今時、離婚は珍しくない。2016年の婚姻件数は約62万組だが、離婚件数は約22万組である。役所に届けられる離婚届は、婚姻届の3割に相当する。
ただし、結婚した夫婦の3組に1組が離婚すると思ったら、それは早合点だ。
20代、30代の人が占める割合は、1995年当時は28%だったが、2016年現在では22%になった。結婚適齢期の人の割合が減っており、それだけでも婚姻件数は減る。離婚届と婚姻届の割合を見ても、それが離婚率を表すわけではない。
離婚率の母数は、婚姻届の数ではなく、“配偶者がいる人”にすべきである。2016年の離婚件数は約21万7000件だが、配偶者がいる人は約6,260万人で、1年間に0.69%の夫婦が離婚している計算になる。
(*ちなみに、統計上の「離婚率」は人口千人あたりの離婚件数で表される)
この「離婚率」で比較すると、沖縄県が1.19%と群を抜き、逆に、富山県、新潟県、山形県、秋田県、島根県、福井県が0.55%以下と低い。日本海側が低く、沖縄はその2倍以上だ。どうやら離婚率には地域性がありそうだ。
東京都の離婚率は0.78%と比較的高いが、市区町村別に見るとバラつきがある。山手線の沿線は1%前後で高く、その内側にある文京区が0.71%と低い。どうやら、繁華街があるところでは高く、住宅街になると低くなるらしい。
また、足立区、江戸川区など、荒川と江戸川に挟まれた城東エリアは、東京西部に比べて明らかに離婚率が高い。それはなぜか?
城東エリアの区は、犯罪発生率や、平均年収の低さなどのネガティブな項目でランクインする。犯罪発生率も、平均年収の低さも、個別には離婚率との相関関係はないが、これらの項目で上位に入ることで、住宅地としてのブランド力が下がる。そして、この数値化が難しい「ブランド力」が、離婚率と関係しているように見えるのだ。
ブランド力のある地域に住んでいる世帯は、生活に対する満足度が高く、家族も円満なのかもしれない。また、世間体を気にして、離婚に踏み切らないのかもしれない。
日本海側の各県で離婚率が低かったが、この地域は3世代家族が多い。子育てのしやすさが満足度につながるのか、「家」や世間体を気にして離婚しないのか。いずれにしても、東京の人気エリアと共通項があるように思える。
意外と知らない福生市の外国人比率
東京に話を戻すと、離婚率が低い多摩エリアの中で、福生市周辺だけが1%を超えており、異様に高いことに気づく。
福生市は、知名度は低いが、市の1/3が横田基地という「基地の街」である。市の南端にある拝島駅からは、米軍・横田基地への専用線が延びており、ジェット燃料の貨物輸送が行われている。
横田基地は、瑞穂町や武蔵村山市などにも跨っているが、その玄関口は福生市で、青梅線の福生駅や牛浜駅が最寄り駅だ。登山客が多いイメージの青梅線だが、この辺では米軍関係者を多く見かける。
このような街だけに、多摩エリアの中では断トツに外国人比率が高い。しかも、この数字には米軍関係者は含まれない。インターナショナルな街だけに、外国人にとっては住みやすいのだろう(ちなみに、現在の福生市は、アメリカ人ではなく、ベトナム人とペルー人の割合が高い)。米軍基地が多い沖縄にも、同じことが言える。
都内の市区町村を比較しても、外国人比率と離婚率には相関関係がある。異文化が共存するところは、様々な事情を抱えた人たちも受け入れやすいのかもしれない。
青梅特快(中央・青梅線)に乗る機会があれば、離婚率を意識してみると面白い。
始発駅がある千代田区(東京駅)は平均的だが、日本最大の繁華街がある新宿区(新宿駅)で離婚率が一気に高くなり、そこから中野区(中野駅)、杉並区と徐々に下がり、人気の武蔵野市、三鷹市の両市(三鷹駅)で0.6%以下になり、小金井市、国分寺市(国分寺駅)まで続く。そして、知られざるインターナショナルな街、福生市(牛浜駅、福生駅など)に入ると急上昇するのだ。
青梅特快が走る路線は、高架が多いためアップダウンは少ないが、家族像の変化は激しい。その沿線に注目すると、街の雰囲気を大事にしているところは、イメージだけでなく、離婚率も低いことに気づく。住む街を選ぶというのは、思った以上に重要なことである。
文)佐藤充(さとう・みつる):大手鉄道会社の元社員。現在は、ビジネスマンとして鉄道を利用する立場である。鉄道ライターとして幅広く活動しており、著書に『鉄道業界のウラ話』『鉄道の裏面史』がある。また、自身のサイト『鉄道業界の舞台裏』も運営している。