血液型にまつわるトリビア、あなたはどれだけ知っていますか? キホンの知識から、血液型ごとの病気リスクをまとめた論文の内容まで、気になる情報を一挙に紹介!
そもそも血液型って?
A型、B型、O型、AB型。誰もが知っている血液型のタイプは4種類ある。
「これはABO式血液型といい、赤血球の分類法のひとつなんです」
とは、東京医科歯科大学の藤田紘一郎名誉教授。
赤血球の表面には、たくさんの血液型物質がついていて、これにより血液型が決まるという。
「A型の人はA型物質を、B型の人はB型物質を持っています。AB型の人はA型物質とB型物質の両方を持っていますが、O型の人はA型物質もB型物質も持っていません」
一方、血漿には血液型物質に対する“抗体”が溶け込んでいる。抗体は、外部から体内に侵入したウイルスなどの病原体と結合して、排除する役割を持つ。
「A型の血漿は抗B抗体、B型は抗A抗体を持ちます。AB型は抗A抗体も抗B抗体も持ちません。O型は抗A抗体と抗B抗体の両方を持っています」
少し難しいけど、この前提がわかると、この特集をより理解できる!
誰が発見したの?
血液型が発見されたのは、ほんの100年ちょっと前のこと。
「1901年、オーストリアのカール・ランドシュタイナーという学者が、自分や同僚など22人の血液を、血漿と血球(赤血球や白血球などの固体成分)に分け、いろんなパターンで混ぜてみたんです。すると、固まる場合と固まらない場合があって、その組み合わせに注目しました」
A型の赤血球にB型の血漿を混ぜると、反応して固まってしまう(抗原抗体反応)。B型の血漿に抗A物質があるためだ。一方、A型の赤血球に、A型の血漿を混ぜても固まることはない。A型の血漿が持つのは抗B物質で、つまり抗A物質は持っていないからだ。
「この凝縮反応の違いから、血液型には3種類(A型、B型、O型)あると考えました。この実験にAB型の人はいなかったため、AB型の発見は数年遅れました」
なぜC型ではなくO型なの?
ランドシュタイナーの実験では、O型の赤血球は、A型の血漿と混ぜてもB型の血漿と混ぜても固まることはなく、反応ゼロ。そのため、最初はC型と命名されたものの、“ゼロ=O”ということでO型に改名されたという。
O型の血はすべての人に輸出できる!?
「前述のとおり、O型の赤血球はA型物質もB型物質も持っていないため、ほかの血液型に輸血をしても、何も起こりません。そのため、昔は“O型の血液はすべての人に輸血できる”と考えられ、実際にそうされていました」
一方、O型の血漿はA型の赤血球と反応する抗A抗体、B型の赤血球と反応する抗B抗体、それぞれを持っている。
「確かに反応をする可能性はありますが、実際には血液中で薄まるので、特にトラブルなく輸血できます。とはいえ、現在は同じ血液型を輸血するのが基本です」
最近の子は自分の血液型を知らない!?
かつては生後すぐに血液型の検査をしていたが、最近は行っていないよう。
長浜バイオ大学の永田宏教授によると、
「生後6か月くらいにならないと血液型ははっきりしないんです。“生まれたときにはO型って言われたけど、実はA型だった”なんていう人は、昔は珍しくなかったですからね」
最近の子どもはいつ、自分の血液型を知るの?
「献血にでも行かない限り、知らないでしょうね。大ケガをして輸血が必要な場合は血液型を自己申告しなくても、病院側が100%調べますから。血液型性格診断の話をしない限り、困らないでしょう(笑)」
血液型が変わる!?
出生直後に行った血液型判定の誤り以外でも、血液型が変わることはある?
永田教授によると、
「白血病で骨髄移植を受けた人の中には、血液型が変わる人もいます」
白血球が異常増殖する白血病。白血球は骨髄で作られるため、骨髄移植が必要となる。
「白血球にはHLA(ヒト白血球型抗原)と呼ばれる型があるんですが、10万人に1人くらいしか適合しません。運よく見つかっても、赤血球の血液型(ABO式)が異なる場合は、血液の血漿成分をすべて入れ替えたり、免疫抑制剤などで拒絶反応が起こらないようにしたりして移植します」
白血球だけでなく赤血球も骨髄で作られているため、A型の患者がB型の骨髄移植を受けた場合、その後の血液型はB型に変わるという。
AB型のRhマイナスは2000人に1人
実は、ABO式以外にもたくさんの血液型が存在している。
「100種類を超えるという専門家もいます。ABO式血液型の次に有名なのは、Rh式血液型でしょう」
輸血や臓器移植など、医療の現場で問題になるのはこの2つだという。
「Rh式血液型には、プラスとマイナスがあります。マイナスは人口の0・5%、日本人の200人に1人と言われています。中でも珍しいのは、AB型のRhマイナス。およそ2000人に1人の割合です」
日本人は4:3:2:1
「日本人の血液型の割合は、多い順にA型38%、O型31%、B型22%、AB型9%です」(藤田名誉教授)
ほぼ4:3:2:1という分布になっている。
地球規模だと北A南O・西A東B
血液型の分布、世界に目を向けてみると?
「“北A南O”“西A東B”という傾向があります。北欧にはA型が多く、南欧に向かうにつれO型が増えていき、アフリカになると人口の6割がO型です。南アメリカの原住民には“全員O型”という種族もあるほどです」(永田教授)
東西で見てみると、
「ヨーロッパにはA型が多く、東に向かうにつれてB型が増えます。東南アジアの国になると3〜4割がB型です」
血液型性格診断が好きなのは日本だけ
A型は几帳面、B型はマイペース、O型はおおらか、AB型は芸術家肌……。日本人は血液型別の性格診断が大好きだが、
「日本人の4:3:2:1という血液型分布が影響していると思います。4つの血液型タイプが、ほどよく距離を保って共存しているため、四者四様の比較が成り立ちます。世界を見渡しても、こんなうまい具合に血液型が分布している国はそうありません」(藤田名誉教授)
ゆえに外国では血液型別性格診断に興味が持たれていないという。さらに、永田教授によると、外国人は自分の血液型を知らないことも多いという。
「軍隊にでも入らない限り、あえて血液型を調べたりしません。輸血が必要なケガをした場合に初めて知ることもあるようです」
血液型性格診断の歴史
「最初に血液型と性格を関連づける研究を行ったのは、東京女子高等師範学校(現・お茶の水女子大学)の古川竹二教授です。1927年、『心理学研究』という雑誌に、それぞれの血液型の気質と精神的特徴を発表しました」(藤田名誉教授)
その内容は、A型は内気で取り越し苦労、B型は気楽で外面的に積極性がある、O型は意志が強い、AB型は矛盾があって判断しにくい……といったもの。
「ただ、実際に血液型と性格の関係が広く関心を集めるようになったのは、1970年に能見正比古氏の『血液型人間学』がベストセラーになってからです」
ここからは、血液型ごとに病気リスクをまとめた論文結果をご紹介。研究者たちによって、れっきとした医学雑誌などに掲載されたものではあるけれど、なかには信じがたいものも……?
心臓病になりにくいのはO型!?
◎約9万人を約20年間追跡。
「心筋梗塞や狭心症の発症リスクはO型がいちばん低かった。O型に比べ、ほかの血液型の発症リスクはAB型が20%増、B型が11%増、A型が8%増だった」
(2012年、アメリカ・ハーバード大学)
◎およそ5万人を約7年間かけて追跡。
「O型はほかの血液型に比べ、心臓病で死ぬリスクが15%低い。また総死亡率(早死にするリスク)が9%低い」
(2015年、アメリカ国立衛生健康研究所)
O型は糖尿病になりにくい!?
◎約6万人を約18年間にわたり追跡調査。
「糖尿病の発症率はO型がいちばん低い。O型に比べ、B型は21%増、AB型は17%増、A型は10%増だった」
(2014年、フランス国立保健医学研究所)
AB型は軽度認知症のリスク!?
◎45歳以上を対象に、3万人以上の調査を行い、3年半で4回の認知機能検査を実施。
「アメリカ全人口のうちAB型は4%であるのに対し、記憶障害を起こしたグループの6%がAB型だった。軽度認知症を発症するリスクはAB型が特に高く、ほかの血液型の平均に比べ、82%増だった。A型・B型・O型の間では目立った差はなかった」
(2014年、アメリカ・バーモント大学)
B型は長生き!?
◎東京都在住の100歳以上のお年寄り269人を調査。
「その内訳は、A型34.2%、O型28.3%、B型29.4%、AB型8.2%だった」。
日本人のB型の割合は約22%であるため、(東京の)B型は長生きするといえそう?
(2004年・日本で行われた研究)
O型は蚊に刺されやすい!?
◎64人の被験者の肌に、ヒトスジシマ蚊(別名ヤブ蚊)がたかる様子を観察した結果「O型はA型と比べて、明らかに蚊がたかりやすかった」
(2004年、日本の研究グループ)
◎人間の血液を吸った野生の蚊95匹を調べ、どの血液型が最も多くの蚊に吸われていたかを分析。
「住民の血液型の割合と比べ、O型が圧倒的に多かった」
(年代不明、イランの研究グループ)
O型女性は妊娠しにくい!?
◎不妊治療を受けている30代女性560人を調査。
「O型の女性の卵子は質がよくなく、A型女性の卵子量の2分の1しかなかった。O型の女性は若いうちに卵子を消費してしまうため、妊娠しにくい傾向がある」
(2011年、アメリカ・イェール大学)
O型男性は勃起不全になりにくい!?
◎60代の男性350人を対象とし、セックス中の勃起を維持できるかどうかを調査。
「A型男性の42%に勃起不全の症状が見られたが、O型男性は16%だった。O型男性は、ほかの血液型より3〜4倍勃起不全になるリスクが低い」
(2017年、トルコ・オルドゥ大学)
O型はマラソンランナー向き!?
◎普段からランニングを習慣的に行っている52人(白人、平均年齢49歳、肥満度を示すBMI平均値23.4)のハーフマラソン(21.1km)のタイムを計測し、調査。
「平均タイムがいちばん速かったのはO型だった。ハーフマラソンの成績は、41.6%が年齢次第、10.5%がトレーニング次第、そして10.1%が血液型に左右される」
(2017年、イタリア・ヴェローナ大学)
〈PROFILE〉
永田宏 教授◎理学修士、医学博士 長浜バイオ大学教授。医療情報システムの研究に従事したのち、鈴鹿医療科学大学教授を経て現職
藤田紘一郎 教授◎医学博士 東京医科歯科大学医学部名誉教授。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。メディア出演、著書も多数