45歳以上の2人に1人がかかり、動脈硬化やがん、認知症などさまざまな弊害をもたらす「歯周病」。早期発見が重要課題だが、見つかったらどんな処置が行われるのか? 基本ケアから手術まで、治療法を詳しく解説します。
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「歯周病の基本治療は、歯垢と歯石、つまり汚れを取り除くことです」
と話すのは、歯科医の若林健史先生。歯垢を取り除くには、やっぱり毎日の歯みがきが基本。
歯周病が悪化すると──
「自分ではていねいにみがいているつもりでも、ほとんどの人にみがき残しがあります。また、デンタルフロスを使わないと歯と歯の間の汚れが取れず、治療が進みません」(若林先生、以下同)
そのため多くの歯科医院では、歯みがきのブラッシング指導も行っている。
しっかりと歯みがきをできれば、歯垢は自宅でも取り除くことができるけれど、歯石は難しい。
「歯科医院で行う“歯石取り”といわれるクリーニングが必要です」
スケーラーという器具を使って汚れを取り除くのがクリーニングの基本だ。
「歯石は歯の根っこの奥まで入り込んでいることがあります。歯周病が悪化すると、歯周ポケットの10ミリ以上も奥に歯石がついていたりします。根の奥についた歯石は血液と混じり合い、黒っぽい色になっているのが特徴です」
歯みがきとクリーニングを繰り返し、汚れが少なくなると、赤く腫れた歯ぐきが引き締まり、ピンク色に戻ってくる。
「ただ、歯みがきをきちんと行いクリーニングもしているのに、状態がよくならない患者さんもいます。その場合は細菌検査を行い、前述したレッドコンプレックスと呼ばれる悪質な菌がいないかどうかを調べます」
細菌検査は、こよりのようなペーパーポイントと呼ばれるものを歯周ポケットに差し込んで行われる。費用は自由診療、歯科医院により異なるが3万円程度。
「悪質な菌がいた場合は、抗生物質の薬を使う抗菌療法を行います」
器具で取れないほど歯周ポケットの奥にある汚れは、歯周外科での専門治療が必要になる。
「歯ぐきを切開し、歯根の表面についた汚れを取り除きます」
切開して汚れを除去すると、歯周組織が壊れて、歯槽骨がなくなっていることがある。
「歯周組織を再生する材料を添付して、歯槽骨の形成を助けなければなりません。しかし、骨のなくなり方によっては形成できないこともあり、すべての人が行える治療ではないのです」
手術で見た目が変わることも
上あごの歯肉を切除して、下がった部分に移植する方法もあるが、これにも手術が必要だ。
晴れて歯周病が治ったとしても、残念ながら、見た目が変わってしまうことがある。汚れが除去され、歯ぐきの腫れがなくなったことで歯の隙間が目立つようになるからだ。
これらは矯正歯科治療やホワイトニングなどで解消できるが、保険がきかない自由診療となるため、費用が高額になることも。
「ここで気をつけたいのは、汚れをしっかり落として歯ぐきを正常に戻してから、矯正歯科治療や調整に入ること。汚れが残った中途半端な状態で行うと、高額な治療費を投じても歯を失うことになりかねません。まずは歯周病専門医のもとでの治療が先決です」
治療完了しても、歯周病菌が完全にいなくなったわけではない。正しい歯みがきを毎日続けて、歯科医院での定期的なクリーニングが重要。お口の健康は1日にしてならず、なのだ。
【お話を伺ったのは……】
若林健史先生
歯科医。若林歯科医院院長。長年、歯周病治療に従事し、つねに最新の治療を行う第一人者。日本歯周病学会理事、日本歯周病学会専門医・指導医、日本臨床歯周病学会副理事長