10月25日に開幕した第31回東京国際映画祭。その初日にレッドカーペットイベントが開催されたが、
「その後の報道はごくごく微々たるもの。国際と名の付く映画祭にしてはお粗末です」
と、映画サイト記者はばっさり。お粗末ぶりを象徴するのがプレスルームだという。
「六本木ヒルズの49階にプレスルームがあるのですが、狭い会議室を仕立てたもので、30人も入ればぎゅうぎゅう詰めという代物。欧米の記者は実に少なく、日本とアジアの記者がほどんと。国際映画祭というよりはアジア映画祭という趣ですね」
と皮肉る。
それでもオープニングのレッドカーペットには多くのメディアが集結した。映画製作者や関係者が次々にあいさつに立ったが、失笑を買ったあいさつがあったという。
「あれが政治家のあいさつ? と、バカ丸出しでした。自慢がどれだけ嫌われるかという、見本のようなあいさつでしたね」
と民放報道局記者もあきれ顔だ。
長期政権真っ只中の安倍首相。その盟友、お友だちとして大活躍中の甘利明衆議院議員が登場したのだが、そのあいさつが噴飯ものだったという。
冒頭から、似ても似つかない芸能人の名前を出しダダ滑り。そして「レッドカーペットを歩ける」という光栄を感謝するどころか「歩かさられるのか」とイヤイヤ感を出す。
また「当事者」というところを「張本人」といったり、映画関連の法律を「チーム甘利」が作ったと自慢したり、鼻につかないところのない、お見事なあいさつだったという。
せっかくなので、録音を入手し、全編文字起こしでお伝えしたい。
《こんばんは、竹内涼真、じゃなかった甘利明です。
私が毎年、なんで、各映画会社の社長と一緒に、このレッドカーペットを歩かさられるか、というと、この東京国際映画祭を作った張本人だからであります。
私が経済産業大臣のときに、今の形を作らせていただきました。以来、ずっとお付き合いをいたしております。
それから、みなさん方が映画館に行くと、映画盗撮防止法、出ますよね、カメラかぶった変なのが出てきて、映画の盗撮は10年以下の懲役、または1000万円以下の罰金です。
あれ議員立法です。我々のチーム、“チーム甘利”が作った、議員立法で映画盗撮を止めました。ほぼ100%止まりました。
ですから、この映画祭も我々の威信をかけて日本の文化を国内外に発信するために、その障害となっているものを取り去っていくために日々、努力している、それだけをお伝えしたいと思います。》
選挙の際に政治家が、「あの橋は私が架けました」「私がこの道路を敷きました」なとど自慢をするのは昔からのこと。
「ただ、そのいい方に品性がないと、単なる自慢話になる。今の時代、自慢はウザがられるだけです。
もっと映画祭をたたえたり、立ち上げた際の苦労話を盛り込んだり、盗撮を防ぐためにこんな議論をした、などと振り返ればいいのですが、見事に上っ面の自慢話だけ。心から失笑しましたよ」(前出・民放報道局記者)
ハロウィーンほどの注目も動員もない、国際映画祭だ。
<取材・文/薮入うらら>