「ヤバい女になりたくない」そうおっしゃるあなた。ライターの仁科友里さんによれば、すべてのオンナはヤバいもの。問題は「良いヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」を分析していきます。
小泉今日子

第10回 小泉今日子

 キャラがかぶってはいけない。それは芸能界の鉄則と言っていいでしょう。

 たとえば、’80年にデビューした松田聖子。聖子ちゃんカットとぶりっ子が彼女の代名詞で大ブレイクしましたが、聖子が売れているからといって、聖子の真似をしても意味がない。こういう時は、あえて松田聖子の正反対を行くような存在にならないと、注目は集まらないのです。’82年にデビューした中森明菜はどこか陰を感じさせる存在でした。その結果、松田聖子VS中森明菜という図式で、お互いがお互いを引き立てあうことに成功したのでした。

 曲や衣装はもちろんのこと、聖子と明菜は恋愛の仕方も真逆でした。

 松田聖子は郷ひろみと結婚間近と言われていましたが、破局。会見で「生まれ変わったら、一緒になろうねと言われた」と涙ながらに明かしましたが、その翌月には俳優・神田正輝と交際宣言をしています。結婚後も引退せず芸能活動を続けますが、多くの男性との不倫がウワサされました。2012年には歯科医と3度目の結婚を果たしています。

 対する明菜は、近藤真彦との交際が報じられます。七夕が近かったころの『ザ・ベストテン』(TBS系)で、「どんなお願いをしたの?」と司会の黒柳徹子に聞かれた明菜は「早くお嫁さんになりたい」と結婚願望を明らかにします。カメラが死んだような近藤真彦の顔を映しているのが印象的でした。その後、二人の関係はこじれ、明菜はマッチの家で自殺未遂を図ります。芸能界に復帰した明菜ですが、体調不良による活動休止がたびたび報じられるなど、何かとトラブル続き。強い結婚願望を明かしていましたが、現在も独身です。

 結婚を考えるほどの相手と破局しても、けろっとすぐ次の恋愛をする聖子。反対に、一人の相手にのめりこんで重くなる明菜。聖子が「陽」なら、明菜は「陰」と言っていいでしょう。

 この二大巨頭の間をうまくすりぬけて、個性を発揮したアイドルがいます。小泉今日子です。2011年に放送された『旅嬢ヂカラ』(テレビ東京)で「聖子さんと明菜ちゃんの間を縫って出てきた。二人がいるから、今がある」と発言したように、小泉サンはまったく別の方向で個性を発揮します。

 2017年、『黄色いマンション 黒い猫』(スイッチ・パブリッシング)で第33回講談社エッセイ賞を受賞した小泉サンですが、アイドル時代から読書家として有名で、小泉サンがラジオですすめた本がベストセラーになるなど、「見る目のあるアイドル」として存在感を発揮していきます。小泉サンを漢字一文字で表せば「独」と言えるでしょう。

 恋愛の仕方も聖子や明菜とは異なります。小泉サンの結婚相手は俳優の永瀬正敏でしたが、聖子や明菜のようにできあがったスターというよりも、どんどん伸びるであろう逸材を選ぶあたりが、「見る目のある」小泉サンらしいのです。永瀬と離婚した後も共演したり、20歳年下のアイドルともさらっと交際したり、聖子のように軽いわけでもなく、明菜のように重くもなく、洒脱に恋愛を楽しむ姿が、女性たちの憧れとなります。小泉サンはオシャレな独身のアイコンでもありました。

不倫で一気に「ヤバい女」と批判噴出

 しかし、今、小泉サンは芸能人人生で、一番ヤバい状態におかれています。俳優・豊原功補との熱愛が報じられたのは2015年。当初はオトナのオシャレなカップルと好意的に見られていましたが、実は豊原には妻子がいて、離婚はしていない。つまり、不倫だということがわかったのです。なんと小泉サン自身が事務所からの独立を発表した際に、自分から不倫であることを明らかにしたのでした。

「妻子がいようと、好きな人を好きと言う小泉サン、かっこいい」というような意見もネットではありましたが、やはり不倫というのは人に胸を張って言うようなことではありません。

 小泉サンはヤバい女だと批判が噴出しました。

 しかし、この件でヤバいのは小泉サンだけでしょうか?

 今年2月の小泉サンの不倫カミングアウトを受けて、俳優の豊原は数日後に単独で会見を開きます。驚いたことに、豊原は奥さんと具体的な離婚の話すらしていなかったそうです。

 ということは、小泉サンがカミングアウトをして、豊原がマスコミから追い回されなければ、ずっとのらりくらりしていた可能性があるということ。バッシングが厳しいことはわかっているにもかかわらず、小泉サンが不倫のカミングアウトに踏み切ったのは、豊原に妻子と自分のどちらを取るのか、自分の代わりにマスコミに質問させたと見ることもできると思うのです。

 この人と一生添い遂げよう。多くの人がそう思って結婚するわけですが、そうはいかないこともあるでしょう。日本は離婚が認められているわけですから、そういう時は、誠意を見せて「別れてもらう」しかないと思うのです。この場合の誠意とはお金で、全財産渡すくらいの気前を見せてほしいものです。

 先日、ライブの直前キャンセルで騒がれたジュリーこと沢田研二は、その昔、妻子ある身でしたが、女優・田中裕子と不倫関係となり離婚しました。その際の慰謝料は18億1000万円と報道されました。18億円もの大金を払うことに同意することが、妻子と田中裕子両方に対する誠意なのです。カネを払えば何をしてもいいというわけではありませんが、少なくとも妻子が一生、生活面で困ることはないでしょう。田中裕子に対しても、それだけの犠牲を払っても自分は独身になって結婚したいんだと意思表示できる。それが愛であり贖罪(しょくざい)です。

今の小泉サンは「孤」

 しかし、豊原は妻に対しても、小泉サンに対しても誠意を見せず、二人の間をフラフラし、その結果、小泉サンが叩かれている。早く結論を出すことが、責任や愛情ではないでしょうか。

 煮え切らない豊原に業を煮やしたのかどうかわかりませんが、『女性セブン』(小学館)によると、小泉サンと豊原は同棲を開始、仕事場にも一緒に出勤するなど、夫婦のように振る舞っているそうです。既成事実を積み上げるかのような小泉サンの行動を見ていると、やはり豊原と法的な結婚したいのではないかと思えてしまいます。

 独自の路線を開拓したおしゃれな独身。小泉サンの芸風を漢字一文字で表すと「独」だと書きましたが、今の小泉サンは「孤」のように感じます。孤独を感じているのかもしれないし、不倫を続けていると孤立してしまうでしょう。

 そのオトコ、よくないよ。

「見る目のあるアイドル」として、一世を風靡した小泉サンを知る一人としては、こう声をかけたい気になるのでした。


プロフィール

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。他に、男性向け恋愛本『確実にモテる世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」。