「僕もいい歳ですから。テレビにやらされているわけではないですからね」
7月下旬の早朝、冷静に話していた坂上忍が、少し色をなしたように見えた場面があった。何の話かというと、彼が飼っている障害犬の『サンタ』がいなくなったことについてのやり取りである。
障害犬を保護したのはあくまでも自分の意思であり、テレビ局から依頼されたわけではないとの主張だ。順を追って振り返ってみると――。
「坂上さんの家からサンタが脱走してから3週間ほどになります。今年の夏は例年に比べて猛暑なので、弱っているのではないかと気になります……」
心配そうに話すのは、坂上が愛犬たちと暮らす家の近くに住む男性。千葉県の内房にある豪邸は、坂上がテレビ番組の企画で建てたものだ。
「坂上さんは『有吉ゼミ』(日本テレビ系)の『坂上忍、家を買う。』というコーナーで、各地の戸建てやマンションを見て回るというロケ企画をやっていました。そのときは千葉県内に土地を購入しただけで終わったんですが、新たに『坂上忍、家を建てる。』というコーナーを作って企画を継続しました。最終的に、昨年12月の放送で家が完成したんです」(テレビ誌ライター)
新居には、それまで坂上が飼っていた11匹の犬も一緒に引っ越したのだが、さらにもう1匹の犬が加わることになる。そこにもテレビ番組の企画が関係していた。
「‘17年7月放送の『天才!志村どうぶつ園』(日本テレビ系)で『飼い主にダメ出し! 坂上道場』というコーナーに出演したんですが、そのときに以前番組で取り上げた“前足のない甲斐犬”が気になっていたと話したんです。新しく飼う犬としては最後になるとも話し、もともと飼っていた11匹の犬との相性をチェックしたうえで引き取ることを決めました」(同・テレビ誌ライター)
サンタは左前足がなく、3本足で器用に歩いていた。坂上はサンタのために義足を作り、一緒に4本足歩行の練習をした。サンタが元気に散歩できるようになったのはよかったが、7月上旬にいなくなってしまったというのだ。都内の動物愛護団体に所属する女性スタッフ・Aさんは、坂上の行動に疑問を呈する。
「サンタの脱走は、今回が初めてではありません。サンタはCAPINという動物愛護団体から譲り受けた保護犬で、坂上さんが里親として引き取りました。人馴れしていないうちに脱走することはよくあることです。
ただ、そういうときはすぐに連絡するようにお願いしていたはずなのに、坂上さんからは何も言ってこなかったというんですね。CAPINの方は、『志村どうぶつ園』の放送を見て脱走のことを知ったそうです」
サンタは家の塀を乗り越えて脱走したという。それは仕方のないことで、Aさんはそのことに関してとやかく言うつもりはないと話す。
「おかしいのは、すでに11匹も犬を飼っている人に犬が引き取られたことです。坂上さんやCAPINを責めるつもりはありませんが、番組の企画趣旨には違和感を覚えますね。
臆病な犬が里親に10日間預けられて人馴れするというコーナーがありましたが、そんな短期間では信頼関係は築けません。犬にとっては、ストレスでしかないと思います」
サンタが坂上家にいた11匹の先住犬と対面したプロセスも、釈然としないという。
「普通なら徐々に馴らすのに、いきなり対面させていました。サンタくんが怯えているのがよくわかりましたよ。
番組を見ている限りでは、サンタくんはリラックスしていませんでした。坂上さんがハンデを持った犬を引き受けようと考えたのは素晴らしいことです。でも、障害を持つ犬を扱うことに関して、番組はもっと慎重に考えていただきたいんです」(Aさん)
近隣住民は、坂上が犬を連れて散歩する様子をよく目撃している。犬好きだということは知られており、評判は悪くない。
「坂上さんは、あれだけの犬をちゃんと散歩させていてえらいと思うよ。朝5時半には散歩してる。忙しいはずなのにね。挨拶もしっかりしてくれるよ」
一度にすべての犬を連れていくことは難しいので、何度かに分けて散歩しているようだ。
「朝は坂上さんが、夕方は彼女さんが散歩させてますね。サンちゃんがいなくなってからは、早朝や夕方に自転車や車で何度も何度も探していますよ」(同・近隣住民)
今回の脱走は、坂上のパートナーが散歩している間の出来事だという話も。
「彼女さんが散歩させているときに、首輪が抜けちゃったみたい。サンちゃんはもともと野良犬だから、外が恋しいのかな。でも彼女、必死になって探しているよ。もともと色白なのに、真っ黒になって、自転車で走り回ってるからね」(別の近隣住民)
坂上も彼女も、気が気ではないのだろう。状況を聞くために、早朝散歩に出てきた坂上を直撃すると、こちらの質問にしっかりと答えてくれた。
直撃取材に坂上は
――とある動物愛護団体の方が“たくさんの犬を飼われているのに、障害のある犬をさらに飼うことは無理がある”と話していました。テレビの企画に問題があるのでは? と言うのですが。
「そういう意見があってしょうがないと思います。テレビ局というよりは僕のほうからもともと保護したいという思いがあったので、それに対して反対の意見があるのも然るべきだと思います」
――保護団体ではいなくなったらすぐに報告するルールがあるのに、坂上さんは1週間ほど報告しなかったとも言われています。
「それは1回目にいなくなったときですね。これは僕の落ち度なのですが、うちの塀が2メートル80センチもあるので片足がないのにまさかよじ登るとは思わなかった。
パニックになって探偵のほうに先に相談しちゃったんですよ。
4日後に帰ってきて結果オーライだったんだけど、それを僕がテレビ番組で話したのが後追いになっちゃったんですね。規約に基づいて対応できなかったのはうちの責任だと思います」
今回はすぐに報告し、保護団体と相談しながら探しているという。テレビの演出について聞いたところで発したのが、冒頭の発言だ。
――いきなり11匹のワンちゃんと対面させたのはどうかという意見もあります。
「テレビを見ている方がそう思うのは仕方ないですが、そこにいたるまでのすべての過程を映しているわけじゃないんです。
僕と彼女で“犬と生活したいね”って言ってこういう環境で生活させていただいていて、その結果2度目の脱走があったということについては、不手際ですと言うしかないです」
しつけの仕方が厳しすぎたのでは? 義足がストレスになったのでは? 中型犬を小型犬と一緒に散歩させたのがよくないのでは? などという批判についても聞いてみたが、彼は腹をたてるようなこともなく丁寧に説明してくれた。
地元の健康福祉センターのウェブサイトには、サンタと思われる犬の情報が掲載されている。窓口となっている生活衛生課に問い合わせてみると、この情報についての発見連絡は4回あったという。担当者は、サンタの状況について楽観的だった。
「特別に危険な状態とは思っていません。過去の事例としては1年を過ぎて戻ったこともありますから」
坂上のもとには、直接目撃情報が寄せられることもある。
「うちはだって、近所付き合いをせざるを得ないですから(笑) 。本当に協力してもらってるんで。家がバレてるんだってことは薄々わかっていたんですが、全然知らない宅配便のスタッフさんまでもが、インターホンを鳴らして、“いま〇〇にいました!”なんて知らせてくれるんです。みなさんに心配をかけて、本当に申し訳ないなって思ってます……」(坂上)
近所の人々からもサンタは愛されている。1日も早く、彼のもとに戻ってくることを祈りたい。