10月17日、さいたまスーパーアリーナでの開催予定の公演の中止を、「契約上の問題が発生したため」と、開場直前に発表したことが大きな話題を集めた、沢田研二。
翌日には報道陣を前に、観客が予定よりも少なかったことから、「僕にも意地があります」とコンサートの中止は自身が決断したと明かし、謝罪した。
ワイドショーやスポーツ紙などでも賛否両論でこの話題を大きく取り上げた。
「中止の理由が、アーティストとしてのプライドだったところは、ジュリーらしいなという印象でした」
と、ある芸能記者は言う。
ジュリーは“現役アーティスト”
「若い頃、新幹線の中で一般人の乗客から“いもジュリー”と声をかけられ、カッとなって殴りかかったことが報道され、謹慎したエピソードが有名です。
もともとプライドがとても高い人です。80年代のテレビのランキング番組では、ヒット曲の『酒場でDABADA』のサビが、“沢田でんでん虫食べーた”と、“空耳”のように聞こえるという視聴者からのコメントが紹介された直後、あえてその通りに歌ってみせたこともありました。
これは茶目っ気のパフォーマンスですが、いじられるなら自分からあえて発信しようと言うプライドの裏返しとみることもできるかもしれませんね」(前出・芸能記者)
そんなジュリー、ある時期から歌番組への出演はなくなったが、オファーはたくさんあったという。前出の記者が続ける。
「オファーがきても、かつてのヒット曲を歌ってほしいと要求されるのが気に入らないようです。現役の歌手として、今、歌っている曲を聞いてほしい。
毎年、全国ツアーを行い、ほぼ毎年アルバムを発表しています。ツアーで歌われる楽曲は、基本的に新作が中心。全盛期のヒット曲は、ほんの数曲しか歌いません。
そういうセットリストの組み方も、往年の懐メロ歌手とは違い、“現役アーティスト”を感じます」
よりいいステージを届けたいというアーティスト・沢田研二としてのこだわりの強さは、時に、長年、支える熱狂的なファンに対して発揮されることもある。音楽誌の記者が言う。
「彼を長年追っかけている常連ファンが、どの会場でも最前列を陣取っていることに対して、できれば地元の人に多く見て欲しい、それなのにいつも同じ人たちの前で歌うこちらの身にもなってほしい、といった苦言を呈したこともありました。
そんなジュリーの性格、キャラクターを知っている長年のファンからしたら、“9000人の予定が7000人しか入らない会場ではいいパフォーマンスができない”という、彼の言い分も、どこか納得できるところはあるのでしょう。
報道される会場の様子から、みなさん当然ガッカリされていますが、関係者に詰め寄ったり怒号をあげているような様子は見受けられませんでした」
そんな沢田の姿勢には、他のアーティストやアイドルなどの一部のファンにも影響を与えた部分があるようだ。あるスポーツ紙記者は言う。
「このような大会場のコンサートで、思うようにチケットが売れないことは珍しいことではありません。その際、スカスカ感を出さないように2階席の上段座席を暗幕で隠したり、アリーナに大きなステージをせり出したりするなど、“苦肉の索”で、様々な工夫をします。
だけど、それを“みっともない”と感じているファンは多く、沢田さんの言うことを支持するむきもみられました」
今回の公演に関して、チケット代金の払い戻しと、振替公演が計画中であることが発表されている。
「沢田さんは、言うまでもなく誰もが知るヒット曲が多数ある歌手。古い曲はあまり歌わないといっても、今回の件でステージを見てみたいと感じた人も少なくないのではないでしょうか。
もちろん、沢田さんにそんな悲しい思いをさせたくないと、ファンも頑張ってチケットを購入するでしょう。ある意味、結果的にすごい宣伝効果になったのかもしれませんね(笑)」(前出・スポーツ紙記者)
振替公演は、多くのファンで溢れかえる予感でいっぱいだ。
<取材・文/渋谷恭太郎>