滝沢秀明(2017年1月)

 電撃発表だったーー。

 9月13日、ジャニーズ事務所の滝沢秀明が引退を表明した。今後は裏方として、タレント育成や舞台、コンサートのプロデュース業に専念するという。

 すでに一部週刊誌で報じられているが、つまり、彼はジャニー喜多川氏の後を継ぐということだ。

 でも、どうしてこの時期に、タッキーが引退を発表しなければならなかったのか。それには大きくなったジャニーズ事務所が抱える問題が、関係してくる。

 ジャニーズ事務所が抱えるタレントの数は、芸能プロダクションの中でも、トップクラスに位置する。しかも、ほとんどがグループだ。第1号『ジャニーズ』以来、数々のグループが誕生し、活躍してきた歴史がある。

 それは現在も途切れることはない。

デビューとは『CDデビュー』のこと

 ここで問題となってくるのが『Jr.(ジュニア)』と呼ばれる予備軍の存在。

 Jr.にも多数のグループがあるが、彼らがJr.でなくなるためには『デビュー』して昇格しなければならない。一般の人にはわかりにくいが、ここでいう『デビュー』はジャニーズ用語であり、『CDデビュー』のことを指している。

CDがなくなるかもしれないという時代に、そういう考えはもう古いのですが、CDが出せなければ、彼らはいつまでたってもJr.で“予備軍”のまま。昨年の報道で、振付師が一部のJr.に対して“もうお前ら、CDデビューできないから”と言ったことは芸能関係者のあいだでも話題になりました」(芸能プロ関係者)

  『デビュー』を夢見てジャニーズに入ったJr.たちの落胆ぶりは推して知るべしだろう。

一昨年、購入が報じられた渋谷のビルは、多くのジャニタレが出入りしている

 ところが、ジャニーズタレントになりたい少年たちは後を絶たず、Jr.の数だけは増え続けていく。

ジャニーさんは、純粋にプロデューサーですから、いいタレントを育て、いい舞台を作ることしか頭にないんだと思います。

 だから後先考えずに、グループをバンバン作っちゃったんですね。それでも増え過ぎてしまったJr.のグループに関して、どうにかしなくては、と思っていたようです」(芸能プロ関係者)

 若い世代の新しいグループが続々誕生するなかで、年齢を重ねた先輩グループがくすぶり続けている状況。

後輩たち、とくにJr.の信頼が厚く慕われているタッキーが、彼らの不満を聞くうちに、何とかしなくちゃと思ったようです。ジャニーさんが彼に後を継がせるのは、Jr.の処遇をまかせる意味もあったんだと思います」(前出・芸能プロ関係者)

一刻も早く後継者を

 ジャニー氏がいま一番のお気に入りは、『King & Prince』だと言われている。それが証拠に彼らは今年春、念願の『CDデビュー』を果たしている。

 しかし、それは結果として「CDデビューがなくなったはずなのに、まだデビューしていない先輩グループが沢山いる。どうして彼らが……」と、Jr.たちの不満をふくらませることになった。

このままでは、いつ爆発するかわかりません。辞めていくJr.も出てくるでしょう。また、ジャニーさんも高齢です。もしジャニーさんになにかあったら、自分たちはどうなるんだろうと当然、Jr.の子たちは不安に思う。ジャニーさんがいなくなったら事務所を出ていく子たちは多いと思います」(スポーツ紙記者)

 Jr.のあいだに不満と不安が渦を巻いている状況で、追い打ちをかける出来事が、

先月下旬でした。ごく一部にですが、ジャニーさんが脳梗塞で倒れたという情報が流れたんです。確認が取れず、その後も状況も掴めていないのですが、事実という線もまだ捨てきれません」(週刊誌記者)

 Jr.の救済と流出を防ぐためにタッキーに白羽の矢が立ったということなのだが、ジャニー氏も自分の体調を考慮して、一刻も早く後継者を立てる必要があったのだろう。

 今回の発表は『タッキー&翼』デビュー16周年に合わせたという話もあるが、発表がこのタイミングになったのには、その辺の事情も絡んでいたのではないだろうか。

 タッキーが問題ををどうやって解決するのかに期待が集まるが、

一部報道が出ていましたが、ジャニーズ事務所は、タレント養成所といいますか、学校を開設する予定だそうです。タッキーがそこの責任者になるみたいですね。ジャニーさんの後継者ですから当然でしょう。

 また、増え過ぎてしまったJr.のグループに関しては、1度解散させて、再編するのではないかという話も出ています」(前出・芸能プロ関係者)

Jr.問題解決のカギ

 Jr.問題解決のカギは、7月に結成された、V6・三宅健と滝沢の新ユニット『KEN☆Tackey』にあるという。

 リリースされた新曲『逆転ラバーズ』のミュージックビデオでは、ふたりの後ろで大勢のJr.たちが圧巻のダンスを繰り広げている。

なるべく多くのJr.たちが脚光を浴びるようにしたいんだと思います。ですから1グループあたりの人数を多くして、活動の場を増やすということですね。『EXILE』グループが所属するLDHや、AKBのようにしたいんじゃないでしょうか」(前出・芸能プロ関係者)

 ここで気になるのは、ジャニーズ事務所の本体を仕切るメリー喜多川氏と娘のジュリー氏の動向。

「現在はもうジュリーさんが実権を握っていると見ていいでしょう。ただ彼女の目はテレビと映画に向いていますから、ジャニーさんが力を注ぐ舞台にはあまり興味がないと思います。そう簡単にお金にもなりませんしね(笑)。

 また、最近は、事務所のスタッフをヘッドハンティングして、経理部門には元銀行関係者、不動産部門には元不動産関係者という専門分野に強い人を外部から入れているようです。これは、弱体化した事務所の立て直しというだけでなく、個人商店だったジャニーズ事務所を“企業”に脱皮させようとしているんじゃないでしょうか」(元ジャニーズ事務所関係者)

 そのため本社を移転させ、新社屋に系列会社がすべて集合すると言われていたが、いまのところその様子が見られない。

「渋谷のビルはそのままだそうです。件(くだん)の学校もそこに入るみたいですね。これで事務所内の『ジャニー』部門と『メリー・ジュリー』部門の住み分けがはっきりしました。

 かといって、一部週刊誌に書かれていたような『ジャニー派』と『メリー・ジュリー派』の対決が始まるということはないですし、お互いにウィン・ウィンの関係ともちょっと違います。二極化、あるいはホールディングスのような形でひとつの組織に、会社がふたつできるということなんじゃないでしょうか」(週刊誌記者)

 滝沢がジャニー氏の後を継ぐことで、“ジャニーズ帝国”が大きく生まれ変わるのか、それとも……。

<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>
◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。