「真剣に子どものことを考えるのであれば、勉強嫌いにならないために子どもが大好きなものを学習に導入したほうが楽しんで机に向かえると思いました。その最たる例が、“うんこ”ではないのかと」
話題の『うんこ漢字ドリル』に続編登場
そう語るのは、昨年3月に発売されるや大反響を巻き起こし、何と累計発行部数297万部(!!)を突破した大ヒット学習ドリル『うんこ漢字ドリル』の生みの親・古屋雄作さん。
1年生で習う「田」なら、「田んぼのどまん中でうんこをひろった」、2年生で習う「刀」なら「名刀でうんこを真っ二つに切りさいた」といった具合に、例文すべてにうんこをちりばめ、全国の子どもたちのハートをギュッと鷲掴みにした。
その異例のドリルの続編が『うんこ漢字ドリル テスト編』だ。今回の“見どころ”ならぬ“学びどころ”は、何といっても長文問題だろう。
「イベントを開催した際に長文問題を実験的に導入したところ、保護者の方を含めて非常に好評だったんです。覚えた漢字を反芻復習する前回とは違い、テスト編は学んだ複数の漢字を同時に筆記する必要がある。
読み物としての面白さに加え、複数の漢字を同時におさらいできる長文は、“国語を学ぶ”という意味でも相性がよかった」(以下、古屋さん)
うんこ漢字ドリルは、文科省の新学習指導要領に沿って学年別に漢字をセレクトしているため、古屋さんが好き勝手にうんこ例文をひねり出しているわけではない。
漢字学習アドバイザーとしてベネッセの教材などを手がける編集プロダクションなどの協力を仰ぎながら、本格的なドリルとして学習面も一切手抜きをしていないのだ。
「例えば「石」であれば、“いし”“せき”“しゃく”とそれぞれの読み方を教えなければいけない。前回作成した3018個の例文とかぶらないように、新たに「石」を使って3パターンのうんこ例文を作るのはなかなかハード。
また、長文は小学6年生なら「紅」「蒸気」「腹巻」などを学習したうえで、それらすべてを使用した文章にする必要がある。そこに“うんこ”を入れなければいけないので、もはやパズルのような感覚」
高齢者も“うんこ”のトリコに
作者の生みの苦しみが見え隠れするカオスな長文に注目すると、より一層テスト編を楽しめるはず。作り手の遊び心と教育への熱意が見事に融合したドリルは、200を超える国内外メディアに取り上げられ、今や作者の意図していなかった範疇にまで副次的効果を生み出している。
「認知症の方や認知予防として高齢者の方が、楽しみながら利用していると聞き驚きました。保護者の方から面白いと言ってもらえたときはホッとしたけど、まさかここまで世代を越えるとは思わなかっただけに本当にうれしい」
もはや、うんこは国語だけではなく社会すら変えるパワーを秘めているのかも!?
「楽しみながら学べる方法を考えることこそ大切。“飽きられるのでは?”という意見もありますが、うんこほど時代を越えて愛され続ける耐久性の高い言葉はない。
下品とか汚いとかネガティブな反応もあるでしょうが、それ以上に学習する人たちをポジティブにさせる要素がある。そういった言葉や存在はもっと学びの場に生かすべき」
楽しみながら勉強ができれば、いざというときに“クソ力”も発揮しやすい!
「ビジネスパーソン用の英語編や漢字検定などいろいろ考えていますのでご期待ください(笑)。無難な例文にするとうんこの面白みが生きませんから、ゲラゲラ笑いながら学べる姿勢は一貫していきたい。
世間の反応に対して敏感になったり忖度することなく、学びたい人の気持ちに立って作り続けていきたいです」
《取材・文/我妻アヅ子》