華やかな芸能界をはじめ、一般社会にも潜むたくさんの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」。持ち前の鋭い観察眼と深読み力に定評があるライターの仁科友里さんが、「ヤバジョ」の魅力をひもといていきます。
第5回 MALIA.
結婚は個人の選択であり、するもしないも本人の自由なはずです。しかし、日本ではなぜか結婚が “魅力検定”になっています。特に女性は独身でいると「美人じゃないから、結婚できない」「あんなに美人なのに結婚していないということは、性格が悪いんだ」「料理が下手だから、結婚できない」という具合に、上から目線の分析にさらされてきました。
それでは結婚さえすれば一人前かというと、そうではありません。離婚なんてした日には「夫を手のひらで転がせなかった」とか「そんなオトコを選んだのはあなただから、あなたが悪い」というふうに責める風潮はいまだにあります。結婚しなくてもダメ、離婚してもダメ、もう平成も終わるのに何言ってやがんだコノヤロウという感じですが、そういう“魅力検定”論者にとって、4回結婚し、3人の父親から生まれた4人の子どもをもつモデル・MALIA.は相当ヤバいオンナに見えるのでしょう。
しかし、MALIA.ほど、結婚の原則を知る女性芸能人はいないと思うのです。
「結婚は魅力ではなく、メリットで決まる」というのが私の考えですが、MALIA.は「メリットがあれば、何回でも結婚できる」ことを証明しています。ヤバいどころか、なんて夢のある存在でしょうか。
MALIA.のメリットは、まず、ゴージャスな美貌です。『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)で、明石家さんまはMALIA.との出会いを「車を運転していたら、広尾のコンビニの前できれいな人を見かけた。それがMALIA.だった」と話していました。あらゆるツテをたどってMAILA.とのコンタクトに成功したさんまは、MALIA.に子どもがいることを知ると「子どもも一緒にシドニーに行こう」と誘ったそうですから、どれだけ魅力的かわかるというもの。
MALIA.はただきれいなだけではありません。経済的に自立しています。MALIA.の4人の結婚相手の内訳は、Jリーガー3人、格闘家1人とスポーツ選手が多い。スポーツ選手の現役時代は華やかでも、引退後の仕事が確約されている人はごくわずかで、当然、収入も不安定になりやすいでしょう。それに対し、MALIA.は芸能活動と並行して、脱毛サロンやアパレルブランドを立ち上げるなど、実業家として地道に活動しています。男性から見ると「自分が養わなければ」というプレッシャーがありませんし、もっと言うと「自分に仕事がなくても、食べるのに困らない」というメリットがあると言えるのです。
MALIA.にとって結婚するメリットとは
4回目の結婚の際、ワイドショーで「なぜ3回も結婚に失敗しているのに、また結婚するのか? 恋愛でいいのではないか?」という趣旨の発言をしたコメンテーターがいますが、交際ではなく、結婚のほうがMALIA.にもメリットがあると思うのです。
MALIA.に密着したテレビ番組を見ましたが、3人の子育てをし、実業家として働くMALIA.はともかく忙しい。もしあの生活が本当なら、デートする時間を捻出するのは難しいでしょう。また、MALIA.は三度目の夫との離婚理由について、「遠距離だったから」と語っていますが、おそらく好きな人と離れていることに耐えられない性格だと思われます。となると、一番いいのは、一緒に生活すること、つまり結婚です。上述したとおり、結婚してお財布が一緒になったほうが、男性側のメリットは大きくなります。
このようにMAILA.は、実は「結婚向きの女性」でありますが、4回結婚し、3人の父親から生まれた4人の子どもがいるというのは、現在の日本では珍しいケースでしょう。人とちょっと違うことをする女性を叩くのが日本社会ですが、MALIA.を責める時に一番使われるのが「母親失格」「子どもがかわいそう」ではないでしょうか。
確かに離婚を経験していない家庭の子どもに比べると、しなくてもいい経験をしたと言えるでしょう。しかし、子どもにとって母親がどんな存在であったのかを決めることができるのは、子どもだけであって、外野ではありません。また、親が頼りなかったことで、子どもが奮起するケースだってたくさんあります。キング・カズこと三浦知良や武田修宏は両親が離婚しており、経済的な困窮を経験しています。持って生まれた才能に加え、「豊かになってお母さんにラクをさせてあげたい」という気持ちや、孤独が厳しい練習に耐えるモチベーションに変わっていった部分はあると思うのです。
具体的な行動を伴わない「子どもがかわいそう」発言は、悪口は言いたいけれど、心の汚い人と思われたくないから主語を子どもにすり替えるという、一種の“逃げ”ではないでしょうか。
MALIA.の凝りなさから見習うべきもの
MALIA.の長男は、中学卒業後に家族と離れて、大阪の高校に進学したそうです。この時、ネットでは「母親がオトコをとっかえひっかえしてるから、家にいたくないんだ」とか「自分がオトコといちゃいちゃするために、長男を追い出した」という意見がありましたが、MALIA.のインスタグラムによると、長男はサッカーで国体の大阪代表に選ばれるほどの有力選手だそうです。母親と離れていても、目標を見失わず、きちんと結果を出しているのです。彼は「かわいそうな子」ではありませんし、MALIA.が「母親失格」だと私は思いません。
安易な結婚や離婚を勧めるつもりは毛頭ありませんが、離婚を経験したものの、本当はもう一度結婚したいと思っているなら。もしくは、一人で生きていくことに不安や寂しさを感じるのなら、迷うことなく、婚活してほしいと思うのです。人に何を言われようと、人生は幸せになったもの勝ちです。MALIA.のようにヤバいと言われるオンナたちの懲りなさを、ぜひ見習ってほしいと思います。
<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。他に、男性向け恋愛本『確実にモテる世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」。