プロレスラーの長州力が、現在放送中のNHK大河ドラマ『西郷どん』で俳優デビューする。昨年は新日本プロレスの真壁刀義が『おんな城主 直虎』で大河デビューし、注目を浴びた。
「過去にもレスラーが俳優デビューした例は、いくつかあります。彼らはいつも観客を意識した“見せる”試合をしているせいか、演技も意外と上手ですよ」(スポーツ紙記者)
海外に目を向けてみると、本職の俳優を凌ぐほどの人気スターとなったレスラーもいる。
「もっとも有名なのは“ザ・ロック”ことドウェイン・ジョンソンだ。アメリカ最大のプロレス団体WWEのスーパースターだった彼は、'01年に『スタートレック・ヴォイジャー』、『ハムナプトラ 黄金のピラミッド』に立て続けにゲスト出演したあと、翌年公開された『スコーピオン・キング』で主演を務めています」(映画雑誌ライター)
その後は順調に映画出演を重ね、'12年に公開された『センター・オブ・ジ・アース2 神秘の島』は3億ドルの興行収入をあげたという。
「米経済誌『フォーブス』発表の“2013年にもっとも興行収益を稼いだ俳優”部門では1位になっています。今やハリウッドの人気アクションスターの仲間入りをしました」(前出・映画誌ライター)
ほかにも、デビッド・バウティスタやジョン・シナなど人気レスラーがハリウッドで活躍している。
人並み外れた筋肉隆々の肉体を持つ、リアル“格闘家”のプロレスラーは、アクション映画にはうってつけだからだろう。
日本では力道山が映画スターに
日本では過去に、この人も映画スターとして活躍している。
今から60年以上も前の話になるが、日本のプロレス界の礎を築き、プロレスブームを作り上げたレスラーといえば、力道山。
当時、「総理大臣の名前は知らなくても、力道山の名前を知らない者はいない」とされ、
「国民的英雄とまでいわれていました。早い時期から映画に出演するようになり、主演作は30本近くに上ります。ただほとんどが、自分自身の役で出ているものですね」(前出・スポーツ紙記者)
つまり、主人公は力道山。力道山が力道山を演じるわけで、映画のタイトルは『力道山逆襲す』、『怒れ!力道山』や『力道山、鉄腕の勝利』など、正義のヒーロー・力道山の活躍を描いている。
「その後、ジャイアント馬場やアントニオ猪木も映画出演していますが、それも本人役でしたね」(前出・スポーツ紙記者)
日本のプロレスラーで力道山以外で映画主演を果たしたのは、武藤敬司。
'87年に公開された『光る女』はジャズピアニストの穐吉敏子の娘、秋吉満ちる(Monday満ちる)が女優デビューするということで話題になったが、主演は武藤だった。彼はその後も数多くの映画やドラマに出演している。
最近では真壁と同じ新日本プロレス所属の棚橋弘至が、昨年、『牙狼〈GARO〉-阿修羅‐』(テレビ東京系)に出演し、劇中で真壁と激闘を繰り広げている。棚橋はその後、時代劇『石川五右衛門』(テレビ東京系)にも浪人役で出演している。
さて、長州が演じるのは『蛤御門の変』を起こした、長州藩士来島又兵衛の役。重要な役だけに台詞も多いという。しかし、一方で心配する声もーー。
「今では、それが面白がられて、バラエティー番組からオファーも多いのですが、滑舌の悪さでは有名ですからね。ただ本人はやる気になっていて、一生懸命台詞を覚えているそうです」(テレビ誌ライター)
放送は22日。“キレッキレ”な演技が見られるか。
<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>
◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。