“ドラマ離れ”を防ぐべく、撮影現場では日々、努力が重ねられている。しかし、現在は予算が割けない“ドラマ不況”の真っただ中。良作を作りたい気持ちと、お金をかけられない現実が交錯している。
脚本や演出だけではなく、撮影現場を取り巻く環境も厳しさを増しているようで、スタッフからは数々の悲鳴が。以前とは変わってしまったドラマの撮影現場の様子を聞くと、スタッフたちの苦労が浮き彫りになって─。
腹が減ってはいい演技はできぬ
撮影の楽しみといえばやっぱり差し入れ。一風変わったものは特に喜ばれるそうで、
「『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)に出演していた石坂浩二さんは、まぐろの解体ショーや、吉野家のキッチンカーを差し入れていました」(ドラマ制作スタッフ)
石坂が自腹で差し入れをしたのには、ワケがある。
「最近は、ゴールデン以外のドラマではロケ弁が出ないことも多いんです。食の多様化でグルテンフリーなどを気にする人が多く、予算の都合で対応しきれずカットした現場も」(同・制作スタッフ)
長時間の撮影でなかなか家に帰れないスタッフにとって、ロケ弁は大事な栄養補給。頼みの綱がなくなり、彼らの士気は下がる一方だとか。
撮影を前倒しに!?気温調整は命がけ
「ここのところ、主演俳優の都合で撮影スケジュールを前倒しにしているドラマが多くあります。一般的には、放送しながら並行して撮影もすることが多いのですが、冬ドラマの撮影を夏に、夏ドラマの撮影を冬に行うことも」(制作スタッフ、以下同)
実際の季節と撮影シーンの気温が正反対になることもあり、現場ではスタッフの必死の取り組みが……。
「夏に冬の撮影をするときにキャストが汗をかかないよう、衣装の内側に氷を仕込んだり、移動式の超大型クーラーを運んだりと骨が折れます」
しかし、前倒し撮影にもメリットがあるそう。
「撮影のときに毎週の視聴率が発表されないので、視聴率のよしあしに現場の士気が左右されないんです」
SNSで大混乱…現場にファン殺到?
「“○○で撮影してる!”“キムタクがいる!”などと、撮影場所をSNSに投稿してしまう人がいるんですよ。そうすると、あっという間に人が集まっちゃうんです。
悪気はないのでしょうが、撮影が中断することも。見かけてもそっとしておいてほしいですね」(芸能プロ関係者)
うまく付き合えば宣伝にも使えるSNSだが、ロケ現場ではスタッフの頭を悩ませることもある。
「人が増えると危ないですし、スタッフから注意をすることもあるんです。でも、優しく言っても聞いてくれるワケもなく(苦笑)。
かといって、厳しく注意すると、その一部始終を動画つきでSNSに投稿されることも。どうしたらいいのか……」(制作スタッフ)
隣の席にあの人!?新幹線も経費削減
都内のスタジオやロケだけでなく、地方ロケが行われるドラマもある。
「ふだんはテレビ局集合にして、ロケバスでみんなそろって移動したり、各事務所ごとの車で現地入りしたりします。しかし忙しい役者は時間が合わせられずに、新幹線での移動になることも。また、仕事で東京と地方を行ったり来たりする人も新幹線を使いますね」(芸能プロ関係者)
しかし、新幹線移動にも経費削減の余波が……。
「実は、渡されるチケットが一般的な指定席なんですよ。以前はグリーン車だったのですが、できるだけ交通費を安く上げるために指定席のチケットを用意しているそうです。ほかのお客さんに迷惑がかかるのではと不安になります」(同・芸能プロ関係者)
『働き方改革』で注目子役の労働時間
「昨年3月、WOWOWが6歳の子役を未明まで働かせ、仮眠を現場でとらせたのちに、午前3時から再び撮影を始めたとして、問題になりました」(スポーツ紙記者)
法律では、原則として児童の労働を禁止しているが、
「13歳未満の児童は、映画の製作や演劇の児童に限り認められる場合も。保護者の同意や、学校生活に差し支えがないという学校長の証明書と同意書などの提出が必要です」(同・スポーツ紙記者)
働ける時間にも制約が。
「修学時間と労働時間を足して1週間に40時間、1日7時間を超えてはいけません。学校生活を送りながらこの条件を満たすのは難しく、短時間でたくさんのシーンを撮影できる子がいたらいいのですが……」(テレビ局関係者)
ちなみに、子役時代に芦田愛菜が重宝されたのはNGが少なかったためだという。