小栗旬

 NHK大河ドラマ『西郷どん』がいよいよ佳境に入った。動乱渦巻く幕末、お馴染みの志士たちが続々と登場する。その中で、なくてはならない人物が坂本龍馬だ。今回、龍馬を演じるのは小栗旬。大河ファンの中には、

「あんな甘っちょろい雰囲気の俳優が坂本龍馬!? ちょっと違うだろう」

 という人がいるかもしれない。だが、画面に現れた小栗を見た瞬間、そんな思いは吹き飛んだと思う。

服の上からでもわかります。明らかに身体がごつくなって、ワイルドなイメージを醸し出しているんです。これまで大河で龍馬を演じた江口洋介、玉木宏、福山雅治らとは、またちょっと違う、人物像に仕上がっています」(テレビ局関係者)

 小栗は、役作りのために積極的に身体を鍛えているという。

「週5日1時間のトレーニングは欠かさないようです。5月から大河の撮影に入りましたが、西郷隆盛を演じる鈴木亮平さんとは筋トレ仲間で、自宅にこしらえたトレーニングマシンエリアで一緒に鍛えることもあるそうです」(芸能プロ関係者)

 また、下半身の動きを身につけたいということで、キックボクシングのジムにも通い始めたという。

 小栗に限らず、最近は筋トレを導入して、身体づくりをする若手俳優が増えている。

 よく名前が挙がる、岡田准一は、ドラマのために体づくりをし、格闘技もマスターした。今ではインストラクターの資格もあるという。鈴木亮平も西郷隆盛のイメージに合うように調整している。

 また、日本の若手俳優たちが身体を鍛え始めた背景には、ある理由が……。映画ライターはこう語る。

「海外の人気スターは、たいがいアクションをこなします。だからみんな、鍛えています。また向こうの映画では、ラブシーンがなくても、必ずと言っていいほど、服を脱ぐシーンが出てきます。ただ着替えをするだけだったりね。だから、見られても恥ずかしくないように身体を作っているんですね。最近、日本のドラマや映画でもアクションや裸になるシーンが増えたと思うんです」

 西島秀俊が大河ドラマ『八重の桜』で、その鍛え上げた肉体を披露したときは女性ファンが激増したという。『JIN-仁-』(TBS系)主演・大沢たかおの、ぜい肉ひとつない身体に驚嘆したファンも多い。鈴木も今回の大河では裸のシーンが多い。

 しかし、彼らは見せるためだけに屈強なボディを作っているわけではない。

小栗は何を思いトレーニングをするのか

 小栗がトレーニングを始めたきっかけについて、雑誌のインタビューでこう語っている。

《このままじゃまずいと思ったのは2011年に『髑髏城の七人』という作品に出演したとき。刀を持っての立ち回りは無酸素運動なのでスタミナがないとできない。しかもあの作品では、立ち回りの途中の呼吸をするタイミングに長い台詞があった。求められたハードルの高さは、想像以上。自分のスタミナのなさを痛感しました》

 役者は、屈強な強者だけを演じるとは限らない。ときには余命いくばくもない病人や、長年にわたって牢に閉じ込められた罪人、反対に大食漢の肥満中年もあるかもしれない。

 要求される役柄に合わせて役作りをしても、体力まで落ちてしまってはもともこもない。過酷な撮影に耐えるために、強い身体を作る必要がある。

 小栗が求めている身体とは、

《理想の肉体? うーん……それはよくわからないですね。求める身体は、そのとき演じる役によってかわりますから。しいていうなら、どんな役にも応えられる、役者として戦うための肉体が理想でしょうか》(同インタビューで)

 ガタイが見違えるほどよくなった小栗だが、先日『花のち晴れ』(TBS系)での特別出演に、

「ちゃんと花沢類だった」

 と、その再現率を称賛する声が多い。それは、

ピンク色のパーカーを着て登場しました。ピンクはやさしい雰囲気が出ますし、大きめのパーカーでフードをかぶっていたから顔も身体も全体のシルエットがわかりにくい。明らかに10年前より体格はよくなっているのに、あのパーカーひとつでワイルドな“ゴリラ感”は緩和されました。役作りがうまくなりましたね」(前出・テレビ局関係者)

 肉体改造も役作りもうまく進んでいるようだ。今年36歳を迎える小栗。新たな魅力が開花する。

<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>
◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。