「これまで海外というと韓国にしか行ったことがないのですごく楽しみです。とりあえずフランスパンを食べたいです。事務所の社長が“フランスのフランスパンは本当に美味しかった”と言っていて。あと、長いのを持って歩いてたら、めっちゃカッコいいですよね(笑)。フランスでフランスパン持って、写真を撮りたいです!」
透明感がすごい!と話題の新人女優・唐田えりか(20)が、東出昌大とともにメインキャストをつとめる映画『寝ても覚めても』をひっさげ、カンヌ国際映画祭(現地時間5月19日まで開催)に飛ぶ。いきなり世界の映画人が集う晴れ舞台に立つことになるが、
「映画祭自体が初めてなので、正直、まったく実感がわきません……。え、レッドカーペット? あのよく写真とかで見るやつを歩くの!? みたいな感じです」
映画『寝ても覚めても』が出品されるのは、パルムドール(カンヌにおける最高賞)を争うコンペティション部門。2015年公開の『ハッピーアワー』(上映時間は5時間17分!)で映画マニアをうならせた濱口竜介監督の新作にして、初めての商業映画。東出昌大が一人二役に挑戦しているのも話題だ。
脚本を読んで泣いた
撮影当時19歳だった唐田は、東出演じる麦(ばく)と亮平という2人の男性の間で揺れるヒロイン・朝子の役をオーディションで射止めた。
「私、オーディションの時は“絶対にこの役とるぞ”っていう気持ちで挑むんですけど、なんだかその時は、まったく力が入っていなくて(笑)。上京して1年くらい経って、けっこう落ち込んでいた時期だったというのもあり、正直、お仕事を続けていくかも迷っていたんです。演技について質問されても、正直に“楽しいと思えていません”みたいに(笑)。あんまりいいことを言えていなくて。
セリフを渡されて、“電話帳を読むみたいに棒読みで、感情を一切入れないでください”って言われたのですが、本当にただ文字を読んだだけ。それで終わってしまったので、まったく受かった気がしませんでした」
だがオーディションが終了してから、思いが大きく変わることになる。
「次の日にマネージャーさんから“実はこういう映画だったんだよ”って脚本を渡されたんですけど、主人公の朝子を本当に自分として感じて最後まで読めたというか。最初から感情移入ができて、初めて脚本を読んで泣いてしまいました。そういう感覚は初めてでしたし、衝撃的で。“絶対やりたい”と結果を待っていました」
物語は、愛した男性・麦との思いがけない別れから2年半後、麦とそっくりな容姿をした亮平と出会ってしまった朝子の心の移ろいを追う。29歳までを演じたが、同居生活を送る男女の仲睦まじい日常、激しい気持ちのぶつけ合いなど、自身の実体験だけでは追いつかないことも多かった。
支えてくれたのは東出昌大をはじめ、瀬戸康史、山下リオ、伊藤沙莉、渡辺大知らの共演者。そして濱口竜介監督だった。
「初めてのヒロイン役で、こんなにセリフがあるのも初めてだったんですけど、撮影に入るまでの間に、東出さんが頻繁にみなさんをご飯に誘ってくださったり、“役柄上、タメぐちで話そう”など、関係性を作ってくれて。私も“でっくん”って呼ばせてもらいました(笑)。
濱口さんから言われたのは、“みんなに頼ればいいから”と。“何も考えないで、ただみんなを見て、見ることができない状態なら声を聞いて、みんなを頼ってください”と言われて。私はその言葉をきっかけに、こうしようとかああしようとかまったくなく、いい意味で無の状態で現場にいられて。ただみなさんのお芝居を見て、感じたものを感じたままに出せたような気がします」
ある意味挑戦だったであろう、美しくも濃厚なキスシーンも印象的だ。
「そうですね。初めてでした。しかもクランクインの日から……。緊張していないわけではなかったんですけど、撮影現場では不安が一切なくて。朝子として私もすごい好きだったので(笑)。好きという気持ちのままに臨めました」
朝子という女性は、劇中のセリフを借りれば「ふわふわしているように見えて、思い立ったら一直線」だという。それは演じる彼女の嘘のない魅力にもつながっている。自分だったら誰と一緒に、どう生きていきたいのかーー。その命題に揺れる女性の話でもあるが、いま唐田えりか自身が愛したい人は?
「異性となら、ですか? うーん、やっぱり安心感がある人がいいですね。一緒にいて頼れますし。私がけっこう話すことが好きだし、話をしてくれる人も好きなので、いつも優しい人がいいですね」
高良健吾さん好きです!
「中学生の時にASIAN KUNG-FU GENERATIONの『ソラニン』という曲が大好きになって。それが映画『ソラニン』の主題歌だったんです。そこから映画を観て、高良健吾さんの魅力にハマりました。
『悼む人』とかもすごい衝撃的な映画でしたし、『横道世之介』も大好きです。でも、友達はキラキラ系の映画が好きなのでそういうジャンルの映画はみんなと一緒に行って楽しんで、高良さんの作品はひとりでじっくり観にいっていました(笑)」
ーーもう高良さん本人とは会えた?
「事務所の先輩の有村架純さんが月9の『いつ恋』(『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』)に主演していた時に、現場に見学に行かせていただきお会いしました。まだ事務所に入りたてで、どんな芸能人の方を見ても興奮してしまう時期だったので、初めて高良さんを直接見て、“生きてたんだ!”って思いました(笑)。“存在してるー”みたいな。すごく興奮しました」
ーーその感動は直接伝えられたの?
「廊下に私が立っていたんですけど、高良さんから“お疲れさまです”って声をかけてくださって、その一瞬で私、涙目になってしまって、目も合わせられなくて(笑)。その後に有村さんが“唐田ちゃん、おいで”みたいな感じで、みなさんがいる待合室に連れて行ってくれて“私の後輩の唐田ちゃんです”って紹介してくださって、その時にまた話しかけていただきました」
ーー東出さんと高良さんは友達だから紹介してもらえば?
「あー、おっしゃってました。でも、私はまだ会いたくないです(笑)。恐れ多くて、遠くから見ていたい……ただのファンですね(笑)」
カンヌでも一緒!
「フィルムカメラが趣味でふだんから持ち歩いているので、カンヌにも持っていきたいです。『寝ても覚めても』の現場でも、1か月で36枚撮りのフィルムを14本使いました。人を撮るのも風景を撮るのも好きなので」
ーーいまどきフィルムは珍しい!
「もともとカメラが好きだったんですけど、高校の時にカメラマンを目指している友達がいて、初めてフィルムカメラという存在を知ったんです。わざわざフィルムを入れて現像に出しにいくというのが、“あ、そういうのがあるんだ。面白そうだなぁ”って思って。それで、上京してから、担当になってくれたマネージャーさんがふだんフィルムカメラを使っているので、私も“これを機に”と始めました」
ーーどんな機材を使っている?
「主に使っているのは、コンパクトカメラで“ナチュラ・クラシカ”という、10年くらい前まで製造されていたものです。軽くて持ち運びも便利だし、オートなのですごい楽ですね」
ーー現像するまで見られないけど?
「そうですね。どういうふうに撮れているかもわからないし、それが逆に楽しみというか。現像出しに行ってから受けとるまでの時間も、“まだかなぁ”とか、出来上がってからも“こういうふうに撮れていたんだ”というワクワク感がすごい楽しくて、クセになっています(笑)。フィルムならではの楽しみというのがデジタルとは違う気がして。それこそ、お金はかかりますが、だからこそ愛情がわくというか、すごく大事に思えます」
〈PROFILE〉からた・えりか 1997年9月19日生まれ。千葉県出身。167センチ。A型。地元のマザー牧場でアルバイト中にスカウトされ芸能界入り。CMやドラマ『こえ恋』『ブランケット・キャッツ』『トドメの接吻』などに出演。女性ファッション誌「MORE」の専属モデルもつとめる。映画『ラブ×ドック』が5月11日より公開。