みぽち 撮影/北村史成

 タイトルの『ヤカラブ』とは、輩(ヤカラ=不良)とラブをかけた造語で、つまり現代版ヤンキー少女の恋愛といった意味だそうだ。人気読者モデルの“みぽち”こと坂本美穂さんの実体験をもとにし、マンガ化した作品である。もととなった体験談は雑誌掲載当初、大反響を呼び、全国の女子高生が「リアルで切ない」と涙したという。

 みぽちさんは、ギャルファッション誌で不良っぽいコーディネートで誌面をかざった“ナンバーワン悪羅(オラ)ギャル”と呼ばれたカリスマモデルだ。どんなに怖い女性が来るかとドキドキしていたのだが、とても明るい笑顔の、礼儀正しい女性が現れた。

腕に彫ったお互いの名前を根性焼きで消す

ヤカラブはめっちゃガチなエピソードですね。中3から高1まで、がきんちょのころの話です。少女漫画家さんに描いてもらっているので、ちょっとマイルドになってます(笑)。小説版もあるんですが、そちらのほうがリアルかな」

 ひょんなことから付き合いはじめ、本気で愛した男性“こーへい”とのラブストーリーだ。印象的なエピソードに、こーへいが腕に“みほ”と自分でデカデカとタトゥーを入れ、みぽちさんも小さく“K”と入れた、というものがある。

針に墨汁をつけて自分で彫るんです。私たちが入れたら、周りの子たちが“かわいい! わたしたちもやろう!”ってなって、ちょっと流行(はや)りましたね

 しかしその後、2人の間に溝ができ、タトゥーのその後についてふれた一文がこれだ。《腕に彫ったふたりのキズナ。タバコの先で消したあの日のコト。恋がこんなに苦しいなんて想わなかったよ……》いわゆる根性焼きで、みぽちさんはKの字を消した。

 高校に入って本格的な入れ墨を入れる子もいた。みぽちさんもその後、手や腕にガッツリとタトゥーを入れる。悪羅ギャルらしいビジュアルであったが、現在はタトゥーの除去施術をしているという。

タトゥーを入れたことは全然後悔してないんですよ。そのおかげで雑誌にも出られたわけなので。ただタトゥーがあるとテレビ番組に出られないことが多くて。3年前に付き合っていた彼氏に相談したら“だったら消せばいいじゃん”って言われて。それもそうだな〜、と思って消し始めました

 気軽な気持ちで始めたが、タトゥー除去はタトゥーを入れるよりもずっと痛いという。しかも3年かけた今も、まだ完全には消えていない。アドバイスをくれた彼氏とはとっくに別れてしまった。

彼は埼玉の上尾の人で、渋谷から電車で会いに行ってました。ニッカボッカーを履いているような職人系の人でした。田舎くさいような、やっぱりそういう人が好きなんですよ(笑)」

 その彼氏と別れて以来、かれこれ3年間、彼氏がいないという。こーへいさんとはヨリを戻さない?

「もう全然会ってません。最後に見たのは成人式のときだから、6年くらいたつかな。そろそろ私、ヤバイですよね(笑)。渋谷で遊ぶことが多いんですけど、渋谷の人はパリピすぎて付き合いたくないんです。30歳で結婚したいと思ってるので、まだ時間はあるんですけど……とか言ってるうちに35歳とかになっちゃうのかな?(笑)」

 彼は制服の上着にニッカボッカーをはき、彼女は制服に彼の高校のネクタイをつけていた、「こーへいとみほ」のカップル時代からもう10数年がたっている。

みぽち 撮影/北村史成

ギャル不在の世の中はさみしい

 帰りたいと思ったことは1度もない、と話すみぽちさんだが、長野に住む家族とはとても仲がいい。

「中学時代にこーへいと付き合っていたとき、ママは何度も学校に呼び出しくらってたけど“気にしなくていいよ”ってかばってくれました。17歳で高校をやめて東京に出て渋谷の109で働き始めたときも“いずれこうなると思っていたよ。あんたの居場所は長野じゃないよ”って笑顔で送り出してくれてすごい感謝してます

 今でも母や姉とはしょっちゅうディズニーランドなどに遊びに行くという。

めっちゃ仲いい自慢の家族なんです

 なんのてらいもなく“家族が自慢だ”と笑顔で語るみぽちさんを見ていると、「悪羅ギャル」「強めギャル」などと呼ばれ、田舎のちょっとグレた女の子たちの憧れの的だったという過去が不思議に思えてくる。

 最近では街からギャルがほとんど消えてしまった。アイコンだった渋谷109もロゴが変わり、彼女が主戦場にしていたギャル雑誌も冊数は激減している。モデルとして生き残るのは難しい時代になってきた。

マンバギャルもいない、着ぐるみを着てる子もいない渋谷はさみしいです。でも26歳になって、初めて将来をちゃんと考えるようになりましたね。これまでは“どうにかなるっしょ”と思ってきたんですけど。今は仕事や服装や将来のこと、真剣に考えてます。できる限りモデルの仕事は続けていきたいですし、最近は動画配信やSNS、ブログにも力を入れています。ユーチューブで動画を見てファンになりました、と言ってもらえると、とてもうれしいですね!」

 厳しい時代になっても、どこまでも笑顔でポジティブシンキングなみぽちさん。しゃべっているだけで元気をもらえるような気がした。

『ヤカラブ 恋春〜みほの物語〜』haruko=作画、鈴木有季=原作(リイド社/税込680円)※記事の中の写真をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします

ライターは見た!素顔の彼女

めっちゃ場面人間なんですよ〜」というみぽちさん。場面人間とは“その場のノリとテンションで動く人”という意味のギャル語だ。「これをやるって決めたら、やらないと気がすまないんです」。だから高1で学校をやめ、17歳で上京、知り合いを頼って住まわせてもらい、一目惚れした渋谷109のショップで働き始めたそう。「でも毎日楽しくてウキウキでした」、そのお答えに若さとパワーを感じました(笑)!

<プロフィール>
みぽち◎本名、坂本美穂。1991年生まれ、長野県出身。雑誌『SOUL SISTER』(現在は休刊)のレギュラーモデルとして活躍し表紙に多数掲載。「No.1悪羅ギャル」との呼び声も高いギャル界のカリスマ。2012年には俳優の坂上忍が演出を務めた舞台に出演するなど、活躍の幅を広げている。

(取材・文/村田らむ)