東海道新幹線のぞみの車内で、1人が死亡、2人が軽傷を負った通り魔殺傷事件。
なたを手に乗客を切りつけた小島一朗容疑者(22)に対し、横浜地検小田原支部は7月13日、精神鑑定を行うための鑑定留置が決まったと発表した。4か月間かけ、刑事責任能力があるかを見極める。
「事件後には近隣との付き合いもなくなり、住んでいていいのか、外出してもいいのか、という気持ちが続いています。
隣の家のお子さんが手を振ってくれたり、お父さんもあいさつしてくれたりして、救われています。妻(一朗の母親)は事件のあった6月9日以前の日常に戻りたいとこぼすことがあります」
父親(52)が、自ら加害者家族の様子をそう伝える。
父親、母親、一朗容疑者と一緒に住んでいた祖母の3人で、接見に行ったことがある。
「6月14日と15日、小田原署に、一朗の写真が入ったアルバムを持って行きました。写真を見ながら、あのときはこうだったよね、あのときはああだったとか、いろいろ話をしようと思っていたんです」
と父親。ところが─。
「面会室の扉が開き、目が合った瞬間、一朗が拒否する感じで扉を閉めたんです。3人とも“私がいるから、私に会いたくないから扉を閉めたのかな”と思ったようです」
差し入れの下着や、現金3万円の受け取りも拒否した。
祖母(82)は孫の思いをこう受け止めている。
「あんなことをしちゃったから会わせる顔がなかったんだと、私は思っている。拒んだことが一朗の良心だったんじゃないかなと思う」
事件直前に一朗容疑者が旅に出た際には、年金を下ろせるキャッシュカードまで渡していた祖母は、7月10日に今度はひとりで接見に行ったが、またしても拒否。
「手紙を送ったんだけど、警察署から電話がかかってきてね。“受け取りを拒否して読まないので破棄していいか”って。保管できないんやろうね。手紙には、旅の中でつらいことがあったの? おばあちゃん気づいてあげられなくて、ごめんねと書きました」
父親のもとには、刑事から一朗の供述内容を確認する連絡が何度も来たという。
「虐待された、ごはんを食べさせてもらえなかった、鳥小屋に住まわされたなど、今までの恨みつらみを話しているようです。言い訳ばかりです。妻も供述内容を聞いて“母親を放棄したい”と呟いています」(父親)
事件後、父親は週刊女性記者とのメールのやりとりで
《一朗が署で言った内容の問い合わせに心が痛みます。私達夫婦が加害者みたいになります》(7月15日)
《警察からは一朗の恨み辛み憎しみを聞かされ、家族も正常な精神が乱れてしまいます》(7月30日)と吐露していた。
「亡くなった方の奥さんとお母さんのコメントが載った新聞を読みました。切り抜きを仏壇に置いて、毎日手を合わせています」
という父親。祖母は、
「私には一朗のことしかない。82歳だから、一朗が帰ってくるまで生きなくちゃ。人生100年だと思ってるよ」
鑑定留置決定以降、一朗容疑者の様子は家族にも届かない。被害者に本心から謝罪の言葉を口にする日は訪れるか。