沢田研二

 ドタキャン騒動ですっかり時の人となった沢田研二。

 当然のごとく、彼は非難の嵐にさらされたわけだが、ファンの多くは彼を責めてはいないようなのだ。

「本人がどこまで自覚しているかはわかりませんが、彼のプライドが高く、自己中かつ、わがままで、頑固だということは昔からのファンはみんな知っていること。ドタキャンくらいでファンを辞める人はいないでしょう」(スポーツ紙記者)

 という。

 今回は、彼の“わがまま”がクローズアップされた形だが、世界に目を向けると、彼以上の“とんでもない”アーティストはいくらでもいる。

ドタキャンどころか

 '73年、ローリング・ストーンズの日本公演が急きょ中止になったことがある。

 メンバーのひとり、ミック・ジャガーが、過去の大麻所持による逮捕歴を理由に日本入国を拒否された。ミックなしのストーンズは考えられない。前売り券は完売していたが、公演は中止。

 その7年後となる'80年1月。今度はウイングスの初来日のときも、メンバーだったポール・マッカートニーの大麻所持が成田空港で発覚し、大麻取締法違反と関税法違反で逮捕されている。当然、公演は中止となった。 

 これらは、本人たちが自ら中止を申し出たわけではないが、次の例は沢田と似ているかもしれない。

 '02年のレニー・クラヴィッツ日本公演は“都合上”という理由で中止になった。

 どういう都合だったのかというと、日本側の関係者に伝えられた話では“フライトスケジュールの問題”だったという。

彼はいつも、プライベートジェット機で移動しているので、フライトスケジュールの問題なんて考えられない。後でわかったことですが、チケットの売れ行きが不振だったことが、気に食わなかったみたいです」(音楽誌ライター)

 公演自体は中止にならなくても、時間通りに始まらない、なんてことは海外アーティストの場合は日常茶飯事。

 '16年のマドンナ日本公演のときは、マドンナは定刻から2時間遅れで登場。終電の都合もあって、2〜3曲聞いただけで席を立たなければならない人や、終電に間に合わない人が続出。

理由は明らかになっていませんが、彼女は、ステージに立つ前に、いつも、お祈りをするそうで、その時間が長かったと言われています(笑)」(前出・音楽誌ライター)

 ライブのドタキャンや遅刻以上に厄介なのが、テレビの生番組。

 覚えている人も多いだろう。

 彗星のように現れた、ロシアの女性デュオ『t.A.T.u.』は、各地でコンサートのドタキャン騒動を起こし、お騒がせデュオとして話題になった。

 '03年に初来日を果たしたが、直前にイギリス公演をドタキャンしていたため、日本公演、あるいは来日そのものがドタキャンされるのではないかと、ファンや関係者をヤキモキさせた。

 無事、来日はしたものの、不安は的中。

 『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出演したのだが、冒頭に姿を見せたあと、いなくなってしまったのだ。 

 あとになって、彼女たちが語ったところによれば、ドタキャンはすべて、プロデューサーのイワン・シャポヴァロフの指示だったという。

 “お騒がせ”というイメージを拡大させるための戦略で、いまでいう“炎上商法”だったのだろう。

 沢田に限らず、日本では妊娠が発覚して舞台や映画、ドラマを降板する女優もいれば、老朽化したテレビ局の控室が汚いからといって「あの局には2度と行かない」と言う、女性シンガーもいた。

 しかし、ファンの存在はありがたいものだ。けっして彼ら・彼女たちを見捨てたりはしない。それは頂点を極めた彼らの“芸”が本物であり、ファンの心をつかんで離さないからなのだがーー。

<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>
◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。