこそカルメンへの思いもまっすぐで、ピュアゆえに落ちていってしまうみたいなところを、僕はすごくホセから感じるんですよね」
演じるうえで大切にしたいと思うことは?
「ホセはカルメンにいちばん翻弄される男なんで、それがしっかり芝居に出せたらいいなと思いますね。いろんな状況に対する感情の揺れだったり。ミュージカルなので歌とか音楽のこととか、もちろんテクニック的な部分で必要なことがたくさんありますけど。お芝居をちゃんとやることによって、僕はすべてが埋まっていくと思うんです。
そのうえで気持ちだったりを表現するものに対して歌ったほうが、伝わるんじゃないかと。情熱的な部分だったり心の中にあるピュアな部分を大切にしていれば、歌の表現はいい意味でどうにでもなるんじゃないかっていうふうに思うんですよね。だから、ミュージカルということを特に意識せずに、僕はホセとして人間対人間の物語をちゃんと演じたいと思ってます」
ホセが恋に落ちるカルメンの魅力は、「何にも縛られず自由に生きようとする強さ」。ホセも女性として惹かれただけではなく、そこに尊敬と憧れを抱いたのではないかと松下さんは言う。では、ご自身もカルメンのような魔性の女性に惹かれるのか?
「僕はたぶんそういう女性は好きにならないんですよね。惹かれはすると思うんですけど、自分からは行かないです。けっこう想像で“あまりいいことなさそうだし、ああ~たぶん無理”と思っちゃうんで(笑)」
花總さんも人間なんだってホッとした
カルメン役の花總まりさんとは初共演。稽古に入る前に主演舞台『レディ・べス』を観劇して、そのすごさを実感したそうだが……。
「花總さんが千秋楽の日の舞台を見せていただいたので、カーテンコールでご挨拶されたんですけど、“あれ?”っと思って。もうすべてにおいて完璧な方だと思っていたんですけど、人柄は意外とふわっとしたところがある方なのかなって(笑)。ちょっとホッとしました。あ~花總さんも人間なんだと思って(笑)。
稽古場でも、それは感じましたね。スイッチが入ってる間は違いますけど、普段はけっこうふわっとされているなと」
謝珠栄さん演出の舞台に出演するのも初体験。
「謝先生は熱量がすごくある方で、熱い演出家であることは間違いないですね。厳しさはありますけど、ポジティブな方なので、ダメ出しも“よし! もう1回行こう!”みたいな感じで。厳しいというより、からっとしたストイックさがある稽古場でした。僕もそうですけど、関西人がけっこういて、謝先生もめっちゃ関西弁なので、すごく関西弁が飛び交う現場です」
松下さんの見どころはどんな部分になりますか?
「う〜んどうでしょう。歌にしておきましょうかね。僕が普段やっている音楽とも今までの舞台作品でやってきた楽曲とも歌い方が違うので、楽しみながらやらせてもらっています。すごく素敵な楽曲ばかりだし、新たな自分の芝居をのせたうえでの歌い方で、今までとは違う引き出しをお見せできると思います。今回は芝居も歌もチャレンジの部分はすごくありますね」
では、最後に読者へのメッセージをお願いします。
「『カルメン』はすごく有名な話なので、知っている方も多くいらっしゃると思うのですが。物語を知っている人でもいろいろ発見があって、何倍も楽しく見ていただけると思います。普段あまりミュージカルを見ない方にもわかりやすい話ですし、世界観もすごく素敵なので、ぜひとも劇場に見に来ていただきたいです」
<プロフィール>
まつした・ゆうや 1990年5月24日、兵庫県生まれ。A型。俳優・X4メンバーとして活動。4月18日X4ニューアルバム『XXXX』リリース。「X4 LIVE TOUR 2018」が4月28日@神戸Harbor Studioを皮切りに全国15か所で開催。ONWARD presents 新感線☆RS『メタルマクベス』disc 1 Produced by TBS(7月23日~8月31日@IHIステージアラウンド東京)出演。
<作品情報>
ミュージカル『Romale(ロマーレ)~ロマを生き抜いた女 カルメン~』
1837年、スペインのセビリア。軍の規律に忠実な衛兵ホセ(松下優也)は、妖しい魅力をもつロマ族の女工カルメン(花總まり)と出会う。そして一瞬で燃え上がるような宿命の恋が始まるが、カルメンの魅力に翻弄されるほかの男たちに嫉妬したホセは、愛の深さゆえに罪を犯してしまい……。“魔性の女”カルメンの意外な真実の姿を描く注目作。
■東京公演:2018年3月23日~4月8日@東京芸術劇場プレイハウス
■大阪公演:2018年4月11日~4月21日@梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
<取材・文/井ノ口裕子>