全国には、厳選した品ぞろえや趣向を凝らしたPOPづくりで多くのお客さんをトリコにしているスーパーが存在する。行って楽しい&買って嬉しい、魅力たっぷりのご当地スーパーをこぞってご紹介♪
名物POPがお出迎え『ひまわり市場』が激アツ!
「北海道から届いた特大の新サンマが特売です!“特売が特大”!!」
山梨県北杜市で地元の人を笑顔にすると評判なのが『ひまわり市場』。店内に入ると響き渡るのは、社長みずからが握るマイクから飛び出す熱い言葉。声につられて鮮魚コーナーに向かうと、まぶしく輝く大きなサンマが、どーんと3箱。そこには、「旬を味わう。それは、人類の権利と義務である」といった強烈なPOPも添えられ、初めて訪れた客は思わず2度見!
そして、鮮魚の品ぞろえの豊富さと贅沢さに驚くこと必至だ。
「専門のバイヤーが、浜直送の鮮魚も含め、旬のものを全国から仕入れています。精肉や野菜なども同じ。品質がよく納得できる価格の品を、自由に、でも責任を持って選んでいるんです」
マイクを脇に語るのは那波秀和社長。確かにどこを見ても品ぞろえがハンパない。地元産野菜はもちろん、ハムコーナーには山形「平田牧場」、乳製品コーナーには島根「木次乳業」など、都心の高級スーパーに並ぶような商品があちこちに。土日の目玉商品「歴史的メンチカツ」をはじめ、惣菜にも手を抜かない。
品ぞろえの秘密は、手間ひまを惜しまないこと! それは名物社長の“炎のマイクパフォーマンス”や、独自のセンスが光る“魂のPOP”にも現れている。
「効率化を考えるのではなく、売り上げが出ればさらに品数を増やしスタッフも増員する。普通のスーパーの逆張りですね(笑)」(那波社長、以下同)
確かに、客も多いがスタッフの数も目を引く。客が商品選びに迷っていたら自然に声をかけ、常に品出しに気を配る。買い物を楽しむ客はもとより、スタッフがいきいきとしているのも特徴だ。
にこやかな女性スタッフが「緑の帽子の制服は私たちの要望で決まったんですよ」と教えてくれた。60代? お肌がツヤツヤ!
「人が幸せになるために会社があると思っています。だから、『ひまわり市場』に関わるのが楽しいと思ってくれる人と働きたい」
社長の人柄を慕って、野菜ソムリエの資格者や築地でキャリアを積んだ江戸前の寿司職人など、個性が光るスタッフが集結。中でも酒担当、“世界のヒライデ”こと平出さん(スタッフのニックネームは社長命名)が担当するワイン棚は圧巻。100ほどものワイナリーがある山梨でも、ひまわり市場の品ぞろえは一目置かれているのだ。
この店ならと、希少な手作りドレッシングやパンを納入する地元の作り手も多く、店を中心にした作り手・スタッフ・お客の信頼関係が、日々の賑わいを生み続けている。
2010年に現在の『ひまわり市場』として設立されて以降(以前は別組織)、チラシは出していない。
「チラシをやめるのは度胸がいりました。でも、心配なかったですね」
北杜市は都心からの移住者が多いエリア。目の肥えた客にも贔屓にされ、今や評判を聞きつけた遠方からの客も多い。取材時は“魂の火曜市”を開催。盛りだくさんの野菜や惣菜を100円(税別)で全力販売!
「惣菜も用意しますが、私たちは素材や調味料などが中心。調理を楽しみ、おいしいものを食べる喜びを感じていただきたいんです」
『ダイキョーバリュー』朝市の底力
昭和53年創業のダイキョープラザが福岡市内を中心に5店舗を展開する『ダイキョーバリュー』。地元を中心に連日多くの客が訪れるが、特に賑わいを見せるのが全店舗で開催される名物の「日曜朝市」だ。
通常は朝9時から正午までだが、他店よりも早く朝8時から始まるのがいちばん最初に誕生した福岡市南区にある弥永店。鮮魚などの直営店3店と精肉や惣菜などのテナントとして入っている専門店6店が協力して営業している、少し珍しい業態のスーパーだ。会場となる店舗前の屋根つきの大きな広場には、8時前から品定めをする常連客などで早くも活気が。
「週でいちばん多くのお客様がいらっしゃいます。正確な人数はわかりませんが、朝市のときの店内のレジを通過するお客様が1300〜1400人くらい。ご家族でいらっしゃる方のほうが多いので、延べ3000人くらいはお越しいただいていると思います」
と教えてくれたのは、浦田一延店長だ。
「日曜朝市のスタートです!」と明るい性格で客にも多くのファンがいる名物マネージャーの湯口節子さんのアナウンスで朝市がオープン。会場に入るとさっそくソースのいい香りを漂わせる焼きそばがなんと100円で販売。朝市の時間内に焼きそばの麺だけで1回5キロを鉄板で11回焼くそうで、お昼用や、家族へのお土産として、まとめ買いする人もたくさん。
1度食べたらやみつきになると話題なのが焼豚足。みそなどで煮た豚足を表面がカリッとするまで焼き、酢じょうゆをつけてガブリ。予約して焼き上がりを待つ間に買い物をする人も多く、約250本が飛ぶように売れるという。
鶏専門店『あらい』は焼き鳥を毎日1000本以上売り上げる人気店。鶏皮やから揚げなどたくさんの商品が並ぶ中、いちばん人気は、えっ、豚バラ!?
「福岡では焼き鳥屋に行ったら、最初に頼むのは豚バラという人が多いほど定番の人気。1日300〜400本は焼いていますね。ほかにも、コロッケを3個100円で販売したり、野菜とかフルーツ、鮮魚など、会場の価格は通常よりもかなりお得。お客様へのサービスだと思っています」(浦田店長、以下同)
木曜日には、こちらも人気の「木曜夕暮れ市」を開催。日曜朝市に出品されている野菜やフルーツ、お惣菜などに加え、夕食のおかずとしてすぐ調理して食べられる商品も多数。焼くだけでいい味つき肉や、鍋用の野菜のセットなど、夕食にもう1品追加したり、献立に困った主婦にはうれしい品物が販売される。
店内の商品も充実していて精肉コーナーではホルモンの対面販売を行ったり、調味料コーナーではとびうおからだしをとった“あごだし”が並んでいたりと、九州ならではの逸品も。
また夏になるとお祭りや、勤労感謝の日には地域の人たちとチャリティー餅つきをしたりと、まさに地元を愛し地元に愛されるご当地スーパーの鑑!
「以前、店頭でカラオケ大会をしたり、久留米で有名なスープカレー屋さんに販売に来ていただいたりしたので、そういったイベントもまたやってみたいと思います。創業者が掲げるお客様第一主義の精神で、いろいろとお客様に還元していきたいです」
楽しさ満載!『フレンドフーズ』の仕入れ戦略
京都市左京区の閑静な住宅街に構える『フレンドフーズ下鴨店』。この店は、全国の産地や加工工場まで足を運び、独自の厳密な審査基準に合格した、ごまかしのきかない手法で作られた一級品を置く、こだわりのスーパーだ。
「本来、小売店の使命とは、数ある商品の中からプロとしての目利きでいい商品を選別してお客様に提供していくことのはず。こうした考えのもと、先代の社長が就任して店舗をリニューアルすることになった平成5年を機に、店頭商品の見直しを行いました」
こう話してくれたのは、藤田俊代表取締役社長だ。仕入れ商品には細部までこだわっている。例えば酒・しょうゆ・みそは先代の社長やバイヤー自らが蔵元を訪ね、伝統的な方法でつくられたもののみを仕入れている。
しょうゆはステンレスではなく微生物がすみつく木桶を使って2年以上かけてつくられたものであったり、酢であれば静置発酵法という昔ながらの製法で長期間熟成されたものだったりと、妥協を許さない。
肉や魚に関しても同様で、豚や鶏の育つ環境、エサの安全性などを自ら確かめているほか、牛肉は黒毛和牛のA4以上のみを仕入れている。魚や青果物、調味料にいたるまで同じ信念を築いている。
こうしたこだわりから、口コミで客数が増え、いまでは近隣だけでなく遠方から来店する常連客や、レストラン経営者、料理研究家といった業界人も多く訪れるという。代表取締役専務の藤田郁さんによると、
「スーパーでありながら、全国の珍しいものがそろっているので、アンテナショップのように楽しんでくださる方が多い」
と、教えてくれた。
同店では客あたりの滞在時間がとても長いというが理由はよくわかる。ユニークな商品を整然と美しく陳列しているため、つい足を止めてしまうのだ。
「社員が書いている手書きのポップも、お客様が立ち止まってくださる原因のひとつでしょう」
と、フロア部次長の郷原貢さん。
「直接、生産者やメーカーと交渉して、いいと思ったものだけを仕入れているので、そのよさをお客様になんとか伝えたいという思いが強い。例えば精肉では、照明の角度を計算してカットしていますし、惣菜は容器にもこだわっています。商品説明のPOPは、仕入れのいきさつや商品の使い道などを、すべて自分たちで書いています」
印象的だったのは、店員と客の会話が多いこと。商品の特徴を売り場にいるほぼすべてのスタッフが知り尽くしており、詳細に説明してくれるので、アドバイスを受けながら品物を選ぶことができるのだ。
約10年前に立ち上げたパティスリー部門では、カステラやプリン、焼き菓子などを2階の厨房ですべて一から手作りしている。店頭の洋菓子コーナーは本格ケーキ店さながらの品ぞろえで、思わず目移りしてしまう。
惣菜は店で販売しているオリジナルの調味料も使っており、和惣菜のだしは毎朝こんぶとかつおのだしをとり使用、洋惣菜や精肉部門ではブイヨンから自社で作っているというから、こだわりには驚きだ。
“良質なものがそろう百貨店”のような同店は、宝探しをするような楽しさからリピートしたくなる店だ。
※価格は取材時のものです