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 ここ数年、私たちの家計を直撃する負担アップの施策がめじろ押し。さまざまな増税、そして医療費などの自己負担アップが実施、検討されているなか、それに追い打ちをかけるように、さまざまなモノやサービスの値上げが続いて……。

 いったい、どうしてこんなことになっているの!?

負担ラッシュが家計を襲う

「高齢化で医療や年金、介護、福祉などのための社会保障費が増加しています。その一方で、少子化が進んで労働者人口が減り、昨年は所得税の税収もダウン。社会保障費などをまかなうため国の借金が膨れ上がっています。この財政赤字をどう解消するかが問題になっているのです」

 そう話すのは、生活経済ジャーナリストのあんびるえつこさん。

 国の赤字を解消するには収入を増やし(=増税)、支出を減らす(=医療費の自己負担アップなど)取り組みが必要になる。

国としても、まずは取りやすいところからお金を取ろうということで、お金持ちや高齢者、生活に直結しない部分で増税をしようとしています。

 お金持ちの節税策を封じるタワーマンション課税の見直し、所得が1000万円を超える年金受給者を対象とした増税、たばこ税増税、出国税の創設、エコカー減税の縮小などがそれにあたります。

 所得税は各種控除の見直しで、高所得の会社員は増税、自営業者は減税になる予定です。お金のあるところから税金を取って、子どもを生み育てやすい環境整備にあてたいという考えです」

 とはいえ、庶民も無傷ではいられない。

「みんなのフトコロを直撃するものとしては、国民健康保険料の引き上げのほか、医療や介護での自己負担アップが続きます。2040年には高齢者が全人口の30%を占めるようになると予測されていますから、それに向けて、社会保障の負担感はますます重くなることに」

 いま、最も注視したいのが消費税10%への引き上げの行方だ。これまで2回にわたって延期されたが、'19年10月から今度こそ増税されるかもしれない。

「安倍政権の支持率が低迷すると、人気取りのためにまた延期される可能性はあります。予定どおり増税されるとフトコロはつらいのですが、先延ばししすぎると、国の借金を子どもたちにまわすことになります。どちらに転んでも大変な状況です」

 暮らしへの負担が増えたのは医療や介護だけではない。ここ数年、毎年のように食料品や生活用品の値上げがあり、家計を守る立場としては頭が痛いところ。大手製紙メーカーが4月にボックスティッシュやトイレットペーパーを1割値上げしたほか、7月にはパンの値上げが待っている。

「中東情勢が不安定になっていて原油価格が上がっていること、人手不足やネット通販の爆発的増加などで物流コストが上がっていることなどが原因ですね。

 コスト高が原因の値上げなので、利益増につながらず、社員の賃金アップというわけにはいかないのがつらいところ。賃金が上がらないのに物価が上がる、よくないインフレです

 アベノミクスのもと好景気とされているのに、物価高に泣かされ、うるおっているのは大企業ばかりで、給料は上がらずじまい。どうしてこうなったのか。

「人口減少で今後は内需が見込めないので、企業がもうけをため込み、なかなか賃金に還元しようとしない。企業が賃金を上げたくなるような施策を期待したいところです。

 そして何より、少子化を改善するためには、安心して子どもを生み育てたくなるような、社会保障制度の抜本的な改革が必要でしょう

銀行預金の利息は雀の涙

 物価高のほかに、このところ気になるのが、銀行の手数料がじわじわと上がっていること。オンラインサービスなどで振込手数料の無料回数が減らされたり、両替手数料が徴収されるようになったり。口座管理手数料の徴収を検討し始めたメガバンクもある。

「いま、金融業界は大変な状態です。銀行は顧客から預かったお金を企業などに貸して、その金利の差で儲けてきました。しかし、超低金利、さらにはマイナス金利政策の導入で利益が見込めない状況に。

 また、世界的に“フィンテック”というお金をめぐる技術革新が進んでいて、それに対応するためにまたお金がかかっています。銀行としては、手数料収入が頼みの綱とばかりに、各種手数料の値上げという事態につながっているわけです

 銀行に預けても、もらえる利息は雀の涙。ちょっと油断していると、利息をあっさり超えるような手数料を取られてしまう。これに対抗するには、どうしたらいいのだろうか。

「手数料をこまめにチェックして、なるべく無料・割安ですむ範囲で利用すること。例えば手数料の高い窓口振込はNG。他行への振り込みはATMやオンラインを心がけて。さらに『LINE Pay』といったモバイル送金・決済サービスなどを上手に利用し、現金を介さないで決済するようにすれば、手数料の節約になります。

 いま日本では、国をあげて現金を扱わない方向に進んでいて、電子マネーやモバイル決済などはポイントが優遇されるなどお得感もあります。こうした新サービスに慣れるよう規約をよく読んだうえで、どんどんチャレンジしていくことをおすすめします

 電子マネーやネット決済はお金の流れを把握しづらく無駄遣いをしないか心配。

「いまは、“マネーフォワード”などスマホで家計&資産管理ができるアプリが増えています。こうしたものを活用して、お金のデータを管理することに慣れていくといいですね」

 なんだか大変そう……。

「時代の変化に縮こまらず積極的な対応が求められる。そんな時代がやってきたということです」

 庶民にとって厳しい時代を生き抜くために、まずはいまこそ、消費税のキホンについて理解しておきたいところ。

「いまの日本は“見せかけの好景気”という経済状況。加えて、2020年の東京五輪を目指し整備されてきたインフラが'19年にはあらかた整い、景気が一段落します。そこへちょうど消費税10%への引き上げが重なるわけです。最悪なタイミングで増税しようとしています」(あんびるさん)

 消費税10%への引き上げを前提に、さまざまな施策がすでに動き出している。増税されると暮らしや景気はどう変わる? 軽減税率って? そもそも社会保障に使うんじゃなかったの!?

 ここからは、知らなかったではすまされない消費税にまつわる重要ポイントをQ&A形式で解説する。

【Q&A】増税でトクする・ソンするのは?

 税金が上がってトクするなんて、ちょっと想像がつかないけれど……、

「輸出企業を中心とした大企業にとってはトクです」

 そう話すのは静岡大学の元教授で、税理士の湖東京至さん。いったい、どういうからくりなのか?

「輸出品に消費税をかけることはできないとされています。そのため、部品や原材料代など仕入れにかかった金額の消費税分を、国からキャッシュバックされる仕組みがあるのです。これを“輸出戻し税”と言い、消費税が上がるほど還付金の額も増えていく。

 実際には下請けや仕入れ先が消費税を支払っているとしても、還付されるのは大企業。なかには、還付金はしっかりともらっておきながら、5年間に1度も法人税を納めていなかった企業もあるほどです」(湖東さん、以下同)

 一方、消費税が上がってソンをするのは、「庶民と中小企業」とキッパリ。

「日本の企業の99・7%を占める中小企業のうち、およそ7割が赤字といわれています。そこへ消費税の打撃は大きく、8%への引き上げ後、消費税の滞納が64%にまで増えました」

 増税後、世間では財布のヒモがますます固くなって売り上げが落ちたり、納入品の単価を増税分だけ引き下げるよう取引先から強要されたりして、中小企業がこうむる打撃は大きい。

「赤字でも消費税は納めなければならないため、倒産する中小企業も出てくることでしょう」

【Q&A】増税されると景気は悪くなる?

増税が発表されると消費行動に影響を及ぼす“アナウンス効果”が大きく働き、負担が増すから節約しなくちゃというようなイメージを呼び起こして、買い控えが起こります。消費税が8%に上がり、個人消費は大きく減少したと平成26年度の年次経済財政報告に書かれているとおり、すでに実証ずみです」(あんびるさん、以下同)

 政府が今月5日に発表した経済財政運営の指針「骨太の方針」の骨子案には、住宅や車の減税拡充、これまで規制されてきた消費税還元セールの解禁といった景気対策が盛り込まれている。はたして効果はあるのだろうか?

「消費抑制の影響をなだらかにするというだけなので、たいした実効性はないでしょう。還元セールについては、消費税と謳わないまでも、すでに多くのお店でやっていることですから意味がない。

 車については、おそらく'19年3月の決算期に合わせてセールを仕掛けてくるでしょう。住宅に関しては増税にともなって給付金が出ますし、贈与税の非課税枠が3000万円まで拡大されるので、例えば、親から遺産をたくさん受け取るような場合は待ったほうがいいと思います。自分の状況と照らし合わせて、よく検討を

【Q&A】消費税10%で家計への影響は?

「消費税が10%に引き上げられると、一般的な家庭でだいたい月3000~4000円の負担増になると言われています」

 と、あんびるさん。低所得や年金世帯などカツカツの暮らしをしている人にとって、この負担は重い……。

とりわけ子どもの教育費に負担がかかる40~50代への打撃は大きい。まさに週刊女性の読者世代ですね。学費自体は消費税の対象外とはいえ、塾や予備校代、参考書を買うのにいちいち消費税がかかります。

 消費税の使い道に教育無償化が掲げられていますが、大学にたどり着くまでの負担も大きいのに、そこは見落とされています」(あんびるさん)

【Q&A】軽減税率ができたら暮らしはラクになる?

 消費税の軽減税率とは、食料品などの生活必需品に対し、ほかより税率を低く抑えて設定する制度のこと。

「'19年10月からの消費税10%への引き上げに際し、外食を除く食料品、週2回以上発行されている定期購読中の新聞については、消費税率が8%に据え置かれます」(湖東さん、以下同)

 消費税が0になるわけじゃないんだ……。全然ないよりマシだろうけれど、軽減税率でどれだけ暮らしがラクになるの?

「期待できません。品物の価格を決めるのはメーカーやお店、つまり企業です。10%への引き上げ前から、すでにさまざまな食料品が値上げされているのは前出のとおり。自動販売機を思い浮かべてみてください。

 そこで売られているペットボトル飲料は消費税8%だとしても、自販機にかかる電気代や輸送にかかるガソリン代は、10%の消費税がかかります。そのコスト増が価格に反映されない保証はありません」

 すでに軽減税率を導入している国ではどうか?

「例えばドイツ。ハンバーガーを店内で食べるときは通常の税率19%がかかりますが、持ち帰ると7%ですむ。ところが、客が支払う税込みの値段は同じです。税金の内訳が違うだけで、必ずしも安く買えるようになるわけではない。日本でも同じことが起きるのではないでしょうか」

【Q&A】消費税は社会保障に使うんじゃなかったの?

 少子高齢化が進み、このままでは医療や介護、年金制度が立ちゆかなくなるから、消費税を社会保障の財源に充てる─。今回の増税だけでなく、実は消費税が導入された1989年から、政府が何度となく繰り返してきた説明。

 湖東さんによると、これは「まったくのでたらめ」だという。

「消費税は何にでも使える一般財源として集められ、何にどう使われているのか、明らかにしていません。しかし一方で、企業にかかる法人税は消費税導入前の42%から引き下げが続き、'18年には23・2%に。また19兆円あった法人税収は11兆円に落ちています。

 法人税の減税分およそ280兆円は、消費税導入後の税収349兆円の8割にあたります。その穴埋めに消費税が充てられたといっても過言ではない。

 また大企業にとっては、前述した還付金のうまみがあります。これらの狙いで導入したと私はにらんでいます」(湖東さん、以下同)

 そもそも社会保障の財源に消費税はふさわしくないと、湖東さんは指摘する。

「消費税は物価の一部に反映されるので、ものを買うたびに、社会保険料を払っていることになる。高い税率で知られるヨーロッパでは、消費税(または日本の消費税に近い付加価値税)を福祉財源として集めている国はありません」

【Q&A】消費税を取りやめた国がある!?

「本当です。マレーシアでは、消費税廃止を選挙公約に掲げて当選した新首相によって、6月1日から消費税に相当する物品・サービス税が実質的に廃止されました」(湖東さん、以下同)

 日本とは反対に、税率を引き下げた国もある。

「カナダでは'06年と'08年に2度、消費税が引き下げられています。またヨーロッパでは、軽減税率の廃止など消費税を見直す議論が活発です。消費税を上げなくても、大型公共事業や軍事予算を削り、政党助成金を廃止するなどしたら財源は作れます」