かつて外国人タレントを“ガイタレ”なんて呼んだけれど、これからは障害のあるタレントを“がいタレ”に。東京パラリンピックも控えるなか、最近は心身にハンディキャップがありながらも活躍する個性派が続々と増えている。健常者にはない“個性”をとくとご覧あれ!
「障害者タレント専門」事務所もオープン
「プロダクション立ち上げのきっかけは、障害のある女性向けフリーペーパー『Co-Co Life☆女子部』の読者モデルへの仕事依頼が増加したからです」
そう話すのは、「Co-Co Lifeタレント部」代表の岡安均さん。
「法律は整備されてきましたが障害者の多くは、やりがいのある仕事に就くことが困難です。雇用や活躍の場にもなればと思っています」
現在は18組のタレントが参画しているが、6月2日に行われた障害者タレントオーディションには、200人もの応募が。そんな状況に手ごたえを感じていて「今では、性別を超えたタレントが当たり前のようにメディアに出ています。障害者タレントも障害に関係なく個性が認められて活躍できるようになればと思います」
ホーキング青山(44)
■“元祖・障害者芸能人”ならではの苦労と達観!
「この姿で登場すると、まず観客が引いてしまうんですよ」と長年の悩みを話すのは、『先天性多発性関節拘縮症』で電動車イスに乗る青山。
「車イス芸人」としてデビューしてから24年、新著『考える障害者』(新潮新書)でも毒舌まじりに障害者のさまざまなタブーに切り込んでいる。
「乙武洋匡さんや濱田祐太郎さんの活躍を見ると、やはりルックスも大切だなと。こっちは障害がもうひとつ増えた気分ですよ」と自虐的に笑う。
これから東京パラリンピックに向けて、“障害者バブル”が起きるとみている。「私もその波に乗りたいですよ!」と車イスから落ちそうになるほど前のめりになるが、ベテランらしい冷静な見方も。
「障害の見せ方や、芸の中身を考えて磨いていかないと淘汰されていくと思いますよ」
猪狩ともか(仮面女子)(26)
■不慮の事故で不随となったアイドルの「強い決意」!
「今までのように踊れない私に需要はあるのだろうか、と考えた時期もありました」
“最強の地下アイドル”との異名をとるグループ「仮面女子」の猪狩は、今年4月に都内の神社で大ケガを。
脊髄損傷による両下肢麻痺で車イス生活になり失意を味わったが、周囲の励ましもあり芸能活動続行を決めた。病院でリハビリに励む毎日だが、今後は「ライブ活動が難しくなるぶん、講演やラジオ、作詞など今までとはまた違った活動を増やしていきたいです」と前向き。
「私が活動を続けることで、たくさんの人の希望の光になることができたらうれしいです」と“最強のアイドル”になる誓いを。
あそどっぐ(39)
■写真集も発売した“世界初の寝たきり芸人”の「大目標」!
「多目的トイレで順番待ちしていると、たまに若いカップルが出てくる。多目的」
「生後1か月の甥っ子がヨチヨチ歩きを始めたとき、おじを超えたな」
『脊髄性筋委縮症』で、顔と左手の親指しか動かせず24時間態勢でヘルパーがつく寝たきり芸人が伝えたいのは、「感動」ではなく「笑い」。
すでに写真集『あそどっぐの寝た集』(白順社)も出版しているが、今年達成できなければ引退と決めている目標がある。
「『徹子の部屋』に出演することです。でも今年も半分近くが終わっているのに声がかからないので、黒柳さんに直接交渉するしかありません(笑)」と熊本から伏せったままラブコールを送る。
森田かずよ(40)
■障害者パフォーマーの「リーダー」的存在!
「肩ひじ張らず、しなやかに活動を続ける強さを持っています」
と、森田を評するのはCo-Co Lifeタレント部代表の岡安さん。
生まれながらに、二分脊椎症、先天性奇形、側弯症の障害がある森田だが、18歳より表現の世界へ。
奈良の劇団を経て、義足や車イス姿で、女優やダンサーとして舞台に。
同・事務所と提携しながら、『Co-Co Life☆女子部』の編集スタッフとしても活動し、アドバイザー的な役割もこなしている。
濱田祐太郎(28)
■お笑いの“頂点”をとった盲人漫談家の「大好物」は?
ピン芸人の日本一を決める『R-1ぐらんぷり2018』でチャンピオンとなった濱田。
生まれつき左目は見えず、右目は明るさを感じ取れる程度で「表情や動きを使っての笑いができない」というハンディキャップを乗り越えての快挙だった。
その後、仕事の依頼が増え拠点の大阪以外での活動も多く少々お疲れぎみのよう……。そんな吉本芸人の活力源は「炊きたてのごはん」。
普段は自分で炊くこともあるそうだが、「作って待ってくれている人がいれば理想です!」と妻夫木聡似の甘いマスクに“応募者”は殺到しそうだ。
BadAss Sores(バッドアス ソアーズ)
■車イスの「ベテラン」と「初心者」による“ユーチューバー・ユニット”!
「背骨を骨折して車イス歴2年の曽塚が“同志”をSNSで募ったところ、中嶋の目にとまりコンビを組むことになりました」
と、Co-Co Lifeタレント部代表の岡安さん。
中嶋は9歳のときに車イス生活となり、アメリカの大学で映画を学んだ本格派。
すでに動画サイトで、障害者の恋愛などの“ぶっちゃけトーク”を公開している。
現在は、曲作りをしていて、今後は歌手活動も目指しているとか。
乙武洋匡(42)
■まさかの引退宣言!? 大ベストセラーから20年の“収穫”と“壁”!
「“老害”にはなりたくないので、そろそろ引退したいという気持ちはあります」
そう率直な気持ちを語るのは、学生時代に出版した『五体不満足』(講談社)が、500万部以上の売り上げとなった乙武さん。先天性四肢切断のため電動車イスでの生活を送るが、スポーツジャーナリストや報道番組のサブキャスター、小学校の教員など作家やタレントにおさまらない活動を。
「“障害があるからといって、チャンスが与えられない社会は健全ではない”という勝手な使命感からそのような活動を続けてきましたが、20年がたち成果と限界を感じています」
それは2年前に引き起こしてしまった不倫スキャンダルで痛感したという。
「自業自得ではありますが猛バッシングを受けました。その中には、障害者のくせに……という差別的な内容もありました。逆に、あそこまで叩かれたということは、障害者に対する過剰な遠慮がなくなってきたともいえると思うので、そういう意味では進歩ですよね」
障害がある芸能人やタレントが増えている状況について、
「非常にいい傾向だとは思います。ただ、必要以上に持ち上げられたりバッシングされることもあるので、自分が障害者であることを今まで以上に認識させられると思います」
と経験談を語る。そして自身の今後の展望をこう話してくれた。
「僕みたいに低い踏み台は踏み越えて、多種多様な障害者が当たり前のように活躍してもらいたいです。そうしたら僕も安心して海外移住できます」
神子彩(21)
■映画にドラマに舞台に活躍! ダウン症女優の「あこがれ」!
「夏の公演を最後までやりぬいて頑張りたい。歌とダンスをもっと頑張って有名になりたいです」
そう語るのは、知的障害者タレント専門の事務所「アヴニール プロダクション」所属の神子。現在は、8月に予定されている舞台『ムーンフラワー~Moon Flower~』の稽古の真っ最中だ。
13歳から芸能活動を始め、『中居正広の金曜日のスマたちへ』などの出演実績もある。自身の障害が芸能活動に不利になると感じたことはないそうで、
「愛原実花さんのようになりたいです」
と、ミュージカルで共演した元タカラジェンヌが目標だそう。