どんな時に結婚が成立すると思いますか? それは、“選ぶこと”と“選ばれること”がイコールになった時です。
婚活ライターをしながら、仲人としてもお見合い現場に携わる筆者が、目の当たりにした男女の婚活事情を、様々なテーマ別に考えてゆく連載。今回は、『婚活市場で、“選ばれる女”“選ばれない女“の違い』について考えました。
理想を押し付けるより、許容することが大事
橋本綾子さん(仮名、33歳)は、9歳年上の茂上啓司さん(仮名)とお見合い後、交際に入り、2か月が経ちました。週1のペースで会っているようだったので、近況と今後についてヒヤリングするための面談をしました。
「茂上さんとは、その後どう? 結婚まで進めそうですか?」と尋ねると、こんな答えが帰ってきました。
「はっきり言えば、迷っています。食事代はすべて払ってくださいますし、ケチではない。その点は合格なんです。ただ‥‥」
茂上さんは、誰もが知る大手企業に勤めていて、年収も1千万円近くありました。
「これまで仕事一筋できた方だから、恋愛経験がほとんどない。デートのお店選びもできなくて、最初のデートの時に駅で待ち合わせしたら、駅前の居酒屋に入っていこうとしたんですよ。もう、びっくりしちゃいました」
その日は、「私の知ってるお店があるから、そっちに行きませんか?」と、綾子さんが何度か行ったことのあるイタリアンレストランに連れていったそうです。
「あと、洋服もポロシャツをチノパンにインして、ベルトを締めて、小脇にセカンドバッグを抱える、“ザ・おじさんスタイル”なんですよ。
もしも結婚したら、今持っている彼の服は全部捨ててもらって、私が全てをコーディネイトしないと、恥ずかしくて友達の前に出せないです」
綾子さんは、お見合いサイトに登録するや、1か月に80件近いお申し込みがきた美人です。
20代の頃は、きっと多くの男性からモテていたのでしょう。ですが1人に決められず、気がついたら33歳。慌てて真剣に結婚相手を探そうと、お見合いを始めました。
「お見合い市場にいる男性って、条件は良くても、女慣れしてない人が多いんですよね。そこは私が彼を磨くつもりでいますが」
綾子さんは、茂上さんが“原石”だと言わんばかりでした。
一方、茂上さんは、当初9歳年下の美人の綾子さんにゾッコンでした。ところが、ある時、茂上さんの相談室から交際終了のお知らせがきました。
仲人さんが語る終了理由は、こうでした。
「橋本様はアクティブでチャーミングな女性ですが、ご自身の理想や美意識が高く、茂上も最初はそこに、自分が応えていこうと一生懸命に頑張っていたようです。
でも、次第に疲れを感じるようになった、とのことでした。無理することなく、自然に寄り添えるお相手の方が、自分には合っているとの判断でした」
綾子さんは、ジムに通ったり、食べ物にも気を使っていたりするので、スタイルも抜群です。また、仕事にも一生懸命な頑張り屋なのですが、どうも男性を選ぼうとする意識が強すぎたようです。
男女ともに、ストイックな努力家は、相手にもそれを求めてしまいます。結婚は、“お相手を理想通りに変える”よりも、“お相手の現状を許容する”ことが大事なのです。
若さよりも大切なものとは?
石原清美さん(39歳、仮名)は、先日入会したばかりの女性です。36歳の頃から婚活アプリや婚活パーティなどと中心に婚活をしてきましたが、なかなかいいお相手に巡り会えずにいました。
そこで、結婚相談所での活動を始めるようになったのですが、登録したら、申し込まれるのは、40代後半、50代の男性ばかり。お申し込みをかける同世代の男性には、まったくお見合いを受けてもらえず、すっかりやる気をなくしていました。
そんな時に、同い年の年収が800万円の公務員男性、比嘉啓介さん(仮名)に申し込んだお見合いが、受諾されました。
お会いしてみると、とても話しやすく気さくな男性でした。そして、お見合いの後に、お互いが交際希望を出し交際することになったのです。
清美さんは、私に言いました。
「このご縁を大切に育てていきたいです。でも、比嘉さんは39歳だし、お仕事も安定した公務員だし、人気がありますよね。
私よりも若い女性からのお申し込みも多いでしょうし、今後、気になる人がいたらお見合いをするかもしれない。若い女性たちの中に入って、私がどう勝ち抜けばよいでしょうか?」
そこで、私は、清美さんにこうアドバイスしました。
「婚活をしている大勢の女性たちの中から“選ばれたい”のですよね。ならば、“選ばれる”努力をしてみましょう。これまで清美さんは、相手を“選ぼう”としていませんでしたか?」
清美さんは、ハッとした顔をしました。
「確かにそうだったかもしれません。40代後半、50代の男性からお申し込みをいただくと、“どうしてこんなおじさんと、私がお見合いをしなきゃならないのよ”と心の中で思っていました。
私だって、20代、30代の男性からしたら“おばさん”なんですよね。でも、選ばれる努力って、実際どうしたらいいんですか」
こんな“選ばれる努力”をした女性の話
ファッションやメイクに気を使っておしゃれをして、男性にお会いした時には、いつも微笑みをたやさず、聞き上手になる。
それは、もちろん大切なことです。けれど、それだけでは、男性の気持ちはつかめない。“選ばれる女”には、なれません。
例えば割り勘にされた時に、こんなことを言う女性が多いのです。
「今日のランチ代、きっちり割り勘でした。割り勘にされると、なんだか大切にされてない気持ちになります。私は、1280円のランチ代を払うに値しない女でしょうか?」
また、こんなことを言う女性もいます。
「美容室代、メイク代、洋服代と、女性は自分を綺麗にするために出費がかさみますよね。綺麗にするのは男性のため。だから、デート代は男性が払ってもよいのではないですか?」
これらの発言をする女性は、男性から“選ばれる”気満々です。しかし、こんな上から目線の女性を、男性が “選ぶ”でしょうか。
以前、私が感心した“選ばれる努力”をしていた女性の話をしますね。
すでに成婚退会した男性、江本裕紀さん(42歳、仮名)の奥様になった女性です。
婚活中だった裕紀さんは、36歳、 38歳、41歳の3人の女性とお見合いをし、3人と交際に入っていました。
この中で、最終的に妻に選んだのが、41歳の藤井美菜子さん(仮名)でした。男性は、女性の年齢が1歳でも若く、見た目が綺麗で華やかな人が好き。
36歳の女性は可愛い系、38歳の女性は美人系、そこにいくと41歳の美菜子さんは、3人の中では年齢も1番上だったし、見た目も地味でした。
それなのに、なぜ裕紀さんが美菜子さんを選んだのか。それは、彼女が一番“選ばれる努力”をしたからです。
食事を終えて会計の段になり、裕紀さんが、「ここは大丈夫ですよ」というと、36歳、38歳の女性は、「ごちそうさまでした」と笑顔を作ってお礼を言ったそうです。
ところが、美菜子さんだけは毎回、「少し取ってください」と、合計金額の半額に近い千円札を手渡してくれた。
ある時、ふっと美菜子さんのお財布を見たら、千円札がたくさん入っていたそうです。美菜子さんは、裕紀さんに負担をかけないように毎回デートの前には1万円札を両替してきていた。そうした細やかな気遣いに心を打たれたようです。
また、仕事の繁忙期に、「今、残業続きで大変です」という話をメールをし、その直後にデートをしたら、36歳、38歳の女性たちは、「大変ですね。頑張ってください」と優しい言葉をかけてくれた。
一方、美菜子さんは、「そんなに忙しい時に、私と会う時間を作ってくださってありがとうございます。このアロマオイルで、こうやってハンドマッサージをすると、疲れが取れるんですよ」と言って、お土産にアロマオイルを持ってきて、その場で裕紀さんの手をハンドマッサージしてくれた。それが本当に気持ちよかったと言うのです。
綺麗に着飾ること。洗練された仕草で品良くお食事をいただくこと。聞き上手になって相手の話に共感し、笑顔で会話をすること。それらは確かに婚活をしていく上では大切なことです。
ですが、もう一歩進んだ、相手を思いやる能動的な努力をしてみる。それがお相手から“選ばれること”につながるのです。
鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイト『最短結婚ナビ』http://www.saitankekkon.jp/