原作は弘兼憲史氏の大ヒットコミックで、'00年に文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を獲得した『黄昏流星群』。佐々木蔵之介演じるエリート銀行員の瀧沢完治が人生に疑問を感じ訪れたスイスで、偶然、栞(黒木瞳)という女性と出会う。妻・真璃子(中山美穂)や娘の存在がストッパーになりながらも、栞への思いを募らせていく完治。そんな彼がまさかと思うことが妻や娘にも起きて……。
結婚はしていませんけど(笑)
「完治は一流銀行マンで、出世して本店に行けるかもしれないと思った矢先に上司のミスの巻き添えで左遷される。
私も会社に勤めていたこともありまして、サラリーマン経験もある。ちょうど漫画で黄昏世代と言っている50歳ですし、等身大の役ができるなという思いです。結婚はしていませんけど(笑)」
理不尽な理由で左遷されたことで人生を見つめ直す完治。佐々木自身にも、理不尽だと思うような経験が?
「僕自身、羨むことはしないほうがいいと思うようにしています。“調子がいいんだな”と映る人にもいろいろ葛藤があって、それを知らないだけ。
僕は今、役者の仕事をさせていただいていますが、この先どうなるかわからないとは、なんとなく思っています。
わりとマメに凹(へこ)むタイプなんですよ。“やっぱり、俺あかんな”とか“この人、上手やな、うまいな”と思うけれど、“自分は自分”と思うようにしていますね」
次々に作品が発表される人気俳優である彼から意外な言葉が。もうひとつ驚いたのが、今作を最初はヒューマンドラマだと思いながら演じていた、と苦笑いで語ってくれたこと。
「“佐々木さん、初めてのラブストーリーですよ”って言われて、そうなんですか? それは、考えていなかったな、という状況だったんです。
言われてから、どう演じていいかわからなくなって(笑)。
中山さんや黒木さんは、やっぱりわかっていらっしゃるんです。僕だけ、ラブストーリー初心者。監督も“その不器用さがいいんですよ”って言う。
つまり、できていないんだろうなぁと思って(笑)。完治は僕の肉体を通して演じているから、僕も器用じゃないと思います。でも、だいたい男が器用じゃダメですよね? 器用に立ち回られたら、女性も嫌でしょう?」
“結婚の浪人生”
同意を求めるように話す姿を見た女性スタッフたちに思わず微笑みが。「僕自身がラブストーリーの主人公だったんだ♪ と驚いたように、みなさんにも、この作品のように主人公になる可能性は十分にある」と続ける。
今作のような等身大の役を演じるのは新鮮と佐々木。演じる完治との違いを「結婚はしていませんけど」と語るが、今後、結婚の可能性はどうだろうか?
「リリー・フランキーさんが言っていたんですが、(僕らは)結婚の浪人生なんだって。(結婚に)向いている、向いていないとかじゃなくて、まだ浪人中で浪人期間が長いなという感じなんでしょうね。
あと、どこが現役合格なのかもわかりませんけど(笑)、いつか合格するかもしれない。繰り上がりの補欠合格もあるかもしれないですから(笑)」
居酒屋シーンに潜入!
完治の相談相手である徳田(小野武彦)が営む居酒屋でのシーン。
「1話から10話までの居酒屋の場面を3日間で撮るというのは、今までにない経験です(笑)」と佐々木。スタッフや共演者の黒木瞳、小野と意見を交わしながらテンポよく撮影は進んでいった。
居酒屋には行きますか?
「よく行きますよ(笑)。いいですよね、(ドラマに出てくるような古い味のある店は)なんか落ち着きます。ああいうところは、頑張らなくていいですし。
なぜか知らないですけど、撮影では日本酒が出てきました、冷酒で(実家は創業120年を超える老舗酒造)。話が進むと冬場になるので「途中で熱燗(あつかん)にします」ってスタッフに言われてね(笑)」
日本酒へのこだわりは?
「いい居酒屋だと思うのは、やっぱり日本酒が取りそろえられている店(笑)。
熱燗で飲むのは、やっぱり本醸造酒がいいかなと思います。冷酒だと、最初は原酒っぽいものから純米吟醸酒にいくとか。何の話をしているのか(笑)。
冬場は、11月から新酒で生酒が出ますので、自分の家(京都の佐々木酒造)の酒を宅配便で送ってもらって飲んでいます」