安藤サクラ 撮影/佐藤靖彦

お話をいただいたとき、本当にびっくりしました。是枝監督の作品は、すごく生々しいけど、美しい女性の方が演じられているイメージがあったので、“え? わ、私!?”って(笑)

 カンヌ国際映画祭にて、最高賞であるパルムドール賞を受賞した映画『万引き家族』(TOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開中)。安藤サクラ(32)は母親として、妻として、家族を支える柴田信代を演じる。

「ずっと信頼していて、可愛がってくださっている先輩方が、是枝監督の作品によく参加されている方が多くて。私もついに、是枝組の現場に入ることができるのかと、とても楽しみにしていました」

 実際に撮影が始まり、“是枝組”の独特の空気を肌で感じたと語る。

普段の撮影は、カチンコが鳴ったら急に空気の粒子が変化して、異空間にいるような感覚になるんです。でもそれが今回、全然なくて。川で獲ったお魚を、水道水の入った水槽にドボンッて入れるのではなく、川の環境をそのまま水槽に移したような感じに似ていて。普段生活している呼吸のリズムのまま、撮影に臨めるんです。だから私は、ごちゃごちゃ考えすぎるのではなく、ただひたすらに毎日おおらかな気持ちで、現場へ“家族”に会いに行っていただけな気がします」

 完成した作品を安藤自身も見て、「見ている側も家族の一員になったかのような感覚になる」と話す。

「ほかの映画を見ても、だいたいセリフをしゃべっている人が、画面に映りますよね。でもこの作品は、しゃべっている人でも、それを聞いている人でもない人が映されていたりするんです。演じている側からすると“あ、次私しゃべんなきゃ”とか必死になっている姿が映っていなくて、半分ホッとしたり。でもだからこそ、映画を客観的に見ている人も、彼らの会話の中に入っているかのような感覚になれるのかなと」

 共演にはリリー・フランキーや樹木希林など、ベテラン勢も多かったが、

年はバラバラだけど、すごく繊細で優しい人の集まりで。休憩中もみんなでゴシップの話をしたり。希林さんが、(松岡)茉優ちゃんからいろいろ聞き出そうとするんです。“整形するならどこをしたい?”とか“今まで何のオーディションに落ちた?”とか(笑)

安藤サクラ 撮影/佐藤靖彦

 子役の城桧吏(じょうかいり)くんや佐々木みゆちゃんとは、

「いまだにいろんな大人の方から怒られるんですが、私が作曲した“ケツの穴”っていうオリジナルソングを延々と教えていました(笑)。あとは、私が小学生のときに歌っていたような歌を一緒に歌ったり。そのおかげなのか、撮影が終わった今でもすごく仲がいいんです」

 今作は万引きを生業としながら、小さな家で身を寄せ合い、決して裕福ではないが笑顔の絶えない家族が描かれる。

 では、安藤にとって“家族の意義”とは……?

100人いたら、100通りの家族のあり方があると思っていて。定義とか意義とか、難しいことはわからないけど、“あれが私の家族です”ってわざわざ言葉に出さなくても、自分の心の中で家族だと思う人がいれば、それはもう家族なんじゃないかなって私は思います


あんどう・さくら◎1986年2月18日生まれ。2007年、『風の外側』で映画デビュー。次期朝ドラ『まんぷく』のヒロインに抜擢されるなど、今後の活躍も期待される。近年の代表作は映画『0.5ミリ』『百円の恋』、ドラマ『ゆとりですがなにか』『ママゴト』など多数。