「あほ、散れ、死ね死ね」「人のもんよう取るで、泥棒人間」「カメラ撮りよるんか、ボケ」
神戸市北区の4階建てマンションの2階のベランダからそう暴言を吐き、1階の住人に植木鉢の砂をかけるなど暴行を加えた疑いで、無職・島田八千代容疑者(71)が逮捕された。
あの液体はおしっこか
兵庫県警本部によれば、逮捕日時は4月30日午後5時25分。島田容疑者は同日、午後4時46分ごろから数分間、砂をばらまくなどし現行犯逮捕された。
「砂は投げつけたが、当ててはいない」などと容疑を否認している。しかし、犯行の様子をとらえた動画を見る限り、大量の砂がバチバチとカメラに当たっており、カメラを持っている撮影者にも当たっていると考えられる。
「砂はしょっちゅうですね。引っ越してきた直後から、布団や洗濯物を干していたら、水とかもまかれました。
警察が調べてくれていますが今回、たぶん、あの液体、おしっこをまかれたと思うんです。色もニオイも、間違いなく。本人が尿瓶を持ち出して“これが何かわかってるんか!”って言いながらかけてきましたからね」
そう明かす階下の被害者だけでなく、島田容疑者の悪行の数々に嫌な思いをしてきた近隣住民は多い。
「思い込みが激しいというか、もうメチャクチャですよ。公園の近くで遊ぶ子どもに杖を振りかざしたり、公園で走っている子どもに“走るな”って叫び、警察が来たこともあります。被害妄想がひどいんです……」
近所の住民のそんな声からは、容疑者の手のつけられない性分が浮き上がる。
別の住人もあきれ顔で、
「怖いですよ、本当に。夜中に犬を散歩させていると、“犬や猫を飼うなんて汚い”とか言ってくる。言い返して目をつけられるのも嫌なので黙ってますけどね」
と被害を振り返る。
容疑者が住む分譲マンションは、今から約30年前の1988(昭和63)年に建った。
「私がこの近くに引っ越してきてからずっと悪いことをされていますね」
と古参住民が話す。
「駅が近いので立地条件はすごくいいんですけどね。以前、(容疑者の)上の階に住んでいた人、娘さんが3人くらいいた家族でしたけど、騒音に耐えられずに出ていきました。下の階の人も、小さい息子さん2人が怖がって出ていきました」
思い込みで勝手に決めつけ、言いがかりをつけてくる。中古でマンションを購入した住人に対しては、
「安く買いやがって!」
などとケチをつけ、根拠のない的はずれな購入額を連呼することも。
「関わらないようにするしかないでしょう。うかつに言って復讐されても困るから」
と近隣主婦は声を潜める。
数年前、“スパッツ紛失トラブル”があった。
「(容疑者が)洗濯して干していたスパッツが風に飛ばされたのか、なくなったことがあったんですが、本人は1階の人が盗んだものと思い込んでいる。下の階の人、全員に確認したところ、どこにもないとなったんですけど、いきなり“スパッツ落ちたのに返さない。返せ!返せ!ドロボー”ですからね。“素材がいいから盗んだんだろう”とか聞く耳を持たないんです」
そう話すご近所さんは、両手でお手上げのポーズを作る。
なかでも最も被害を受けたのが、階下の住人だ。
「下の人に、何の恨みがあるんですかね」
周辺住民がそう口にするほど、罵詈雑言を浴びせたり、石を投げたり、ツバを吐いたりしている。怪しげな雲行きは、引っ越し直後からあったという。階下の住人の苦悩を近所の主婦が代弁する。
「引っ越して来た当日に、夜中の1〜2時に大音量の音が聞こえてきて、何かを叩きつけるような“ドン、ドン”という音が鳴り続けて、怖いなと思ったそうです。
翌日たまたま(容疑者に)会ったので、あいさつをしようとしたら、いきなり“あいさつも来んと”と嫌みを言われたそうです。
菓子折りを持ってあいさつに行ったら、一時期、なれなれしく話しかけられたこともあったそうですが、その後はまた豹変したらしい」
と感情を制御しない容疑者に恐怖を覚えたという。
すぐ釈放される
逮捕当日は鉄板のようなものを叩く金属音が“ガン!ガン!ガン!”と3回くらいした。子どもはひどく怖がった。
「階下の住人は当初、これを録音しておこうと思ったそうです。以前、杖で叩かれそうになったりツバをかけられたりしたことを警察に相談したところ、動画で撮っておけば証拠になるからって言われたことを思い出して、そのガンガンやっているところを記録しようと思ったら“何撮ってんねん!”って。自分を面白がって撮っていると思ったらしく激高しだして、砂をまき出したそうです」
気に入らないことはなんでも文句の対象になる。近所の家に「換気扇を回すな!」と罵声を浴びせかけたこともあったという。
10年以上も前のこと、容疑者の住むマンションの前の池のある大きな一軒家が売却されて、数件の建売に様変わりしたことがあったという。
「それが気に入らなくて、ベランダから“工事をやるんじゃない!”などと建築業者に罵声を浴びせていましたからね。妨害工作のせいで作業がなかなか進まず、途中から大工さんの人数が増えましたから」(前出・古参住民)
まったく関係ないことでとばっちりを受けたことがあるという近隣住民もいた。
「近所で、庭でバーべキューをやっているうちがあったんですが、それがなぜかわが家だと思われて、“家の中で焼き肉焼いてやがる”って難クセをつけられました」
隣近所に“モンスター住人”がひとりいるだけで、安心した日常生活が脅かされる。賃貸でなく、物件を購入して引っ越して来たとなれば、おいそれと次には移れない。不快な思いをしながらも、住み続けるしかないのだ。
逮捕されたものの、「執行猶予つきの判決で、すぐに保釈される」(民放報道局ディレクター)との指摘もある。
「行政の支援が欲しいですね。ご近所トラブルですんでいるうちはいいですが、もめごとが我慢できずに刃傷ざたになることもありますからね」(前出・近隣主婦)
別の住民らによると容疑者は以前、夫と娘と3人暮らしだったといい現在はひとり暮らしとみられている。“なだめ役”はいるのだろうか。