デビュー15周年を記念し、6月27日にベストアルバム『川嶋あい 15th Anniversary BEST』をリリースする川嶋あい。代々木公園での弾き語りライブから始まり、今や日本を代表する女性シンガーソングライターのひとりになった彼女だが、そこに至るまでのストーリーにはどんな出逢いや別れ、葛藤があったのか本人に話を伺った。

川嶋あい 撮影/森田晃博

──今作で15年をあらためて振り返り、どんな感慨を持たれましたか?

 本当にいろんな方と出逢って、いろんな経験をさせていただいた15年だったなと感じました。あと、10代のときは自分の内側の歌が多かったけど、20代になるとだんだん外に開いていった感覚があって、いろんな音楽的アプローチとか挑戦もするようになって。

 でも書き方は本当に変わっていないと思います。70〜80年代の歌謡曲が好きで育ってきました。歌詞先(かしせん)と思われているけど、メロディーにいちばん合致する言葉を探してきた。それは自己流なのかなと思いますね。

──15年ものあいだ歌い続けてこれた要因は何だと思いますか?

 出逢い。スタッフのみんなと路上で出逢えなかったら今の私はないですし、やっぱり人に救われて生きてきたんですよね。母がそばにいて私の夢を応援してくれたから「この人の想いに応えたい」と思って頑張り続けることができましたし、その母が亡くなってからはスタッフのみんなが「こんなに温かく自分のことをサポートしてくれるのか」と思うぐらい応援してくれましたし、「この人たちのために恩返しがしたい、だったら自分は歌い続けなきゃいけない」と思えた。

「10年はあっという間でしたが、15年は長く感じます」 撮影/森田晃博

──歌を始めることになったきっかけはお母さん?

 そうですね。母は私を児童養護施設から引き取ってくれたんですけど、私は「施設に帰りたい」とわんわん泣いていたみたいなんです。その後も、知らない人がいるだけで泣く、母から離れたくなくて幼稚園も行けない、それぐらい泣き虫で人見知りな女の子でした。母もそれまで子供を育てたことがなかったので、どうしたらいいのかわからなくて知り合いの音楽教室の先生に相談して、「じゃあ、歌で何とかしましょう」となったんです。それで地元の大会とか発表会に出るようになった。

 あと、歌うと私がすごく笑顔になったので、母は「この子に歌を続けさせよう」と思って、「あなたは歌手になるけんね」と言い続けていたんです。私も歌うと母が喜んでくれるから「将来は歌手になる」と思っていて。なので、歌が私の心も母の心も開かせて結びつかせてくれたんです。

──そのお母さんが亡くなったあとは、スタッフのみんなが支えになってくれた?

 なってくれました。そのスタッフの中にI WiSHのnaoさんがいたんですけど、運命の出逢いだと思いました。お互いの考えていることが手に取るようにわかりますし、音楽的な相性もnaoさん以上に合う人はいないと確信できるぐらい、すべてが合致しているんですよね。母以外に初めてそういう人と出逢えた。

 他のスタッフもそうなんですけど、一緒にいると明るい気持ちにさせてくれる。母が亡くなってからは、私の絶望感を何とかして取り払って、孤独感を埋めようとしてくれていて、とにかくずっと一緒にいてくれたんです。その中でいつの間にか家族になっていた。みんながいなかったら天涯孤独になっていたわけで、この出逢いは奇跡的だなと思います。

川嶋あいが「歌い続けていく理由」

──そして、その家族たちと作り上げたデビュー曲「明日への扉」でブレイクしました。

 すべてが感激であり、感動でした。『あいのり』の主題歌としてテレビから初めて流れてきた瞬間、みんなで泣いてしまったりとか……あの喜びや驚きやワクワク感みたいなものをみんなと一緒に味わえたことは「永遠」だと思いますね。ずっと消え去っていないというか、あの一瞬が永遠になっている。あの瞬間があったからここまで続けることができたんだと思うし、あの記憶がまた新たな目標を生んでくれたり、すべてを突き動かすエネルギーになっているんです。それはこれからも変わらないと思います。

──歌い続けることを諦めそうになったことはないんですか?

 母が亡くなって3年ぐらいは情緒不安定でしたね。永遠である喜びも経験した一方で、ずっと一緒に生きてきた大事な人がいなくなった感覚というのは……なかなかツラくて、苦しくて、ひとりになると「歌っている意味がないじゃん。もう辞めてしまいたい」「人生を諦めたい」と思ったこともありました。

 でもそういった感情を持ちながらも音楽の道を歩み続けて、「やっぱり戦っていかなきゃいけない」という気持ちに少しずつなっていったんですよね。育ててくれた母も見てくれているだろうし、ずっと支えて救ってくれたスタッフのみんなに恩返ししたい気持ちがすごくあったからだと思います。

──デビューして15年経った今、川嶋さんが歌い続けていく理由はどんなところにあると思いますか?

 今すごく思うのは、まだまだ表現し尽くせていないものというか、自分のやりたいこととか形にしたい歌詞とかメロディーとか世界観、そういったものが自分の泉の中にたくさんある。だから「まだやらなきゃ」という気持ちになるんですよね。それを一つひとつ掘り起こして作品として届けていくことで物凄い達成感と幸福感が得られる。15年経った今、その感覚をよりいっそう実感できるようになったんです。支えてくれている人たちの存在ももちろん大きいんですけど、それもまた音楽を続けている、歌い続けている理由になっていると思います。

 楽曲提供も始めていますが、これからは自分で歌うだけではなく、作ったことがない曲や詩にもっとチャレンジしたい。歌を作るときが一番楽しいので、オーダーあれば何でも書きます(笑)。

歌うと笑顔になる…それが歌手を目指すきっかけ 撮影/森田晃博

Inteviewer:平賀哲雄

◎川嶋あいプロフィール
1986年2月21日生まれ。2002年、路上ライブ1000回、CD手売り5000枚、渋谷公会堂ワンマンLIVEという3つの目標を掲げて活動開始。2003年2月にI WiSHのaiとして人気番組の主題歌「明日への扉」でデビュー。同年8月20日に初めてのワンマンLIVEを達成。2006年からは本格的にソロ活動をスタート。代表曲として「My Love」「compass」「大丈夫だよ」「とびら」など。特に「旅立ちの日に・・・」は卒業ソングの定番曲として大人気を誇る1曲。個人のライフワークとしてボランティア活動などにも積極的に参加しており、海外に学校建設を行ったり、東日本大震災の復興支援としてTattonプロジェクトにも参加している。

公式HP http://kawashimaai.com

◎リリース情報
2018年6月27日(水)、10年ぶりのベストアルバム「川嶋あい 15th Anniversary BEST」をリリース。デビューシングル「天使たちのメロディー」から最新シングル「シンクロ」まで、2003年からリリースしてきた全30曲を収録。

◎ライブ情報
2018年8月20日(月)、今年で16回目を迎えるワンマンLIVE「Ai Kawashima 15th anniversary〜BIRTH〜」開催。会場/昭和女子大学人見記念講堂 18:00開場・19:00開演

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