近年はSNSの充実で、地方からも全国的な人気を獲得するコンテンツが誕生している。これからも確実に地方からスターは生まれ、それらの命は、東京のエンタメ観では見つけられない場所で産声をあげています。そんな輝きや面白さを、いち早く北海道からお届けします(北海道在住フリーライター/乗田綾子)
先日の話になりますが、7月末に北海道札幌市で開催された「CUE DREAM JAM-BOREE 2018」というライブイベントにお邪魔してきました。
約4万人が楽しんだイベント
タイトルにある「CUE」とは、北海道を拠点とする芸能事務所、CREATIVE OFFICE CUEのこと。
“日本一チケットが取れない演劇ユニット”といわれるTEAM NACS(大泉洋さん、安田顕さん、森崎博之さん、戸次重幸さん、音尾琢真さん)が所属していることで有名な事務所ですが、「CUE DREAM JAM-BOREE」はそんな彼らも含め、所属タレントが全員参加する、事務所創業の地・北海道での“ファン感謝祭”のような催しです。
2002年から2年に1度のペースで行われているこの「CUE DREAM JAM-BOREE」は、最初は札幌の小さなホール会場から始まりました。
しかし所属俳優・タレントたちが年々活躍の場を広げるに伴い、会場もステップアップ。今では北海道でトップクラスのキャパシティを有する、北海道立総合体育センター北海きたえーるが、おなじみの会場となっています。
また2016年からは映画館での全国ライブビューイング中継も行われており、2018年の今年は7月27日~29日の開催3日間で、会場の約24000人+映画館の約15000人が、このイベントを楽しんでいたという計算になりました。
公演時間は3時間30分!
長年、北海道に住みながらも今回初めて「CUE DREAM JAM-BOREE」に参加した私ですが、まず最初に驚いたのは、“地方限定ということを思わず忘れてしまう”スケールの大きさ、そしてその豪華さでした。
今回はドラマ『陸王』(TBS系)や『ブラックペアン』(同)への出演で、注目を集めつつあるTEAM NACSの音尾琢真さんが総合プロデュースを担当し、内容は“魔法”をテーマにしたミュージカルとコンサートの2部構成になっていました。
そこで登場する照明・音響・特殊効果の数々が、はっきり言って地方限定のイベント用とは、到底思えないようなレベル。いずれも“あの超有名アーティストの全国アリーナツアーでも使っていた”というような演出で、しかも3日間だけのステージで惜しみなく使われているのは、異例中の異例です。
また、注目すべきはこのイベント、とにかく、公演時間が長い!
アーティストやアイドルのライブに行かれる方ほど、この凄(すご)さがわかると思うのですが、7000円~のチケット1枚で、なんと公演時間が約3時間30分もあります。
第一部となるミュージカルが終わったのは、開演から2時間30分後、そして第二部となるコンサートとフィナーレはさらに1時間。
また公演中は随所にアイドルでいう「お手振り」タイムやトロッコ移動、また客席降臨やサインボールの投げ込みなど、近距離でのファンサービスもかなり用意されていました。
最大級の感謝
特にTEAM NACSのように、芸能界で俳優業を主軸としている人たちは、ファンに直接レスポンスを返すという機会には、なかなか恵まれないかと思います。
ですが応援するファンにしてみれば、無理な願いとわかっていながらも、少しでも長く、同じ時間や感情を一緒に共有していたいもの。
ファンに感謝を抱く芸能人と、声を届けたいファン。本来であれば遠い距離でしか繋がることのできない両者を、「豪華に」「もっと長く」「もっと近く」したものがあるとしたら、それはTEAM NACS、そしてCREATIVE OFFICE CUEの場合、「北海道で生まれ育った」というアイデンティティだったのでしょう。
以前、大泉洋さんによる、こんな言葉がありました。
《北海道の人たちに見続けてもらうために、色々な顔を持とうと思ったのですが、北海道ではドラマをやりたくても機会がないから、東京の仕事を始めたんです》
《僕が大学生の時は、色々な劇団の舞台を見たくても、東京に行かないと見られないものがたくさんあった。その逆があってもいいと思うんです》
(以上、zakzak「ぴいぷる」2013年5月10日)
やりたいことや見たいものが距離に阻まれる。そんな地方の実情を知る彼らだからこそ、生まれ育った地方で、手を抜かずに最大級の感謝を返す。
ここに「CUE DREAM JAM-BOREE」が毎回、全国から多くのファンを集めてきた理由、そして北海道の一芸能事務所がここまで愛されるようになった理由、すべてが詰まっているような気がしました。
ちなみに今回のイベントではアニソンシンガーとして人気急上昇中の綾野ましろさんや、今年からCREATIVE OFFICE CUEに所属することになったSKE48出身の東李苑さん、また北海道男子限定オーディションで選ばれた若手ボーイズユニットの「NORD(ノール)」と、“次の世代”の輝きも多く見受けられました。
北海道で頑張っている若い彼らの活躍についても、また日を改めてお伝えできたらと思います。
乗田綾子(のりた・あやこ)◎フリーライター。1983年生まれ。神奈川県横浜市出身、15歳から北海道に移住。筆名・小娘で、2012年にブログ『小娘のつれづれ』をスタートし、アイドルや音楽を中心に執筆。現在はフリーライターとして著書『SMAPと、とあるファンの物語』(双葉社)を出版している他、雑誌『月刊エンタメ』『EX大衆』『CDジャーナル』などでも執筆。Twitter/ @drifter_2181