婚活ライターをしながら、仲人としてもお見合い現場に携わる筆者が、目の当たりにした男女の婚活事情を、様々なテーマ別に考えてゆきます。今回は『婚活ファッションの掟』です。
真っ赤なスーツに真っ赤なハンチング
お見合いの服装は、男性の場合はスーツ、女性は清楚系のワンピース、上下が分かれる場合にはパンツではなくスカートを履くのが主流です。男性も女性もカジュアルな服装は、NG。
ホテルのティーラウンジでお会いすることが多いですし、その日のお見合いが一生の伴侶となる人との出会いになるかもしれない。だとしたら、服装も、“礼を持って礼を尽くす”という心構えで臨むことが正しい姿勢だからです。
少し前の話になりますが、会員の中森亮子さん(32歳、仮名)とお相手男性をホテルのティーラウンジ入口で待っていたら、真っ赤なスーツに真っ赤なハンチングを被った男性が、こちらに向かって歩いて来ました。
「やだ、ウソ、もしかしてあの人?」
ドン引きしている亮子さんの元に、全身、真っ赤なスタイルの佐野さん(38歳、仮名)がやってきました。私も若干、笑顔が引きつりつつ、二人をお引き合わせしました。
「佐野様ですね。仲人の鎌田です。こちらが中森です。本日はよろしくお願いします」
こうしてティーラウンジに2人を見送ったのですが、ウエイターに案内されて席に着くまで、他の席の人たちが彼をチラ見していました。そのくらい奇抜で目立つ格好だったのです。
お見合いを終えて、亮子さんから連絡が来ました。
「赤は自分のラッキーカラーなんですって。着ていた赤いスーツもハンチングも、オーダーしたものなんだそうです」
その男性は、ご自身で会社を経営している自営業の方。「ファッションも個性と自己主張を大事にしている」と、お見合いの間中、ご自身のファッション観をとうとうと語っていたそうです。
その話を聞きながら、亮子さんは、“何かに似ている…、何かに似ている…、あっ!?”と、閃(ひらめ)いてしまったそうです。
「だるま!」
亮子さんは、私に言いました。
「私、実家が高崎で、少林寺という達磨(だるま)寺があるんですよ。もうそれに気づいちゃったら、笑いのツボに入っちゃって、だるまがしゃべっていると思うと、おかしくて、おかしくて、笑いをこらえるのに必死でした」
ご自身で事業をなさっている方の中には、人と初めて会った時、自分をひと目で覚えてもらえるように、奇抜な格好をする方がいますよね。
全国展開をするビジネスホテルの女社長が、帽子にド派手なファッションをしていたり、高級品売買をするブランド王の社長がリーゼントをしていたり、テレビでもおなじみの料理人社長が、ガングロチャラ男を売りにしていたり。
インパクトを与えることで、自分の事業や商品や料理を覚えてもらうというのは、辣腕(らつわん)経営者の戦術なのかもしれません。
ただ、“お見合い”という出会いの席には、奇抜で個性的なファッションは不向き。亮子さんも、この男性とのお見合いは「お断り」でした。その理由は、
「私には、佐野さんと並んで歩く勇気はありません」
花柄シャツにガウチョパンツ、スケルトン靴
デートの服装も然りです。奇抜な個性はいりません。
会員の浅野真知子さん(32歳、仮名)が、お見合いした杉原秀一さん(38歳、仮名)と、交際に入った時のこと。初デートは土曜日の午後、銀座三越ライオンの前での待ち合わせでした。
「私が待っていると、和光前から横断歩道を渡って、際立って変な格好をした人が、こっちに向かって歩いて来たんです。“まさか!”と思いましが、杉原さんでした」
どんな格好だったかと言うと、黄色と緑と黒が混じった花柄のシャツに、紫色のロング丈ガウチョパンツ。そこに白いジャケットを羽織り、紐がダランと長い黒のウエストポーチをつけていました。靴はなんとビニールのスケルトンで、白と黒のスロライプの靴下がのぞいていたのです。
「色が白くて痩せている人なので、ビジュアル系ロックの人に見えなくもない。でも、別にバンドをやっているわけではない。あの格好を見たら、誰でも吹き出しますよ」
さかのぼってみると、お見合いの時のスーツも少し変わっていたと言います。
「グレーだったんですけど、やたら光沢があってシルバーに近かった。ズボンがレギンスみたいに細くて。でも、今細身のスーツって流行っているし、彼の身体が細いので、それはまあ似合っていました」
しかし、私服は奇抜すぎ。
待ち合わせ場所から杉原さんが予約をしてくれていた、多国籍料理のレストランに歩いていく道すがら、すれ違う人が彼を見るので、“この男性の彼女”と思われるのが、すごく恥ずかしかったと言います。
「食事をしながらの会話は、もっぱらファッションのことでした。“日本のファッションは、遅れている。個性がない”って。でも、私からしたら、“全く統一感が感じられないあなたのファッションは、これでいいの?”と、ツッコミを入れたくなりました。ご自身のファションに自信満々だったので、言える雰囲気ではなかったですけど」
さらに驚いたのが、彼の趣味でした。
「身上書は、“スポーツ観戦”“旅行”“ショッピング”となっていたのですが、1番の趣味は、“自撮り”。家には自撮り部屋があって、インスタ映えするように、壁紙や家具や小物にも凝っていると言うんです」
実は、彼はバツイチ。5年間の結婚生活の後、2年前に離婚をしています。真知子さんは、ため息交じりに言いました。
「私、婚活を始めて2年なんです。杉原さんは、一回は結婚できたわけじゃないですか。杉原さんにできた結婚が、なんで私にはできないんだろうって、落ち込みました」
婚活がうまくいかないと、“どうして人にできた結婚が、私にはできないのか”と思ってしまいがちです。しかし、“奇抜なファション、自撮り好き”を受け入れることは、真知子さんに取って難しいのですから、また結婚が遠のいたのもいたしかたありません。
婚活ファッションに、奇抜な個性はいらない
石田純一さんが、裸足にローファーを履く。それは石田純一さんだから似合うスタイル。勝俣州和さんは、いつでも短パン。それは勝俣さんだから許される。ネジネジマフラーも中尾彬さんがやると、それがトレードマークになります。
ですが、婚活中の方たちが、ファッションに個性を求めると失敗をします。婚活ファッションは、シンプル、清潔感、誰がみても合格点を出す無難なスタイルが王道です。これは、女性のファッションにも言えることですね。
さらに女性の婚活ファッションポイントをつけ加えるならば、明るい色と柔らかな生地。黒やグレーの服は、顔映りが悪くなり、年よりも老けて見えがちになるので、注意してくださいね。
鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイト『最短結婚ナビ』http://www.saitankekkon.jp/