小渕恵三官房長官(当時)が「新しい元号は『平成』であります」と発表してから30年。その平成が幕を閉じようとしている。平成を彩った言葉たちをナビゲーターにして、30年を振り返ってみよう。最後は平成21年から平成30年まで。
平成21年~30年(2009~2018)
平成も終盤、最近の言葉を振り返りたいが、さて、どんな言葉が思いつくのか?
「ここ数年は不作ですよね。記憶に残る言葉が生まれてこない」とは自由国民社の清水均さん。
小さなヒットはあるがホームランが出ていないという。
唯一、豊作だったのが平成25年で、この年は流行語の年間大賞が4本出た。これは34年続く中でも初めてだそうだ。
1本目は、カリスマ予備校講師の林修を今や何本ものテレビ番組を持つ売れっ子にしたひと言「今でしょ!」。
最近は多用しないが、それでも使われていて賞味期限が長い言葉だ。
2本目は、東京にオリンピックを誘致するときの滝川クリステルの身振りも話題になった「お・も・て・な・し」。
3、4本目は人気ドラマから出た「じぇじぇじぇ」と「倍返し」。見てましたか?
その結果、トップテン入りしていたアベノミクスは、大賞にはならず。安倍晋三内閣総理大臣としてはもっと注目してほしかったのではないだろうか。
出ては消える芸人の「言葉」
3・11から、平成は地震と豪雨に見舞われっぱなしだ。
東日本大震災の言葉では絆、帰宅難民、こだまでしょうか、3・11、風評被害があり、その重苦しさの中から「被災地が、東北が、日本がひとつになった 楽天、日本一をありがとう」は東北楽天ゴールデンイーグルスのファンでなくても心に残ったメッセージ性のこもった力強い言葉だ。
広辞苑にも、新加項目に東日本大震災や熊本地震があり、各界第一線の専門家がより正確で簡潔な解説を行っている。岩波書店の平木靖成さんが言う。
「地震・火山噴火・豪雨など自然災害や地球の温暖化などについて多くの人が関心をもっていると考えて、地球科学・気象関連語を充実させました」
ところで平木さん、広辞苑についてちょっと謎が。新しい版は、前回の版よりも1万語、140ページも増えているのに厚さは変わっていない。一体どうして?
「さらに薄い紙を開発して、しかもちゃんとめくりやすく、紙の裏の文字が透けて見えない品質は保っています。製本機械の限界である8センチに収まるようにしています」
編集もすごいけれど。紙や、印刷、製本技術もすごいってわけ。では、閑話休題。
その時代時代を彩っているのが、お笑い芸人たちの発した言葉。一部だけでも「聞いてないよォ」「だっちゅーの」「なんでだろ~」「ワイルドだろぉ」「ダメよ~ダメダメ」などがパッと思い出せる。
ただ、この言葉はすぐに忘れ去られ、また芸人も言葉だけで一発当てると、人気は持続しないというジンクスがある。
「それでもトップテンに上がり、また大賞になった言葉は、子どもから大人にまで認知された、それだけ勢いがあった言葉です。人気の持続とは関係ないと思います。その人の実力次第では……(笑)」(自由国民社・大塚陽子さん)
一方、消えなさそうなのが29連勝で注目された藤井聡太四段。
今では七段になり最年少新人王に。オセロでは11歳の福地啓介クンが世界チャンピオンに。彼らが新しい時代を担っていくだろう。そして私たちは次の時代をどんな言葉で表し、どんな新しい言葉が生まれてくるのだろう。
平木靖成さん 岩波書店 辞典編集部副部 辞書編集者歴が20年を超え、広辞苑第五版から今年1月に刊行された第七版まで携わり、すでに(10年後に刊行されるであろう)第八版の準備に取りかかっている。
清水 均さん 自由国民社「現代用語の基礎知識」シニアディレクター 『新語流行語大賞』は今年で35回目を迎え、「年々注目されています。時代が閉塞しているからこそ、流行語が求められているのでしょうか」
大塚陽子さん 自由国民社「現代用語の基礎知識」編集長 「よい言葉だから、あるいは問題のある言葉だからという視点ではなく、その言葉が流行って多くの人に使われていれば、どういう言葉でも流行語大賞にノミネートします」