名門企業を次々と買収していくキレ者“ハゲタカ”を綾野剛が熱演。大胆な買収劇を仕掛ける主人公を演じるための役作りへのこだわり、撮影現場についてプロデューサーが大公開!
平成最後の夏、時代に思いを馳せるドラマを
累計240万部突破の真山仁の同名小説をドラマ化。オリジナルエピソードを加え3部構成で描く。
外資系投資ファンドを率い、名門企業を次々と買収する“平成のダークヒーロー”鷲津役は、同局連ドラ初主演の綾野剛。鷲津の部下を杉本哲太、光石研、池内博之、対立する銀行のエリートバンカーを渡部篤郎、取締役を小林薫、のちに鷲津の最大の敵へと成長していくホテルウーマンを沢尻エリカがそれぞれ演じる。
原作愛読者の中川慎子プロデューサーは、制作の経緯についてこう語る。
「平成元年にファンドマネージャーになり、バブル、リーマンショックなどにも直面し、戦ってきたのが原作の鷲津です。フィクションの存在ではあるけれど、私にとって鷲津は“平成の寵児”。彼の生きざまを描いたドラマなら平成最後の夏、この時代に思いを馳せることができるのではないかと考えました」
鷲津は外資系投資ファンドを率い、不良債権を抱えた銀行や負債のある名門企業を次々と買収、日本経済界に革命を起こしていく。
「綾野さんにオファーしたのは冷徹な企業買収者の一面だけでなく、ユーモアがあったり、女性にモテたりする人間味の部分まで想起させてくれる方だと考えたからです」(中川P、以下同)
オファーを快諾した綾野は、鷲津のビジュアルを考え、経済知識の習得や取材をして役作り。撮影開始時には、しっかりイメージが固まっていたという。地声より低めの声のトーンで鷲津がしゃべるのも綾野から提案されたそう。
「撮影現場では綾野さんが1日24時間、本作に情熱を傾け、取り組んでくださっているのを体感します。その熱量が俳優陣、スタッフにも伝播して新たなチャレンジに飛び込もうと奮い立たせているという感じで、素晴らしい座長です」
難解な経済用語も多いが綾野はじめセリフを完璧に自分のものにして芝居をする出演者ばかりで、台本の持ち込みはほぼないという。『相棒』シリーズを手がけた和泉聖治監督のもと撮影は快調に進んでいる。
「綾野さんは、撮影が休みの日にも“撮影したい”と。休みたいと言われることはあっても、撮影したいというのは初めてです(笑)」
役の影響でうどん好き? 差し入れは野菜たっぷり
綾野の本作にかける思いを共演者も応援し、そのひとりが渡部だ。
「自分が演じることで、鷲津を演じる(綾野の)助けになるなら、と話してらっしゃいました。演じることで誰かの役に立てたならいいなと初めて思った、と。あまりにいいお話だったので、すぐ綾野さんにお伝えしちゃいました(笑)」
渡部が演じるバンカーは、上からも下からも突き上げられる役で、視聴者目線に近いので共感できるはず。
原作で鷲津は効率よく食べられて腹もちのいいうどんを好むというところから、綾野もうどんをよく食べるようになったそうだが、座長としては、こんな心配りも。
「カレーのケータリングを差し入れしてくださったんですが、撮影中は野菜不足になりがちだからと10数種類の野菜の副菜つきだったのには一同、感激。山盛りにして食べていました」
企業買収、マネーゲームと、遠い世界の物語と思いがちだが、経済などの知識がなくても楽しめる痛快エンタメに仕上がっている。
「会社組織でもご近所コミュニティーでも忖度や不条理を感じる時代。鷲津はそういったガラスの壁のようなものをどんどん叩き割り、風穴をあけていく。綾野さんは“鷲津の根底にあるのは窮屈な時代への怒りだ”と言っていました。すべてが正義ではなく、自分の欲望に忠実なダークヒーローというところも痛快さの一因だと思います」
私腹を肥やしている経営者に制裁を加えるが“あなたはまだ生きている”と、その人のすぐ近くにある“希望”に気づかせるのは、鷲津なりのエール。
第2話(7月26日放送)で鷲津が買収を目論むのは、大手ベッドメーカー。双方の攻防とともに社長(かたせ梨乃)がハイヒールで鷲津の足を踏みつけるというかたせのアドリブにも注目!
綾野プロデュース“鷲津スタイル”
髪型、服装、メガネにいたるまで鷲津のスタイルは、綾野がプロデュースした。
「外資系の金融マンはサスペンダーをしていることが多いんですが、綾野さんから“鷲津にとってのスーツは、いわば戦闘服”ということで、ホルスター型のサスペンダーになっています」(中川P)
黒い細身のスーツやネクタイにもこだわりが。
「本作は3つの年代を描いているので、それぞれにスーツもネクタイ、メガネも変えています。とてもこまやかな変化ですが、気づいていただけたら」(同)