両容疑者と被害女性が暮らす家。周囲に悲鳴などを聞いた人はいない

 顔中に広がる痛々しい暴力の痕跡は、百戦錬磨の捜査員らも息をのむしかなかった。

「署員のみんなも、びっくりするくらいの傷」(捜査関係者)

 と驚いたという。

 にもかかわらず当初、被害女性は自分が暴力を受けていることを頑なに否定した。

「署員が最初、家を訪れて、被害女性が出てきてくれたとき、“これは大丈夫です。自分で転んでできたものですから”って言っていました。やはり容疑者2人が怖かったんでしょう。マインドコントロールされているような状態でしたからね」(前出・捜査関係者)

 その状態が解けて“実は殴られたんです”ということがわかって、急きょ対策を取った。

「もう誰が見ても、ほかの人からやられた傷だとわかる。署員も“こんなの自分で倒れただけでできる傷じゃないだろ”って言ってましたからね」(同)

暴力での支配

 5月28日に傷害容疑で逮捕されたのは、千葉県酒々井町の会社員・高村良容疑者(28)と内縁の妻で自営業・小倉実里容疑者(27)。今年3月から5月中旬にかけ、自宅で同居していた被害女性(25)を、殴る・蹴る・熱湯を顔にかける・竹串で太ももを刺す・ぺンチで歯を折るなど、まるで凄惨なリンチのように痛めつけたという。

 5月18日、被害女性は行きつけのコンビニ店を訪れた。女性の顔がひどく腫れあがっていたため店員が不審に思い、警察に通報。事件が発覚した。

 近隣の住民は異変を感じていた。

「18日に警察が女の子を保護した直後から、毎日あの家に、警察の人が取り調べに来ていました。このあたりはもともと車が通らないんですよ。通り抜けの道でもないので、何であの家の前にいつも車が止まっているのかなって、違和感はありましたよね」

 両容疑者と被害女性が引っ越してきたのは、「確か今年の2月か3月」(近隣住民)。

 警察の事情聴取に「(暴力をふるったのは)今年の3月ぐらいからということでした」(前出・捜査関係者)と供述していることから、引っ越し直後から暴力をふるっていたことになる。

「引っ越してきたときに1度、あいさつに来たんですよ」

 そう明かすのは別の近隣住民だ。戸惑いながら続ける。

今回、年齢をテレビで知ってびっくりしました。若いなんて印象はまったくなくて、2人は夫婦なんだろうなと思いました。年齢も40代くらいなんだろうなって勝手に思っていました。(被害に遭った)あの女の子が娘だと思っていたので。

 町内会に入りたいという話は聞きました。お金(会費)を持って行くみたいなことを言っていましたけどね」

 引っ越しのあいさつに訪れた際、両容疑者と被害女性は、

「お菓子ではなかったと思いますが、値段的には妥当なもの」(前出・近隣住民)

 を手土産として持ってきた。

 引っ越しのあいさつに訪れるという常識がある一方で、どちらもブレーキ役になることもせずに同居人を徹底的に痛めつけるという非人間性。

すぐには治らない、全治は不明

 小倉容疑者は、被害女性が以前働いていた勤務先の上司。家庭の事情で住む場所がないという被害女性を同居させていたという関係性も、ここまでであれば、困っている後輩を助ける人のいい先輩カップル、という図式になる。

 ところが容疑者は、暴力で被害女性を支配した。動機は?

「高村容疑者は“話をしているときに女性が寝てしまったり、怒鳴っているのに人の話を聞かないときに殴ったりはしました”と供述しています。

 一方の小倉容疑者は、“約束を守らなかったりしたときに、頭を殴ったり顔にビンタしたことはあります”と供述しています。ただし小倉容疑者は“道具は使っていない”と言っています」(前出・捜査関係者)

 被害者が保護された当時の顔写真を見てみると、思わず目をそむけたくなるほど痛々しく、おびただしい暴力が加えられたことを物語っている。

 おでこ、目元の周囲、頬、あごが赤く腫れあがり、そのうえに、黒く焦げたような傷の痕が覆っている。唇は分厚く膨れ上がり、閉じることができない。転んでできる傷ではないことは一目瞭然だ。

「これはまあ、すぐには治らないですよ。(全治は)不明ですね。重傷と一概にいえるかどうかはわかりませんが、相当なヤケドも負っていて、皮膚もただれています」

 と前出・捜査関係者が傷のひどさを伝える。現在、被害女性は警察の保護下に置かれ、回復に向かっている。暴力で支配されていたが、監禁もしくは軟禁状態ではなく外出することもあったという。

「逮捕された2人はあんまり見かけたことはないんだけど、女の子のほうはちょくちょく見かけましたね。“こんにちは”みたいにあいさつはするんですけどもね」

 と前出の近隣住民。

「(悲鳴とかは)私、聞いていないんですよ。まさかそんなことをするなんて思わないですから、そういう目で見ていませんでした」

 もし、近隣住民がここにある1枚の写真のような顔の被害女性を見ていたとしたら、気づかないわけはない。あるいは帽子やマスクでうまくカムフラージュしていたのか。

 逮捕の朝、「何か異様な雰囲気。制服の警察官ではなく、かっちりとした服装の人が数人来て」(前出・近隣女性)2人は逮捕された。

「報復なども考えられますので通報者の情報は秘匿。何をしでかすかわからないですから」(前出・捜査関係者)

 被害女性が今後、容疑者カップルと接点を持たずに暮らすことを願う。