初回の平均視聴率が21.8%を記録し、好スタートを切ったNHK連続テレビ小説『半分、青い。』。
朝ドラ通算98作目の脚本を担当したのは、フジテレビ『ロングバケーション』『空から降る一億の星』、TBSの『愛していると言ってくれ』『ビューティフルライフ』など数々のヒット作を生んだ“ラブストーリーの神様”北川悦吏子氏。朝ドラは初挑戦だ。
今作品は、北川氏の故郷・岐阜と東京を舞台に、病気で左耳の聴力を失くしたヒロインがバブル期から現代までを駆け抜ける姿を描いている。
「実在の人物がモデルとなっているわけでもなく、北川氏のオリジナル脚本です。今までの朝ドラとはちょっと色合いが違っています。ありがちな戦争でヒロインが苦労するような話もありません」(テレビ誌ライター)
それは、雑誌のインタビューで北川氏が、
《もしかしたら朝ドラに革命を起こしたんじゃないか》
と語っているように、これまでの朝ドラのイメージを払拭するものとなっている。
朝ドラにはいくつかの特徴や法則がある。
柔軟な編成方針や慎重な場所選び
「1話15分のドラマを月曜から土曜目で放送するので全部で90分。これを3日から4日で収録し、編集で15分ずつに区切ります。
放送期間6か月間の中で、ストーリーのうねりや展開をどうするか考えますが、放送が始まってからでも、途中でストーリーや盛り上げ方を変えることもよくあります。脇役に人気が出たりするとその人の出番を多くしたり、視聴者の反応によって変化させることもあります」(元NHKの朝ドラ制作スタッフ)
また、朝ドラは大河ドラマ同様、物語の舞台が話題となる。
「最近では制作現場(*33作目以降、偶数回が東京制作で奇数回が大阪制作)と前作のことを考慮して、まずは舞台をどこにするか決めます。
いわゆる“ご当地”です。前作『わろてんか』は大阪。今回は岐阜と東京ですね。主人公の“職業”も大事ですが、町おこしも兼ねた舞台選びも重要視されています」(同)
もうひとつ気になるのが、ヒロインの幼年時代を演じる子役の存在。朝ドラからは何人もの名子役が輩出されているが、'74年4月から1年に渡って放送された第14回『鳩子の海』で主役に抜擢された藤田三保子は雑誌のインタビューでこう語っている。
《子役の斉藤こず恵ちゃんから私に代わった途端、ものすごいバッシングが起きたんです。子役が出演している時期が1か月半あって、ある土曜日に子役の出演が終わって、翌週の月曜日に大人の役者に代わるんですが、それが私だったもんですから、視聴者から非難ごうごうだったんですよ(笑)》
それは、子役の斉藤こず恵があまりにも健気で愛らしかったため、視聴者は似ても似つかない藤田に感情移入できなかったからのようだ。そのため、
《これ以降、子役の出演は第1週だけになりました》
という。子役の人気が出すぎて、本来の主役の人気が出なくなっては困るからということらしい。
その後、長らく朝ドラは半年クールだったが、83年4月から1年間放送された第31回『おしん』で再び同じような現象が起きている。このときの子役は、名子役の誉れも高い、小林綾子。やはり1か月半の出演だったが、
「『おしん』といったら、小林綾子で、大人時代の田中裕子や晩年の乙羽信子の影は薄いですね」(前出・テレビ誌ライター)
さて、今回は“朝ドラ革命”と言うだけあって、なんと主人公が登場するのは、幼年時代ではなく“胎児”から。そして幼年時代は“掟破り”の第2週まで続いた。
「『鈴愛』役の矢崎由紗を始め、個性的で魅力のある子役たちが出演しています。彼らが演じた子ども時代の話は、'60年代から'70年代にかけて大ヒットしたホームドラマ『チャコちゃんシリーズ』『ケンちゃんシリーズ』を彷彿させ、面白いです。
このまましばらく子ども時代を見ていたいと思う人も多かったようで、また子役に持って行かれるところでした。今回は本来の主役・永野芽郁をおびやかすことはなかったようですね(笑)」(スポーツ紙記者)
一旦落ちた視聴率も、子役たちの活躍もあって上昇し始めた。これからどんな“型破り”なストーリーが展開されるのか、興味はいやましにふくらんでいく。
<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>
◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。