平成最後の秋に、平成の大横綱が相撲人生にピリオドを打った。現役の力士としては、15年前に引退。その後は親方として後進の指導にあたっていたが、今度は大相撲から完全に退くこととなった。
貴乃花は今年3月に、相撲協会から、親方衆の階級で最も低い『年寄』への降格処分を受けている。
「処分の理由は、昨年10月に起きた元横綱・日馬富士による貴ノ岩への暴行事件を受け、内閣府に告発状を提出していた貴乃花が、協会への不信感から場所初日に姿を見せなかった“職務放棄”と、今年3月に付け人に暴行した貴公俊の問題の“監督責任”でした」(スポーツ紙記者)
この暴行事件と告発状により、貴乃花と相撲協会との対立姿勢は色濃くなっていた。
賢いやり方ではなかった
しかし、対立自体は昨年から始まったわけではないと、貴乃花を長年、取材する相撲ジャーナリスト。
「親方になったころから進めようとした、旧態依然とした相撲協会への改革がやはり大きいですね」
どんな組織でも長い間、変わらないままでいれば、時代にそぐわず膿はたまるかもしれない。しかし、貴乃花のメスの入れ方は、角界の多くの人間の反発を呼んだ。
「貴乃花親方は自分が考える改革のために、相撲協会に対する批判を、協会や理事会に対してではなく、常にマスコミの前で話した。意見に対する賛否の前に、その表明の仕方に“否”が生まれてしまった。賢いやり方とは言いがたかったですね」(前出・相撲ジャーナリスト)
今年7月、協会の理事会で、すべての親方は5つある一門のいずれかに所属しなければならないことが決められた。
「6月に一門の看板を下ろしていた貴乃花親方も、いずれかの一門に属さなければ相撲部屋を持てないことになった。
その際、協会から、どこかに入る条件として、告発状は“事実無根と認めるように”という圧力があったと主張。彼はそれを認めることはできないので、力士は千賀ノ浦部屋に所属を変更し、自身は引退の道を選んだと話しています」(前出・スポーツ紙記者)
改革を目指した貴乃花だったが、自身は理事から落選し、弟子は部屋を移らざるをえないなど、結果的にはよい方向には進まなかった。
その改革のウラには、神事である相撲としては欠いてはならない“礼”が失われた場面が多々あったようだ。
「それまで世話になっていた親方衆とまったくの疎遠になったり、貴乃花一門がなくなった際も、弟子の親御さんに対し、なんの説明も挨拶もなかった。それは今回の自身の引退騒動でも、同様だったようです。
貴乃花親方は親御さんからその子どもを預かっている身です。その状況で知らんぷりはいくらなんでも……。
引退会見では“断腸の思いで”弟子を別の部屋に移したと話し、暴行事件でも“何よりも弟子を思って”というアピールをしていましたが、実際は、どれだけ弟子のことを考えていたのかわかりません」(相撲協会関係者)
彼は会見でこの引退を“最善の道”と表現したが、それを女将として隣で見ていた妻の景子夫人は、暴走する夫から離れ、以前から夫とは違う“最善の道”を自らの手で整えている。
「現在、貴乃花親方は部屋があった場所で生活していますが、景子さんは都内の一軒家で暮らしており、別居状態です」(貴乃花部屋関係者)
自身の事業に熱心な女将さん
今回、夫の一大事のさなか、夫人は何を─。
「景子さんは、所属力士の“母”として、女将さん業をしっかり務めてきたと思います。部屋の外では、一門の壁を超えて女将たち同士がつながる会を作ったり、精力的でした。
しかし一方で、以前より自身の事業にも非常に熱心であったことも事実です」(前出・相撲ジャーナリスト)
景子夫人は、女将でありながら、別の顔も持っていた。
「実業家として自身が代表取締役を務める会社を持ち、さまざまなジャンルのビジネスを手がけています。
メイン事業は、アナウンサーとして身につけたしゃべりと、女将として身につけた礼儀作法を取り入れた“話し方講座”。こちらの講座は3時間の講義で、1人2万7000円です」(同・相撲ジャーナリスト)
“実業家”景子夫人の事業はこれだけではない。
「景子さん自身が講演を年50本程度こなし、自身がモデルも務める自社開発の美容液も販売。食品のプロデュース、また本の朗読会などイベント開催も行っています」(同・相撲ジャーナリスト)
景子夫人の経営する会社について、彼女の知人は、
「会社の設立は、2年前。親方がまだ現役だったころから、横綱を支える料理のレシピ本やおもてなしについての本などの執筆はしていましたが、ここ数年で商売の“幅”が非常に広がった印象です」
会社を設立する場合、その会社の詳細を記した定款を作成しなければならない。そのなかには、《事業目的》の項目があり、どのような事業を行うのか外部に示す必要がある。
なぜビジネスに励むのか
景子夫人の会社の定款には、多種多様な事業目的が記載されている。
各種スクール、美容品の輸出入業、旅行代理店業、コンサルティング、ネット広告業、芸能プロダクション、生花店、飲食店、ホテル、エステ、ゲームの企画、酒類の販売……。
「会社の規模にもよりますが、景子さんの会社クラスで記載するのは、5〜10件程度でしょうか。あとから申請するにもお金がかかってしまうので、最初から多めに記載するものではありますが、40件というのは多めな印象です」(行政書士)
どんなジャンルにも手をのばせるように……。それだけ“ガチンコ”ということか。
なぜ彼女は女将でありながら、ビジネスに励むのか。
「ずっと表に出ていた人なので、裏方ではなく“自分が”という思いは強いはずです。貴乃花親方の動向に対しての不安もあったと思います。
何かするたびにあれほど敵を作ってしまう人が、隣にいたら不安でしょう。“自分ひとりになったときのために”という思いも強いと思いますよ」(前出・景子夫人の知人)
夫の引退表明後、“自分の”仕事から自宅へ戻ってきた景子夫人を週刊女性は連日直撃したが、頑なに無言を貫いた─。
貴乃花親方は今後は「小さな子どもたちに相撲を教えたい」などと話している。そのとき景子夫人は同じ道を歩んでいるだろうか……。