岩崎恭子

 '92年バルセロナオリンピックの水泳金メダリスト・岩崎恭子氏の“不倫・離婚騒動”が話題になっているのが、ちょっと意外だ。

 競泳女子200m平泳ぎに出場し、史上最年少(14歳6日)での金メダル獲得。今もその記録は破られていない。また、日本選手として五輪でのメダル獲得では最年少記録でもあり、レース直後に受けたインタビューで、

今まで生きてきた中で、一番幸せです

 と語り、日本中を沸かせたものだった。しかし、26年も前の話で、いまの若い人は、当時のことをほとんど知らないだろう。

気づかれないための変装

 '09年、元ラグビー日本代表の斉藤祐也と結婚し、現在はスポーツコメンテーターとしてたまにテレビ出演しているくらいのもの。街ですれ違っても、気づく人は少ないのではないだろうか。

 そのような人物の不倫・離婚が注目を浴びていることに少し驚きを感じたのだが、報じた『FLASH』(11月20日号)を見ると、その理由が見えてくる。

 同誌を開くと、冒頭のカラーページが目に飛び込んできた。

 紺色のキャップとジーンズのお揃いのファッションで手をつなぎながら公園を散歩中のカップル。岩崎氏と、交際中の男性なのだが、彼女はロングの金髪カツラを着用し、大きめのサングラスをかけている。いわゆる変装だ。   

 “変装”といえば、元NHKアナウンサーの有働由美子が思い出される。

 '00年に有働アナは巻き髪カツラとサングラスで変装して、当時横浜ベイスターズの石井琢朗選手の自宅を訪れたところをスクープされた。

 彼女は「借りていた本を返しにいっただけ」と交際を否定したが、石井氏が瀬能あづささんと離婚して2か月しかたっていないこととや、瀬能さんの父親が、

「離婚したのは石井と有働の不倫が原因」

 と語ったため、当時は“略奪愛”と騒がれた。

 NHKの顔として、よく知られた有働アナが変装するのはよくわかる。だが、岩崎氏が、それも一般人とのデートでそこまでする必要はあるの? と思った人は多いだろう。

 そこには、彼女が強い背徳感を感じていたことがうかがえる。その一方で、激写された、タクシーの中では自ら覆いかぶさって熱いキスをするという、大胆さが見て取れる。夜ならあってもおかしくないシーンだが、ランチタイムに食事した帰りとだいうから、驚きだ。

 そんな、写真誌ならではのバラエティに富んだ写真が掲載されたことが、登場人物が“地味”であったとしても、読者の目を引いたのかもしれない。また、当時の彼女の活躍ぶりに歓喜した世代からすれば、「爽やかな笑顔が印象的だったあの娘がこんな……」というギャップを感じたことだろう。

 さらに、この報道を取り上げたワイドショーもあり、言及するコメンテーターもいたことが、思ったより話題になった理由のひとつだろう。

金メダリストではありますが、過去の人。有名人ですが、そこまで知名度があるわけでもない。そもそも扱うのはどうかな、と思いました。しかし、最近ゴシップ然とした芸能ネタが少ないこともあって、放送してみたところ、意外と食いつきがありましたよ。視聴者は“下世話な”ニュースが好きなんだなと、改めて思いました(笑)」(ワイドショースタッフ)

 岩崎氏と男性はそれぞれ、離婚届けを提出しており、交際が始まった時点ではどちらも夫婦関係が破綻していたということで、“略奪愛”の色合いは薄いのに加え、彼女が事実関係を認め、

「離婚協議中であったとはいえ、ひとりの見識のある大人として、一児の母として、大変軽率で恥ずべき行動をとってしまったこと(中略)多くの皆様の信頼を裏切ってしまったことを心よりお詫び申し上げます」 

 と、謝罪したことで、批判的な意見も思ったほど多くなかった。なかには、謝罪して、不倫相手とも別れた彼女に「潔いからといって、許されるのか」と咬みついていた人もいるが、騒動は ほぼ収まったと見ていいだろう。

これは、岩崎氏の迅速かつ、誠意が伺える謝罪コメントのお陰ともいえますが、そもそも、そんなに大騒ぎする話じゃないですからね」(前出・ワイドショースタッフ)

 それほど時間を置かずに忘れられてしまうような話だと思うが、彼女はきっと、

「今まで生きてきた中で、一番不幸です」

 と、言いたいのでは。

<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>
◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。