「職場や家庭内での価値観の相違が大きいと、イライラや怒りも募りやすい。心理学を使って解消していきましょう」
と提案するのは、心理学者の晴香葉子先生。
「まず、公共の場でイライラしたり、怒っていたりする人がいたら、その人をできるだけ視野に入れない、その場に近寄らないことが大切です。人間の感情は伝染してしまうのです。これを心理学では“情動感染”といい、ネガティブな感情は伝染しやすいといわれています」(晴香先生、以下同)
公共の場なら離れられるが、職場や家庭に、怒りっぽい人や文句ばかり言う人がいたら?
「それが困りものですよね。関わり合えば合うほど問題は大きくなってしまいますから、火ダネが小さいうちに鎮火させたいところです」
荒立てないで穏便にすますことが大切だとか。
「まず、文句を言ってきそうな人が来たら、10秒待ってもらいましょう。感情の波のピークはだいたい10秒以内といわれています。
ピークが過ぎれば落ち着くので、“ちょっとパソコンの作業を終わらせるから、待っていてくれる?”などと、ピークを避けてコミュニケーションをすることです」
また、時間を区切って話を聞くことも効果的。
「“10分だけならいいよ”と伝えて、その間はひたすら熱心に耳を傾けます。お姑さんや上司の小言も“1日8分だけは集中して聞く”と決めておくことも効果的です」
話を聞いてあげることはカタルシス効果といって、心を安定させる効果があるという。
「それだけで、お姑さんや上司の小言やイヤミが少なくなるかもしれません。話を聞くときは、温かい飲み物を用意するといいでしょう。温かいカップを手にしていると信頼関係が生まれやすいといわれ、おだやかな情動感染が起こります」
さらに、1か所でもほめることが大事だという。
「たとえ自分が怒られた場合でも、“指摘していただきありがとうございます”、“考えるきっかけになりました”など、何でもいいのでよかったところを見つけて最後を“感謝”にすると、いい関係になります」
これで関係がよくなるなら、習慣にして損はない。
また、イライラ防止は生活スタイルもカギを握る。部屋を片づけ、バランスよく栄養をとり、良質な睡眠をとることが重要だ。
「ちらかった部屋はイライラが起こりやすい環境です。子どもたちに脱いだ洋服をたたみなさいと言っても、ちらかった部屋では行動も起きにくくなります」
心理学に基づき色を味方につけるのもポイント。部屋をアイボリーや茶系、ブルー系にすると心が落ち着く。
「文句を言われたら、グリーンを思い浮かべて深呼吸を。心が癒されます。また、イヤミな上司やお姑さんに会うときは、黒を着ていくといいでしょう。黒は他人の影響を受けず自分らしくいられる色です」
晴香先生は「職場や家庭でいちばん気をつけたいこと」として、次のように指摘する。
「夫に対するイライラを子どもにぶつけたり、上司の怒りを部下にぶつけたりするとネガティブな連鎖が起きてしまいます。
イヤミな上司やお姑さんは、本当は不安を抱えていたり寂しかったりするのかもしれません。私はやさしさが1番、幸せが2番と考えていて、やさしくすることで幸せが訪れると思っています」
自分の接し方次第で、相手が変わることも珍しくない。
「数ある心理学のアプローチを試してみて、トライ&エラーを繰り返しながら、自分に合ったスタイルを見つけられたらいいですね」
晴香さんが教えてくれた、イライラとうまく付き合う方法を活用して、“ごきげんさん”として楽しく生きていきましょう!
〈PROFILE〉
晴香葉子さん
心理学者。日本心理学会、日本産業ストレス学会などに所属。早稲田大学オープンカレッジ心理学講座講師