最近のドラマは平均視聴率が20%を超えることは少なくなっていて、あまり大ヒット作がないように感じられるが、それは『視聴率』というものさしの中に限ってのこと。
「タイムシフト視聴率」がカギ
「視聴率は番組が放送されているリアルタイムに、テレビ視聴されたものを指しますが、昨今のライフスタイルの多様化や録画機器の発達によって、視聴率は上がりにくい傾向。
リアルタイムでの視聴が難しい人は、録画したものを見たり、動画配信サービスを利用するなど、遅れて視聴できる場合もあります。その結果“リアルタイムの”視聴率は落ちているように見えるのです」(スポーツ紙記者)
実際に現在、視聴率を計測しているビデオリサーチ社では、(1)視聴率、(2)タイムシフト視聴率、(3)総合視聴率の3パターンを集計している。
「(2)タイムシフト視聴率は、リアルタイムでの視聴にかかわらず、放送開始から7日以内で視聴されたパーセンテージを指します。(3)の総合視聴率は、リアルタイムとタイムシフトの両方で視聴した場合でも、1回としてカウントした視聴率のことを指します」(テレビ誌ライター)
同社が発表している今年の1月クールに放送された番組の視聴率を見てみると、視聴率は平昌五輪や箱根駅伝などのスポーツ放送が高い印象だが、
「最終回で視聴率21・0%を獲得し、有終の美を飾った『99・9─刑事専門弁護士─』(TBS系)。このドラマは最終回のタイムシフト視聴率が13・1%にのぼりました。
総合視聴率では、平昌五輪で羽生結弦選手が金メダル獲得を決めたフリーの試合の35・2%が第1位。それに次ぐ2位が『99・9』で、31・0%にも上ったのです」(前出・スポーツ紙記者)
タイムシフト視聴は現在、とても手軽になっている。ハードディスクレコーダーなどの録画機器がなくても、民放公式ポータル『TVer』や各局のオンデマンドなどで無料視聴できるからだ。それゆえ、既存の視聴率以外の指標でドラマの質を測ることも増えてきている。
そのひとつに、データニュース株式会社が2400世帯のサンプルから、ドラマ自体の質を評価する『ドラマ満足度』という指標がある。
「ドラマの満足度を5点満点で集計したものです。満足度の毎話平均では、前クールは『アンナチュラル』(TBS系)が最終話で『99・9』を抜いて首位になりました。
ドラマ満足度が高いものは、必然的にタイムシフト視聴率が上がる傾向にあり、『アンナチュラル』の最終回も14・1%と『99・9』を上回りましたね」(前出・テレビ誌ライター)
今クールのドラマでは、月9『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)の満足度が高水準を保っている。
「初回は3・42と好発進とは言えなかったのですが、満足度は右肩上がりに上昇。第3話では、3・96にまで数字を伸ばしています。3・7ポイント以上が高得点と言われるなかで、優秀な成績。4話では若干ポイントを落としましたが、このままいけば人気ドラマになりそうです」(前出・スポーツ紙記者)
人気なのは“頭を使う作品”
満足度の高いドラマには、共通した特徴があるという。
「ひとつは’17年に放送された『カルテット』(TBS系)や前クールの『anone』(日本テレビ系)など、繰り返し見て楽しめる伏線などが張り巡らされている作品。
もうひとつは、今クールの初回満足度が高かった『ブラックペアン』(TBS系)や『特捜9』(テレビ朝日系)などのように、医療や事件、法律などが題材となっていて、簡単には理解するのが難しい作品です。
視聴者が物語をただ受け取るだけでなく、分析をしたり、頭を使ったりという工程がある作品は、満足度が高いように思います」(前出・テレビ誌ライター)
目に見える“視聴率”という指標は格段に下がってしまっている昨今だが、視聴者が求めているものは変わらず、“見ごたえのあるドラマ”。さまざまな視点から読み解いていくと、日本のドラマはまだまだ捨てたものではないのかもしれない。