三浦春馬 撮影/伊藤和幸

相思相愛の演出家と再びタッグを組む

 現在28歳、男っぽさが増して大人の俳優としてより魅力を発揮している三浦春馬さん。

 '17年にはミュージカル『キンキー・ブーツ』で第24回読売演劇大賞優秀男優賞と杉村春子賞を受賞するなど舞台俳優としても高い評価を得ている。

 その三浦さんが次にチャレンジする舞台は、ロシアの文豪ドストエフスキー原作の『罪と罰』。帝政ロシアを舞台に、“正義”のためなら人を殺す権利があると考え、殺人を犯す主人公の青年ラスコリニコフを演じる。

正直、原作は読み解くのが難しい作品。僕にとっても挑戦です。でも、お客様には難しい題材ということで遠ざけないでほしいと思っていて。脚本では見る人の気持ちをつかんで後半に運んでくれるようなスリリングな展開になっていますし、主人公と取り巻く人間の心の機微、善と悪に揺れる心の右往左往みたいなものがしっかり感じとっていただけるような内容になっていて、僕も読んでいてすごく面白いと思いました」

 '15年に上演された『地獄のオルフェウス』に続き、英国人演出家フィリップ・ブリーンと再びタッグを組むことも注目。

「フィリップとまた一緒にやりたいという思いはもちろんありましたし今回、新たな可能性を提示してくださったのが本当にうれしかったです。自分で言うのもなんですが稽古場で成長できたことを1度経験しているので、『罪と罰』のような難しいといわれている題材でも不安はないです。役どころの思いだったり確固たるものが毎日の稽古で見えてくるんだと思うんですよね。一緒に挑戦できることにワクワクしてます

 信頼する演出家とともに難役にどう取り組むのか。

「今回は、神話や聖書を読んで勉強することも必要になってくるなというのはあります。それと身体的表現。先日来日したフィリップが開いたワークショップで、いろいろな話を聞かせてもらったんですけど。例えば“このキャラクターを何かにたとえるとしたら何だろう?”って話になって。それは動物なのか動かない物なのか……。“何だと思います?”って聞いたら、すぐに答えが返ってきて。“あ~なるほどな~”って。僕はまったくそういうイメージが湧いていなかったんだけど、その答えをもらってその生物の研究をしなきゃなと。

 それが何かはネタバレになるから教えられないけど(笑)、ある感情の爆発的瞬間とかには、すごく助けになるんじゃないかと思います。あとは、自分を特別視する心の動きとかメカニズムを勉強したほうがいいだろうなとも思う。それは例えば、コールドリーディングというのがあって、会話のなかで相手のことを読んで、こちら側に引き寄せるみたいなテクニックとか。

 それから、彼の生い立ちだったり興味のあること、姿勢だったり声の発し方だったり、ト書きに書いていないところも僕なりに出していければいいなと思ってます。いろいろ試したくって。やっぱり'15年にフィリップに教えてもらったときの僕ではなく、いろいろなことに触れてきた今の自分がどんなものを届けられるかっていうところで尽力していきたいので」

いいものに触れると成長が早い気がする

 20代後半になって、俳優としても人としても変化してきたという。

三浦春馬 撮影/伊藤和幸

自分のやりたいことに対して意見を通そうとするっていうスタンスが、より濃くなったとは思います。それはただのわがままとかではなくて、どうすればお互いが寄り添った形でいい方向に持っていけるだろうかってことを、怖がらずに話せるようになったと思う。スタッフともよく話し合いをするようになりました

 作品選びでも自身の考えが反映されている。

'13年にブロードウェイで『キンキー・ブーツ』を見させていただき、“日本で公演するようなチャンスがあるんだったら、オーディションを受けてローラ役をぜひ勝ち取りたいって思ったんです。そこから本当に経験することができて、素晴らしい力を持った作品なので上演したときのお客様の反応がすこぶるよかったから忘れられないですね」

 もうひとつ転機となった作品は『地獄のオルフェウス』。

「もっと自分はできそうだと、勇気をくれた作品ではあります。もっと貪欲に芝居を突き詰めればより多くの人の心を動かせるんだと板の上で感じましたし。それはフィリップもそうですけど、大竹しのぶさんが引き出してくれたのがすごく大きくあったと思います。やっぱりいいものに触れると成長が早い気がする。僕が成長が早いって言ってるわけじゃないけど(笑)、いいものをもらってる気がします」

 来年4月にはファン待望の『キンキー・ブーツ』再演も決定している。

「初演が幕を閉じた瞬間から、再演するつもりでいましたからね。その思いはずっと心にあったので、レベルの上がった個人のポテンシャルを披露できるように頑張っていくつもりですし、もうすでに自信はあります。だって引き続き歌は練習してますもん(笑)。その前に、まずは『罪と罰』の準備にかからないと」

 俳優・三浦春馬にとって舞台とは?

「なんでしょうね……。変なふうに聞こえるかもしれないですけど、舞台に立つと『罪と罰』の主人公と同じように特別な自分がいるっていうか、うまく言い表せない種類のエネルギーがどこからかあふれてくる。普段生活しているときのエネルギーが80パーセントだとしたら、その倍以上のものを、あの2時間~3時間でだしながらいる感覚って、とても気持ちがいいんですよ。それを思うとワクワクする

『罪と罰』

<作品情報>
Bunkamura30周年記念
シアターコクーン・オンレパートリー2019 DISCOVER WORLD THEATRE vol.5
『罪と罰』
原作はロシアの文豪ドストエフスキーの傑作長編小説。舞台は帝政ロシアの首都、夏のサンクトペテルブルク。頭脳明晰な貧乏青年ラスコリニコフ(三浦春馬)は、自分が「特別な人間」として、「人類が救われ、その行為が必要ならば、法を犯す権利がある」という独自の理論を持っていた。そして殺人を犯したラスコリニコフの“正義”とは、救いとは……。人間回復への強烈な願望を訴えたヒューマニズム大作。共演は大島優子、勝村政信、麻実れい ほか。
東京公演:2019年1月9日~2月1日@Bunkamura シアターコクーン
大阪公演:2月9日~2月17日@森ノ宮ピロティホール
【公式HP】http://www.bunkamura.co.jp

<プロフィール>
みうら・はるま◎1990年4月5日、茨城県出身。12月28日より映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』公開。ミュージカル『キンキー・ブーツ』(東京公演:2019年4月16日~5月12日@東急シアターオーブ/大阪公演:5月19日~5月28日@オリックス劇場)が待望の再演決定。『世界はほしいモノにあふれてる〜旅するバイヤー 極上リスト〜』(NHK総合木曜22時45分~)にレギュラー出演中。

<取材・文/井ノ口裕子>