強敵と言われていたコロンビアに快勝し、セネガルとは引き分け、ファンの期待を裏切らない今回のサッカー・ワールドカップ。
さて、各テレビ局はW杯のニュースを報じるときに、解説者を用意して放送に臨んでいるが、異色の解説者が登場した。
歌手の小柳ルミ子だ。
『小柳ルミ子』が若い人には馴染みがないのは仕方ない。
小柳ルミ子は芸能界ではスゴい人
小柳は'70年代のアイドル歌手だからだ。'70年に宝塚音楽学校を主席で卒業した後、翌年、『わたしの城下町』で歌手デビューした。デビュー曲はその年のオリコン年間シングル売上チャート第1位を記録、また日本レコード大賞最優秀新人賞も受賞した。
'72年には『瀬戸の花嫁』で日本歌謡大賞を受賞、その後も次々とヒットを飛ばし、日本の歌謡史に名前を残す人気アイドル歌手となった。
アイドルを卒業した後もリリースした曲はヒットを重ね、実力派歌手として、認められるようになった。NHK紅白歌合戦には18年連続出場を果たしている。
さらに歌だけでなく、女優としての活躍も目覚ましい。数々の映画賞を受賞しているが、'83年に公開された『白蛇抄』で、第7回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を獲得している。テレビドラマにもたびたび出演しており、現在放送中のNHK大河ドラマ『西郷どん』にも、薩摩藩主・島津斉興の側室・由羅の役で出演している。
また、大澄賢也との離婚騒動を覚えている人は多いだろう。
「ふたりは結婚生活12年で離婚することになったのですが、小柳が大澄に突き付けた条件が話題になりました。それは、大澄に1億円の慰謝料を要求したことでした。
それを支払うことができなければ、以前の無名のバックダンサーに戻ること、という条件でした。大澄は慰謝料を支払うことを選んだといいますが、ふたりが何も語っていないので、実際はどうだったのかわかりません」(スポーツ紙記者)
そんな彼女は“サッカー通”として注目を浴びているが、今ではサッカー中継にも出演してプロ顔負けの解説をしているから驚きだ。
「彼女がサッカーにのめりこむようになったのは、'02年にテレビでデビット・ベッカムを見てからだといいます。最初はサッカーファンというよりはベッカムファンだったんでしょう」(テレビ局関係者)
しかし、それから試合を観戦すること、年間2000試合以上、仕事がオフの日は1日10試合もテレビで観戦しているという。しかも、ただ見ているだけではない。
「ブログに掲載された観戦記が評判になりましたが、実は試合の内容や感想を詳しくノートに書き込んでいるんです。ノートの数は100冊を超えているそうです」(前出・スポーツ紙記者)
“ワールドカップ”バブルを見込んで出現した、芸能人の“にわかサッカー通”とは違うようだ。そこで彼女に目を付けたのがフジテレビ。昨年7月に行われた『浦和レッズVSドルトムント』戦の生中継で副音声の解説に彼女を抜擢。
「プロの解説者ではありませんしサッカー経験者でもありませんから、踏み込んで技術的なことを分析したり解説するのは難しいんじゃないでしょうか。ですが、長年にわたって多くの試合を見ていますから、選手の人間性やメンタルな部分、クセなどについては、よく捉えているようです。違う観点から試合を解説するのも面白いと思いました」(前出・テレビ局関係者)
ファンの拡大につながる、と彼女の起用を評価するプロの解説者もいる一方で、批判的な声も聞こえてくる。
5月27日に行われた欧州チャンピオンズリーグ決勝で、同じく副音声で解説を務めたのだが、
「ミスした選手に対する辛辣なコメントがサッカーファンから不興を買っていました。技術的な面を解説するのではなく、単に感情的なコメントだったので、不快と思う人もいるでしょうね。サッカー好きというだけで、芸能人を解説者に仕立てるテレビ局に、疑問を呈するスポーツジャーナリストも少なくないですしね」(前出・スポーツ紙記者)
ツイッターなどのSNSを見渡すと、
「小柳ルミ子、まじいらん」
「解説外してもらっていいですか。不愉快です」
などの意見が大多数で、
「面白かった」
「これはこれで楽しい」
などという好意的な意見はごくわずかのようだ。
それは、そもそも、彼女に解説者としての役割を担わせたテレビ局に責任はあると思うのだが、どうなのだろうか。
批判の声は彼女にも届いているハズ。しかし本人は、かつての“解説者”デビューのときに「解説って仰らないで。好き勝手なサッカートークですから」と語っていたことも。観ているほうも、そう思っていれば腹も立たないのでは……。
<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>
◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。