渡辺麻友

 現役時代に輝きすぎるのか、卒業後の輝きをうまく獲得できないAKB48のOG。選抜総選挙で上位7位(神7=かみセブン)の常連組、例えば前田敦子、大島優子、高橋みなみ、板野友美、篠田麻里子といったアイコンが卒業後、AKB48時代ほどの存在力を示していない。

 神7でも常に1位2位を争っていた渡辺麻友(24)は、昨年末にグループを卒業。その後の心境について先日、「孤独です」と率直に明かした。主演ミュージカル『アメリ』(5月18日~東京・天王洲銀河劇場)の稽古をメディア関係者に公開した際に、そう発言した。

 AKB48時代の様子を「常日頃、ワチャワチャ人がいた」と表現。それに対して現状は「孤独を感じる日々です。その分、自分ひとりで集中できる。やっと1人の生活に慣れてきたところです」と明かした。

 まゆゆから読み取れるのは“脱AKB”の心構えだ。

 公開稽古は、都内の稽古場で行われた。そこにいたまゆゆの姿は、上下ジャージ姿! 着飾っていたAKB48時代とはまるで違う、そのままのまゆゆ。多少、お洒落な感じはあったが、それでもジャージはジャージ。本人も、ジャージで撮影されることに逆に新鮮な喜びを感じていた。

 まゆゆがかつてを引きづっていない感じを示したのは、共演者からの呼ばれ方。「まゆゆ」と呼ぶ人はなく、一様に「ベーナベさん」。それに笑顔で応じるベーナベ。

 まゆゆ改め、ベーナベさん誕生の舞台裏はこうだ。

 共演者と食事会に行ったときのこと、それぞれが呼び名を決めようとなった際、まゆゆにはこう呼ばれたいという希望がなかったという。周囲は「じゃあ、ベーナベさんに」。まゆゆもそれを面白がって受け入れたという。

 その食事会は、韓国料理店で行われたが、支払いは座長のベーナベ持ち、ではなく、割り勘だったという。「え、私が出した方が……。次は出します」とベーナベさん。

 写真撮影の転換時も、アイドル時代であれば一旦袖に下がってという段取りだが、舞台のけいこ場では誰もそんな気は使わない。舞台に立つ女優のひとりとして、ただそこに立っている。その新鮮味!

 ジャージと呼び名。

 いつまでも“元”の肩書を引きづってはいられない、というベーナベさんの覚悟を見たけいこ場だった。

 開演ベルはまもなくだ。

<取材・文/薮入うらら>